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141#確保、快適空間

 ランディは、困り果て座り込んでいたエフィス達四人を発見した。


「エフィスさん、どうしましたか?」


 エフィスは項垂(うなだ)れた顔を上げると、ランディの姿が目に映った。


「ランディさ「ランディ兄ぃ兄ぃ! あのね、シャロ達ね、住むお家が見つからないの」」


 エフィスの言葉のを遮りシャロッシュがランディに飛び付く。


 ランディは飛び付いてきたシャロッシュをひょいと抱き上げて、エフィスに事情を聞こうとした。


「エフィスさん、どういう事ですか?」


「あ、あなたには関係ないわっ」

 長女アハットが、ランディを睨む。


「アハット止めなさい、命の恩人に失礼でしょ? 」


「う……だって……」


「すみません……ランディさんに話すべき事では、無いのですが…………私たち裸同然で逃げて来たものですから、手持ちのお金も少なく、前に住んでいた家を買い戻す事も出来なくて……」


「えっ? 役所みたいな所で、盗賊の被害を報告したんじゃ……」


「はぃ……報告はしたんですけど、時間がかかるって説明を受けてまして、すぐに対処してくれたのは、無税での滞在の許可と、以前に売った家がどうなってるか。調べてくれただけでした」


「うわぁ……」


 実はストマティア国は、自らを『サンジュウの災厄』と名乗る謎の集団によって、重要拠点以外に兵を避けないでいた。

 幸い、都市や大きな町などは目立った被害が無いが、多数出現している盗賊に対して、対処が遅れているのだった。



「あいつら……卑怯よ引っ越しする時に売った値段は金貨二十枚だったのに、買い戻しには金貨三十枚が必要だなんて……酷過ぎだよ……」

 シャニムが涙声で愚痴り出す。


「そんな事言わないで……支払いの目処が有るなら、完済は二ヶ月先でもいいって……」

「お母さん、私たちスキルも元手も無いのに金貨を二十枚以上もどうやって集めるの?」


 シャニムを慰めようとしたエフィスだが、逆に質問責めに合う。


「そうね……集めるどころか、逆にお金が減ってしまうわ……」


「エフィスさん、町の役人は何にもしてくれないの? 」

 ランディは、盗賊に襲われた人に対する、待遇じゃないなと思っていたが、


「都市の兵士さん達は忙しくて、盗賊の確認まで二ヶ月以上かかるそうです。 役所を通してギルドに依頼すると、似たような事案は中々引き受けてもらえないそうです。個人でギルドを通すと私達が、お金を払わないといけませんし、冒険者を即決させる程のお金なんて……でも宿屋の優遇はしてくれるそうです」


「宿屋? 」


 ランディは肩に乗っているシャロッシュに家の事を聞いてみた。


「ねぇ、シャロッシュ」


「シャロでいいよ、ランディ兄ぃ兄ぃ」


「シャロの前に住んでいた家は、おっきいかい?」


「うんとね、物凄く大きいんだよ。たくさんの人が入れるんだから」


「そうね……古い家ですが、大きさだけはありますね」


 シャロッシュとエフィスの言葉にランディの瞳が光る。


「ねぇ、エフィスさん……その家を使って、宿屋を作りませんか、客は僕たち六人ですが……」



「ランディ、なんか悪いこと考えてる顔よ」

「お兄ちゃん、そこは、優しい顔にしないと」

「ランディ、私にはやらしい顔で迫ってもいいぞぅ」


 香織、マーニャ、ひなたの順に言葉の横槍が入るか、今回のランディは反応しない。

 無視を決め込んだようだ。


「そうだ、どうせなら軌道に乗るまで、僕たちの専属宿屋にしましょう」


「あの、でも、私たち……いいのですか? それに、宿代なんて幾らにすればいいか……」



「ふっふっふっ……もう相場は調べてあります。なんと、一般的な宿屋での値段は銅貨四枚から十二枚でした」



「ランディ、いつの間にしらべたの?」

「えっへん、わたしのらんでぃは凄んだよ」

「リリスのじゃなくて、私のランディだぞぅ」

「三番目と四番目は黙ってる!」

「相変わらずの夫婦漫才っぷりじゃ」

「あの、僕は参加してませんが……っていうか、やめてっ、今真面目な話をしてるんだけど……えっと、どこまで話したかな……そうだ、もし宿屋にして、僕たちを泊めてくれるなら、貸し切り分も加味して、一人あたり銅貨八枚でどうかな?」


