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144#第1の地下迷宮『ウノ』

 第1の地下迷宮『ウノ』


 それは広大な面積から成り立ち、第1層に降りる事が出来る入り口は、大小含めて何十ヵ所もある。


 そのうち、一度に何人も出入り出来る入り口はギルドが管理しているが、小さい入り口までは管理しきれていない。


 そんな、小さい入り口はから、年端のいかない少年達が日銭を稼ぎに侵入したりもする。



 そして、…………今日も、木の盾と槍を持った七人の少年が二体のコボルトと戦っていた。


 ~敵プロフィール~


 コボルト×2

 HP 100*100

 モンスターランク 1

 装備

 木の棒



 地下迷宮の、モンスターには大きな特長があった。

 一つ目は、瞳が真っ赤な事。

 これで、外のモンスターと見分けが一発で判る。

 二つ目は、感情が無い事。

 地下迷宮以外の生物を発見すると、必ず襲ってきて、決して逃げる事は無い。

 三つ目は、倒すと塵なって消え、代わりに魔石を落とし、まれに価値のあるアイテムも落とす事である。


 力も、スピードも、戦闘技術も未熟なコボルト等は、孤児補正の付加されている少年達に殲滅されて、極小サイズの魔石を二個づつ落とした。


 これて今日の少年達は、合計で十八個の魔石を手に入れた。

 これで、少年達はある人物から、九枚の銅貨と換金して貰える。

 これは、ギルドで換金すれば銅貨十八枚に換金出来る価値だった。


 少年達は、命がけで手に入れた魔石を相場の半額で換金していたのだ。

 だが、相場を知らない少年達はその人物に感謝をしていたのだ。


 先日、仲間が死んだ時も、悲しい顔をしてくれ、残った少年達に手甲を七つ用意してくれた。


 少年達は、自分達に一人あたり銅貨二枚分のノルマを課していた。

「もう少し狩ろう」

 その時、一人の少年が何かを察知した。

「何か来る! 隠れよう」


 少年達はじっとしていると、五体のスライムが何かに向かって移動していた。

 その先には、少年が見たこと無い武器を振り回して走っている男の冒険者がいた。


「楽しい……楽しいぽよ! 楽しいぽよぉぉぉ!!」


 短い棒を鎖で繋げた怪しい武器が、スライムにめり込む……その瞬間スライムは塵となり魔石になる。


 だが男は、魔石には目もくれないで、次々とスライムを叩いていた。

 それはまるで動かない目標物を叩いているかの様だった。

 五体のスライムのうち、一体がなんとか男に攻撃出来たが、ステップ一つで攻撃を避けて、反撃一つでスライムが消滅した。


 少年達は男の身のこなしよりも、物理攻撃に耐性のあるスライムが、一撃で消滅している事に驚愕していた。


 スライムを魔石に変えた男は、喜びの奇声をあげて、走って行く……

 そして、後から五人の女性冒険者が魔石を集めながら、男を追いかけている様だった。


「なんで主殿は、あんなにはしゃいでおるのじゃ?」

「お兄ちゃん暴走しすぎ……」

「戦っているランディに、追い付けない……」

「わたしの出番が無い……」

「ランディが落ち着いたら交渉するかぁ」


 そして、異様な集団は消えていった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 数十匹のモンスターを倒して、(ようや)く興奮状態から落ち着きを取り戻したランディは、ひなた達の要望により、隊列を組んだ。


