151#Fランククエスト、開放
今日のランディは、第1の迷宮ウノの地下4階で
軽く流すように、モンスターを狩りまくって、早めに切り上げていた。
そして、極小サイズの魔石の1部を換金しないで残しておいた。
その日の稼ぎを使って、香織のスキル『魔石錬成』のスキル使用法を学んできたのだ。
まあ、参考書を買って実演を1回見た程度なのだが。
香織の魔石錬成のスキルはレベル2までで、錬成レベル1『発熱魔石』『冷却魔石』『発火魔石』『発光魔石』錬成レベル2『水造魔石』『青炎』『冷凍魔石』『強化魔石Ⅰ』『保存魔石』を錬成が可能だ。
そして、多くの人々は『魔』を省いて呼ぶ。
『発熱魔石』ならば『発熱石』と。
ランディは香織に幾つかの魔石を錬成してもらった。
結果、マニュアル通りにすれば、失敗しないイージースキルだった。
ランディは使いどころが判りやすい『発熱魔石』『冷却魔石』『発火魔石』『発光魔石』『水造魔石』『冷凍魔石』を各3個づつ、香織に錬成してもらった。
検証好きなランディは、1回づつ試しただけで理解したため、迷宮で使えそうにない錬成魔石は、エフィスにプレゼントをする事にした。
「しかし、香織ちゃんとリリスさんのスキルは便利過ぎるね。 もう楽しくて楽しくて」
ランディはレアスキル『魔石錬成』と『ステータス看破』を持つ2人を誉めちぎっていた。
「えへへっ……らんでぃ、わたしってすごい?」
「でも、魔石の持続時間バラバラだったね」
そう、ランディ達が持っていた魔石は極小サイズ、ギルド内部では『F型魔石』と呼ばれているが、ギルド外では浸透していない呼び方だ。
「もっとおっきい魔石だと、持続時間は延びるってさ。 発光石、冷却石は1時間、冷凍石、発熱石、発火石は三十分だったね」
「でも、水造石はコップ1杯の水に変わるって面白かったね」
マーニャの言葉にランディもうなずく。
「ああ、水筒いらずで便利だ。 でもコップは持って行かないとね」
「でも水造石10個で、銅貨15枚は高いなぁ」
「まあ、そこそこ潤った冒険者用かな、エフィスさんの話だと、この国は他よりも水が安く、生活用水なんてタダだもんね。 それにしても、色々な錬成魔石を使えば、かなり高水準の生活がおくれるね」
~ランディパーティの懐事情……金貨32枚、銀貨48枚、銅貨68枚~
◇ギルド会館2階◇
ランディがクエストの受注のため、移動していると、見た目はプロレスラーくらい大柄の男が、脚を引っ掻けて転ばそうとしてた。
周りの冒険者も、その事に気づいてニヤニヤ薄ら笑いを浮かべている。
ランディは避ける動作が面倒だと思い、強引に歩いて、冒険者を見事に転がした。
1部の冒険者は、転ばずつもりで足を出しておいて逆に転んだので、大爆笑していた。
男は顔を赤くして怒った。
「テメェ、このオレ様にケンカ売るとは、イイ度胸じゃねぇか。 カネの力でFラングになった、坊っちゃんがよう!」
「うわぁ、その坊っちゃんに転がされの? みっともないね、プクク」
ランディは言い返すと、男は激昂した。
「テメエッ! 調子にノリやがって。 このタフガイのアイザック様を、バカにした落とし前をつけさせてやる。 3階のバトルルームに行くぞ! もし断ったりしたら、テメェんとこのお嬢ちゃんの何人かは、妊娠するかも知れねぇな。 ははっ」
ランディはアイザックの言葉を聞いて、挑発に乗った。
「おい、そこの愚図! バトルルームってのに案内しな。 現実を教えてやるよ」
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ギルド会館の3階に設けられている、大きな区画に『バトルルーム』と言う名のスペースが幾つかある。
一般的な冒険者がもめ事をしたりすると、ここで闘う事が多い。
このスペース内では、殺しさえしなければ罪には問われないからだ。
他には、ランクアップクエストの個人戦もこのスペースで行われている。
武器は切れ味の悪い剣、外郭を軟らかな材質で被われた鈍器も設置してある。
基本的に『バトルルーム』での闘いは、タフな冒険者が有利だ。
今、ここにアイザックがハンマーを持ち、ランディが棍棒を持っている。
辺りには20人以上のギャラリーが、これから始まる闘いを見守っている。
アイザックはEランク冒険者の重戦士で、ランディ金の力でFランクになったと勘違いしているため、彼の事が嫌いだった。
アイザックは、ランディがこの闘いで泣いて土下座をしている所を、女達に見せてしまえば、金の繋がりなど意味のない物になると思っていた。
ついでに、何人かは自分のパーティに引きずり込んで、いい思いをしようとまで考えていた。
しかし、アイザックはやってはいけない事をしていたのだ。
それは『お嬢ちゃんの何人かは、妊娠するかも知れないな』の言葉だ。
基本、ランディが本気で怒るツボは少ない。
『弱い者虐め』『権力で人を押さえ込む』とかではあるが、冒険者同士の弱い者虐め等には、あまり反応しないし、大きな権力者が小さな権力者を虐げる事にも、反応が薄い。
そんな、ランディを怒らせたアイザックは、不幸だと言えよう。
ランディは燃えていた。
そして、2人の闘いが始まった。
~敵プロフィール~
アイザック『タフガイのアイザック』
HP 1800
重戦士 LV30
スキル
物理防御LV3
魔法防御LV1
「喰らえやぁ!!」
アイザックはハンマーを、大きく振りかぶって攻撃した。
「遅い!」
ランディはハンマーが届く前に一撃、ハンマーを避けながら一撃、ハンマーを降り下ろした後に3回叩いた。