「ランディ、今のオヤジギャグかぁ?」


「ひなたん、僕が本気なら『銅貨七枚でどうかなな?』っ言うから…………で、僕たち六人分で銅貨四十八枚。十日泊まって銀貨四十八枚。取り敢えず六十日泊まって、金貨二十八枚と銀貨八枚。エフィスさん、これで頑張って見ませんか?」


 ランディはドドンガから換金してもらった、貨幣を取り出す。

 ランディは、大金貨五枚、金貨四十枚、銀貨を百枚持っていて、六十日分の宿代をエフィスに渡そうとした。


 エフィスは少々考え込む仕草をして、ボソボソと呟く。

「魔石と食事を切り詰めれば……出来るかも……」


 顔をあげて、ランディの手を取り見つめる。

「ランディさん、ほんとうに甘えてもいいのかしら?」


 エフィスの仕草にランディは、『香織ちゃん達で女慣れしてなければ堕ちたかも知れない』と後に語っていた。


「いえ……甘えるのは僕らですよ(くっくっくっ、さっそくアレが役に立つか) 。 よろしくエフィスさん」


「はぃ……よろしくお願いします」


「やったぁ!」

 と喜ぶシャロッシュだった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 一時間と少し歩くと、目的の家に着いた。


 すでに、金貨三十枚を払い、正式に『家』はエフィスの物になった。

 しかしその時、家の所有者の息子が陰で歯茎から血が出るほど悔しがっていたのは、みんな知らない。



 しかし、家の中は何も無く、閑散としていた。

「どうしましょ……家財道具の事まで考えて無かったわ」


 エフィスの言葉にランディはニヤリとする。


「何も無いなら、かえって都合がいい……」

 ランディは、銀貨一枚を渡して、

「エフィスさん、食事の買い出しをお願いします。僕はこの家を少し住みやすくしたいんで、色々いじっても良いですか?」


 ランディの言葉には不思議な圧力があって、エフィス達は『どうぞ』と答えたのだった。


 ……

 …………


「さあ、腕が鳴ります……あれ? なんか違うな。さあ、妄想が膨らみます……これも違うなぁ」


 香織はこの台詞だけで、ランディの行動が読めた。

 香織は思い出す……日本に滞在していた時、ホームセンターを含む様々な店で破壊活動をしていたランディを……


 そう、ランディは『第1レベル呪文リカバー』で修復した単純構造のアイテムを『第3レベル呪文』で生み出す事が出来るのだ。


「第3レベル呪文……クリエイトアイテム。続いて第3レベル呪文……クリエイトアイテム。さらに第3レベル呪文……クリエイトアイテム」


 ランディは、軽量床材・大量の畳・ふかふかの布団

 十組・大理石調素材の三面鏡付き洗面台・システムキッチン・ダイニングテーブルとイス・鍋や包丁などの調理道具・ホーロー板・ユニットバスを二組・食器を数十点を出現させた。