 この地下迷宮は広く、狭い場所でも横に二人で並んでなお、余裕があった。

 狭い場所では、前衛にひなた・カミーラ、中衛にランディ・香織、後衛にマーニャ・リリスの編成で、

 広い場所では、前衛にひなた・ランディ・カミーラ、後衛マーニャ・香織・リリスになっていた。


「マーニャ、左にスライム二体」

「うん、お兄ちゃん。火弾、火弾」


「カミーラ、コボルトをよろしく」

「ワシにかかれば、小枝同然じゃな」


 ランディは地下迷宮とは思えない速度で歩き、二階層に降りる長いスロープを見つけた。


「そう言えば、スロープが二ヶ所に、大階段が二ヶ所って、マリリンモン○ーが言ってたね」


「ランディ、マリアンヌさんよ」

「そうか……もうマリでいいね。覚えるの大変だし……」


 ランディ達は、二階層に降りた。

 二階層も、出現モンスターは一階層と同じであったが、出現率が若干高く、一度に出てくるモンスター二体~五体だったのが、二体~八体になっていた。


 ランディ達は、ほとんどのモンスターを一撃で仕留めていた。


「後、コボルト二体。 マーニャ、リリスたん、ダガーで殺ってみましょう」


「「うん!」」

 マーニャは当たり前としても、リリスまで、戦う動きは、完全にコボルトを凌駕していた。

 基礎訓練、レベルも充分なのだが『異世界人補正』の影響も大きい。


 二人ともコボルトを二回切り裂いたところで、塵なって消えた。


「ふう……今日はこれくらいで辞めておくか……」

 ランディは三階層に降りる階段を見つけた所で迷宮から脱出した。



 今回、ランディは約百体づつのモンスターを倒した。

 そして、収穫は以下の通りだ。

極小の魔石六百十二個。

スライムゼリーが十一個。

コボルトスパイスが十個。

特薬キノコが九個。


 実に、この付近を狩り場にしている冒険者の、約四倍の討伐数だった。



 そして、その日はギルド会館の二階(クエスト依頼所)には行かないで、一階の換金所で魔石を換金して、宿に戻った。


「エフィスさん、ただいまです」


「あっランディさんお帰りなさい……」

 エフィスは顔をほんのりと赤くして迎えた。


 ランディの帰還に気づいたのか、シャロッシュがダッシュでランディに飛び込む。

「ランディ兄ぃ兄ぃ、おかえりっ!」



 宿に帰ると、ランディには仕事が待っていた。


 ランディは昨日作った浴槽を見つめて呪文を唱える「第1レベル呪文……クリエイトウォーター」

 

 ランディはお肌がツルツルになる、天然水で作った炭酸湯を召喚した。


「さっ、香織ちゃん一緒に入ろっか……」

「えっ? えっ? ええっ!?」


 ランディの野望は、マーニャやひたなの妨害によって打ち砕かれた。


 十人で食事を取った後、ランディは今日一日の報告をした。


「みんな、国や都市の名前は違うけど、ここは、僕の知ってるオンラインゲーム『ファンタジーユーフォリア・オンライン』と似ている……似過ぎだ……」


「似過ぎ?」×5

 みんな、聞き返す。


「ああ……まず僕は、チュートリアルまでしかプレイしてなかったけど、チュートリアルでは一番難易度の低い地下迷宮の名前は『ウノ』だった」


「全く同じね……」


 香織の言葉に頷いて、

「出てきたモンスターも『スライム』『コボルト』『化けキノコ』と同じだった……」


「お兄ちゃん、クエストは?」


「ああ、チュートリアルだから、僕が知ってるクエストは一つスライムゼリーの入手だ……あとスライムは物理攻撃半減って言う特種能力を持つんだけど…………検証できなかったな……」


「ランディのオーバーキルが原因だぁ」


「あと、本日の収穫で魔石を全て換金したよ。金貨が六枚、銀貨が一枚、銅貨が二枚だ」


「らんでぃ、それって多いのかな? 少ないのかな?」


「マジックアイテムを買うには少ないよ……だから早くパーティランクを上げて美味しいクエストを受注しよう……でもそれと同時に、スキルの検証もしないとね」


「スキル、私も使いたいぞぉ」


「ひなたさんが一番順応し難いと思ったんだけどなぁ……」

 マーニャの予想は外れた様だ。


 ランディがはっちゃけ過ぎて、目立たないが今回の地下迷宮のゲーム感覚にみんな、心が踊っていたのだった。


「僕の集めた情報だと、そこそこ強いやつは、この都市にあるもう一つの地下迷宮『トレス』に行くらしい……そしてそれ以外は階段を真っ直ぐ下って十一層が狩り場だって言ってた。香織ちゃんは?」


「うん、第1の地下迷宮『ウノ』の低層階は弱くて一般職の人も出入りしてるの。地下一階層、二階層がそれね……三層からは一般職の人だと命を落とす危険が増すらしいから、地下三階層、四階層の階段から離れた場所なら、冒険者とかち合う事はほとんど無いはずよ」