「ブハッ、、ブゴッ、、グギャ、ギャ、グヒャッ!」
ギャラリーの大半は、ランディが5回も攻撃したと判っていない。
「速い」
「速い!」
「いま、何回攻撃した?」
そして、殴られたアイザックも、何が起きたか解っていない。
「な……な……」
「さて、僕の大切な仲間を、犯っちゃおうとした罰を与えましょう」
「らんでぃ、大切な恋人って言った」
「お兄ちゃん、大切な彼女って……ポッ」
「ランディは、大切な妻達って言ったぞぅ」
「なあ香織、この者らの耳はどうなっておるのじゃ?」
「……謎ね。 でもランディは本気で怒ってないわ」
(本気で怒ると、呼び名が俺に変わるし、体が硬直する様な殺気も今はないわ)
ランディが一歩前進した時、アイザックはスキルを使った。
「へ、壁!」
アイザックの防御スキルはランディの3連攻撃を2回防いだが、残りの1回は顔面に当たった。
「クボゥ……このっ!」
アイザックはハンマーをメチャメチャに振り回して、僅かな時間を稼ぎ、もう一度スキルを使った。
「硬壁! へへっどうだ」
アイザックが使ったスキルは物理防御スキルの2段階目の『硬壁』で『壁』の2倍弱の防御力をもつ青色透明の防御壁である。
アイザックの様子を見て、ランディが滅多にしない嫌な笑みを浮かべる。
「なら、手加減しなくていいのかな? むかつく相手に手加減って、正直しんどいよね。はぁぁぁ!」
ランディは攻撃速度をさらに上げた。
ガン! ガン! ガン! ガン! ドムッ、バシッ! ビシッ、ゴン! バシン! バシンッ!!
「ぷぎゃっ、ぐはぁ、ぼへぇ、まて……くぼうっ、待ってぐれ……ぎゃんっ、わ、悪かった……グワッ!? 悪かったぁ! ぎょへぇ」
止まらないランディの攻撃にギャラリーは静まり返っていた。
この光景を偶然見ていたジャカルタが呟く。
「あの噂は、嘘だったニャ、ランディの求心力は金だけじゃニャかったニャ。 まあ、あれくらい強くないと、みんなついて来ニャいよニャ」
と、調子の良いことを言っていた。
しかし、この闘いの噂は、あまり拡がる事がなかった。
ギャラリーが少なかった上に、アイザックを圧倒したなど信じてもらえなかったのだ。
ランディは、Fランクのクエストボードを見ていた。
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※Fランク※
『お嬢様の荷物持ち』
報酬……銀貨3枚、得点……1
個人……○、パーティ……X
備考……受注資格STR値80以上、約1日ほど買い物荷物持ちをお願いします。
期限……翌日
『運び屋求む』
報酬……銅貨各5枚、得点……1
個人……○、パーティ……X
備考……2名募集、東門から西門へ3往復する。
受注資格STR値70以上
期限……4日まで
『超薬草の採取』
報酬……銀貨各3枚、得点……1
個人……○、パーティ……○
備考……1人あたり、3束を納品する事。
期限……20日
『祭りの準備』
報酬……1頭につき金貨2枚、得点……2~3
個人……X、パーティ……◎
備考……中型食用動物『ブタシシ』を捕まえてください。血抜き内蔵の除去をすること。パーティ制限なし。生け捕りは報酬上乗せ。1パーティにつき、2頭以上捕獲でクエスト完了とする。
期限……祭りの2日前まで
『闘技場に参加(下級)』
報酬……銀貨5枚、得点……1~2
個人……○、パーティ……○
備考……只今、5名以上不足しています。
期限……試合開始日の前日まで
『☆ゴブリンの耳』
報酬……銀貨各6枚、得点……3
個人……○、パーティ……○
備考……納品数、1人あたり3個
期限……10日
『☆強骨』
報酬……銀貨各6枚、得点……3
個人……○、パーティ……○
備考……納品数、1人あたり3個
期限……10日
『☆ウサギの耳』
報酬……銀貨各6枚、得点……3
個人……○、パーティ……○
備考……納品数、1人あたり3個
期限……10日
『☆高級木片』
報酬……銀貨各6枚、得点……3
個人……○、パーティ……○
備考……納品数、1人あたり3個
期限……10日
『☆蟻酸』
報酬……銀貨各6枚、得点……3
個人……○、パーティ……○
備考……納品数、1人あたり3個
期限……10日
『☆高級な糸』
報酬……銀貨各6枚、得点……3
個人……○、パーティ……○
備考……納品数、1人あたり3個
期限……10日
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ランディが受注するクエストを決めて、カウンターに並ぼうとしたら、誰かに呼び止められた。
「ランディ、ちょっと待つにゃ」
ランディは振り向く。
ランディの後ろにはジャカルタ4兄妹がいた。
「ニャーさん」
「誰がニャーさんニャッ!」
「でも何となくしっくり来るの、不思議なの」
ジャルミネの言葉にランディも気を良くする。
「しっくりするよね。 やっぱりなの子もそう思うでしょ?」
「ジャルミネにも、あだ名れすか? はっ、まさかオレにも」
「うん、君はれす君だよ」
「なんでみんなあだ名なの? でも違和感が全くないの。 不思議なの」
このやり取りを聞いていたジャイコは期待したように聞く。
「あ、あちしにも、あだ名があるだわさ?」
「うん、君はジャイ子」
「そのまんまだわさ、なんであちしだけ……」
ジャイコは落ち込んでいた。
「おっと、ランディ……それより今回は一緒にクエストを受けてみニャいか?」
ジャカルタは、ランディを合同クエストに誘っていた。
1部を除き、数字をアラビア数字にしてみます。