 只の土間だった部屋の一つは、二つの浴室に変化し、水は出ないが三面鏡が付いた洗面台まで設置された。


 大きな五つの部屋の内二つは細かく八つに分割されて、床材を敷き詰め、その上に畳を敷いた。


 一つはリビングとして床材のみを使用してテーブルとイスを置き、隣にはシステムキッチン設置して、調理道具・食器を片付けた。


 ほとんどの物は、ただ置いて固定しただけなので、一時間とかからずに作業は完了した。


 そこに、買い出しだから帰って来たエフィスたちは、手に持っていた食料をドスッと落とす程に、家の内装は様変わりしていた。



 そして、シャロッシュが『すごぉい!すごい、すごい、すごい!?』と部屋の中にダッシュした後、アハットが、錯乱ぎみにランディに詰め寄る。

「あ、あああああ、あなたは何が目的なの? おかしいわ、何の見返りも無しに、ここまでしてくれれなんて……何が目的?」


 シャニムもランディを睨みながら頷いている。


「一番の目的は、僕達の快適な居住空間の確保ですね。都合の良い事にエフィスさん親子と知り合いになりましたので、利用しました」


 なおも、アハットは食って掛かる。

「それなら、この家だけ貰って私達を追い出すって事も出来るじゃない、それだけのお金も持っていたじゃない……な何で私達も一緒に……はっ、もしかして私達の身体が目的なの?」



「いや、身体は香織ちゃんで間に合ってるし(この肉体になってから、可愛いだけじゃ性欲が全く湧かないんだよなぁ)……でも、僕があなた方を追い出した後に、快適に寝泊まり出来る……僕がそんな事を出来る人間に見えるんですか? ……もし、そんな風に本気(・・)で思っているなら、僕達は出て行きましょう」


「あっ…………」

 アハットは悟った。

 この人にとって、これは大きな施しじゃなくて、些細な優しさだったんだと。


「あの……ごめんなさい……わ、私……貴方が来てからあまりに良い事が起こり過ぎて、色々怖くなって、それでこの状況を受け入れたら、信じたらダメって思って……」


「うん、気にしない……もし、負い目が有るなら、エフィスさんと、料理の夜食と朝食を気合い入れて作って貰えますか? 何せうちの姫様方ときたら……」


 ジト目で皆を見るランディ……

 そして、揃って視線を落とすランディの仲間たち……


「それではランディさん改めてお願いします」

 ペコリと頭を下げるエフィス。


「分かったわ……」

 とぶっきらぼうに言って、姿を消すシャニム。


「今まで、疑ってごめんなさい……これからよろしくお願いします……ランディ兄様」

 アハットは顔を紅く染めていた。



「ランディ兄様!?」×5


「あっちゃぁぁ、あの子もお兄ちゃんの笑顔に騙されたよ……」

「これ以上、妻が増えるのは迷惑だぁ」

「アハットもわたしたち五人と一緒になったね」

「これ、リリスっワシを頭数に入れるなっ……ワシは楽しそうだから付いて来ただけじゃ……」

「もう、ランディったら仕方ないわね……」

「あら? 香織さん……随分と余裕ですね? それに、『身体は香織さんで間に合ってる』って何ですか? 独占禁止法に、抵触しますよ?」


 香織の顔は朱に染まった。



 ……

 …………

「第5レベル呪文……クリエイトフードフリー! …………さて、明日からの食料も調達したし、お風呂に入って、明日からの、作戦会議でもしますか」


「作戦会議?」


「うん、まずお風呂お風呂。準備してくる……」


「なぁ香織ぃ、ランディは風呂のお湯をどうやって?」


「「「クリエイトウォーター!」」」

 香織・マーニャ・リリスが声を揃えた。


「「は?」」


「ひなたさんとカミーラさんは、知らないだろうから説明するわね。 ランディのクリエイトウォーターは飲んだ水を完全に再現できるの……今日は張り切っているから、炭酸風呂かみちのく温泉、韮崎温泉の三択ね。でも、エフィスさんたちに何て説明しよう」


「「はぁ……」」

 全く付いていけない、ひなたとカミーラだった。


 ……

 …………


 その後、エフィス達親子に気づかれぬまま、お湯を張り終えたランディは、香織たちの予想通り大騒ぎになった。


 その後、ランディは香織を連れて、入浴しようとしたら、多数の女性から苦情が来た。

 しかも、その中にはアハットとシャロッシュの姿が混じっていたのだった。


 ランディたちの長い一日が、ようやく終わった。


 余談では有るが、香織はランディに拉致されて、自分の部屋で寝ることは無かった。


宣伝です。

ランディの転生物語を書いてみました。


題名は『神級回復呪文使いが、転生したら……こうなった』



http://book1.adouzi.eu.org/n9057df/


です。

気になる方はどうぞ、って言うかミテ~~~。

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