 どうやら、魔石の換金時に香織は情報収集をしていた様である。


「香織ちゃんアリガト……大好きですよ……でスキルの検証…………ん? なんでみんな唇を尖らせているのかな?」

 面と向かって告白出来ない癖に、食後のティータイムに爆弾発言して、なお周りの空気が読めないランディだった。


「ところで主殿、香織と付き添って情報を集めていたワシには何かないのか?」


「カミーラもありがとう、今度一緒にお風呂に入りましょう」


「んなっ!?…………それは主殿が得をするだけでは……」

 言葉とは裏腹に少し嬉しそうなカミーラだった。


「さぁ、話は変わるけど、スキルの検証は地下四階層でやりましょう。 それでは解散」



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ランディ視点


「ふう……そう言えば、第7レベル呪文が解放されたのを、言ってなかったな……」


 第7レベルか…………


 ランディは目に少し力を入れて、左上の空間を見る。


「第7レベル呪文……」


 ランディの瞳に第7レベルの呪文が映る。


 人物捜索LVⅡ≡捜索範囲無限

 呪文詠唱破棄≡第3レベル呪文まで、効果時間2時間

 ハイトゥルーサイト≡半径20m以内の全てを知る。効果時間24時間

 ホールドパーソンLVⅢ≡レベル9以下を麻痺

 ホールドモンスター≡レベル9クラスまで麻痺

 クリエイトアニマル≡動物を産み出す

 クリエイトアンデットLVⅢ≡死体に限らずヴァンパイヤ、ワイト、レイス、ファントムを作る

 インスピレーション≡3回イエス&ノーで神が質問に答える

 ファイブイヤーズオフ※≡5年分若返る

 エアリアルサーバント≡自分に似た強力な精霊を召喚する

 ドッペルゲンガー≡体の一部を使って分身体を創る


 簡単な説明が書かれているが、もう少しだけ突っ込んだ事も理解できる……なんでだ?

 僕が『ランデイヤ』の体に、馴染みつつあるのかな……


 まさか、僕が僕じゃ無くなるなんて、無いよな……

 そうだ、これを使おう。

「第7レベル呪文……インスピレーション」

 目の前に光の玉が浮かんでいる……これに質問すればいいんだよな。

「僕はこの先も僕のままだよね?」


『yes』


 うん、聴こえる……

「明日は、僕が本気で戦える強いやつと出会えるかな?」


『no』


 うん、明日は強敵無しっと……

「この世界と僕のレベルは四倍計算で合ってる?」


『yes』


 光の玉は、消えていった。


「第7レベル呪文……エアリアルサーバント…………おおっ」


 僕そっくりの精霊が出てきたよ……少々ぼやけた感じがするけど。

「第7レベル呪文……ハイトゥルーサイト……」


 僕のエアリアルサーバントはかなり強いかも知れない。


  《ランデイヤエアリアル、精霊、精霊、レベル26 HP2600》


 僕は、エアリアルを使って色々試してみた。

 エアリアルは僕と違って空を飛べる。

 そして、エアリアルと僕の位置を入れ換える事も出来た。


 僕は、エアリアルと組み手をしながら遊んだ。

 だけど楽しすぎて本気を出したら、エアリアルは怒って自己消滅してしまった。


 まだ推測の域を出ないが、エアリアルは強すぎる者との戦闘は出来ないのかも知れない……


 次にエアリアルと組み手をする時は手加減しよう……だって組手で汗をかけるくらい、運動出来たからね。

 なんたって、あのカミーラを若干上回る体術は貴重だ。


 僕は、気持ち良く寝る事が出来た。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ランディは地下迷宮の楽しさに二つの大事な事を忘れていた。


 一つは、この世界巻き添え召喚された原因の召喚主を捕まえて、宴会に持ち込む事。


 もう一つは、第7レベル呪文の人物捜索LVⅡを覚えた事により、ランディの仲間である、ガル・カーズ・アーサーを容易に探すことが出来るようになった事を。


補足説明、第7レベル呪文のホールドパーソンの9レベルまで麻痺は、

『ユーフォリア』世界では、36レベルの人間まで麻痺できます。

第7レベル呪文のホールドモンスターの9レベルまで麻痺は、

地下迷宮では、モンスターランク4まで麻痺できます。

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