139#ステータスカード
ランディ達は大都市『テトヴォー』に到着した。
町には、三重に防壁が建てられていたが、最外周以外は常に開門状態だと言う。
衛兵もいるにはいたが、エフィスが挨拶すると、すんなり入ることが出来た。
衛兵達は一応、ランディ達を少々警戒していたので、合言葉または通行証の類いを、見せていたんだろうと思われる。
町の中心地帯まで案内してもらい、親子とは別れる事になった。
ランディ達は、ギルドの複合施設。
エフィス親子は、盗賊の被害の報告と保護を求めて、役所に行くからだ。
「みなさん、色々とお世話になりました、」
「ぁ…………」
エフィスは、自分のセリフを取られて言葉がうまく出て来ない。
「ランディ兄ぃ兄ぃ! またね~」
大きく手を振りながら、別れの挨拶をするシャロッシュの頭を撫でて、エフィスは深々と頭を下げて、別れを挨拶をした。
そして、エフィス達親子はランディの視界からいなくなった。
……
…………
◇総合ギルド会館◇
活気溢れる都市の中でも、ここは更に活気に満ちている。
ここは四階建ての大きな建物で、調べると一階は魔石の換金所・ドロップアイテム換金所・その他宝石や金塊の換金所に別れ、他に冒険者登録所・パーティー、クラン登録所となっていて、更に食堂も二種類併設されていた。
その中でも、魔石の換金所と食堂が、特に賑わっていた。
香織の集めた情報だと、二階にはクエスト受注する場所があり、そこも冒険者達がたくさんいて、賑わっていると言う。
「さあ、初めは当座の軍資金を入手しないとね」
ランディはまとまった資金の必要性を感じて、手持ちのお金を、この世界で使えるように換金することにした。
しかし、換金できる物を持っていたのは、ランディとマーニャだけだった。
ランディもマーニャも、以前に別の異世界で手に入れた『ドラル貨幣』だ。
ランディは百三十万ドラル、マーニャは里美や真からも貰っていたので、六十五万ドラルを持って換金所に向かった。
「おじさん、これの換金を頼むよ」
換金所のカウンターでくつろいでいたオヤジは、ランディ達を見るなり、
「ん? ああ、いらっしゃいって、スゲー美人の女ばかり連れてやがるな」
とビックリしていた。
「遠くの国から来たんだ、この金をここで使えるようにしてくれないか?」
ランディは、カウンターに金貨の入った袋ををドスンと置く。
オヤジは、袋の中身を確認しながら、少しずつ表情を変えていく。
「ん? おお……見たこと無い金貨だが…………金には変わりねえな……しかも結構持ってるじゃないか……チッ、どっかの金持ちボンボンかよ……」
ランディの換金は、手数料を考慮しても、明らかにぼったくられていた。
ランディの貰った金貨に、マーニャが文句を付ける。
「おじさん、これはぼったくり過ぎだよ? 私の炎で、少ない髪を燃やされたいの?」
好戦的なマーニャであった。
売り言葉に買い言葉と言うか、オヤジも反論する。
「ああん? 嫌なら他の換金所に行きな。ここ以外にも、換金所は有るぜ。多分俺以上にピンハネされるだろうけどなっ」
「このぉ、言わせておけ……むぐぅ」
マーニャは、ランディによって口を塞がれる。
「マーニャ落ち着いて、あのおじさんの身にもなってごらん……こんな可愛い女性達を五人も連れて歩いたら、悔しくてぼったくる気にもなるって。そうでしょ? おじさん。僕らはこれから冒険者になるんだ……揉め事は無しだよ」
ランディの話を聞いたオヤジは、目を見開いた後、大笑いした。
「ぶあぁっはっはっはっはぁ……面白ぇなあ、坊っちゃん、相場の三倍の手数料を取ったのによ、文句を言わずに彼女自慢かい。交渉次第じゃ相場の二倍で手を打ったのによ。ぼっちゃん達は冒険者になりに来たのかい? よしピンハネし過ぎたから、サービスだ。六人分の『ステータスカード』発行と冒険者登録は俺にまかせなっ、ついでに美人好きの坊っちゃんのために、可愛いギルドの受付嬢を呼んでやるぜっ。待ってな」
そんな事を行って、換金所のカウンターからオヤジは消えていった。
待っている間、ランディは胸をドキドキさせていた。
(これが夢にまで見た冒険者登録……冒険者に地下迷宮攻略……スライム退治にオークとの戦闘……腕が鳴ります)
ランディは未だに自分の力を理解していない様だ。
(さぁって、こんな時はこのアイテム! )
ランディはバックパックから、一つのアイテムを出す。
「じゃじゃぁ~ん。『ライアーフィルム~』」
「ランディ、これは?」
「香織ちゃん、これはステータスカード等の隠蔽工作に使う、誤魔化し用の被膜だよ。特に指定しない限りステータスは十分の一で表情されるんだ……一応僕ってレベルMAXだからね。」
香織達に説明してると、オヤジがやって来た。
「とりあえず、そこのテーブルに座りな。ほい、ま未使用のステータスカードだ血を一滴垂らせば出来上がりだ。今あいつを探しに行くから、ステータスカードをみて待ってな」
少し高めの囲いに覆われたテーブルに案内されて、それぞれ血を垂らしてみた。
そして、それぞれステータスカードが光り、文字が浮かんで来た。
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【ランデイヤ】
レベル 200
職業 僧侶
HP……11600+220=11820
STR……1800+110=1910
SPD……1900+110=2010
INT……1540+110=1650
MID……2240+110=2350
MP……3780+220=4000
スキル……
回復 レベル2
補正値……
異世界人補正、200・100
チュートリアル完了補正、20・10
【遠藤香織】
レベル 24
職業 盗技士
HP……1160+200=1360
STR……468+100=568
SPD……420+100=520
INT……412+100=512
MID……144+100=244
MP……556+200=756
スキル……
魔石加工 レベル2
速力上昇 レベル2
剣技 レベル1
補正値……
異世界人補正、200・100
【マーニャ】
レベル 80
職業 魔法士
HP……2400+200=2600
STR……540+100=640
SPD……560+100=660
INT……800+100=900
MID……360+100=460
MP……1160+200=1360
スキル……
火魔法 レベル4
風魔法 レベル3
魔法防御 レベル3
補正値……
異世界人補正、200・100
【リリステル】
レベル 28
職業 魔法士
HP……900+306=1206
STR……312+113=412
SPD……327+113=440
INT……255+113=368
MID……227+113=340
MP……482+226=708
スキル……
闇魔法 レベル2
光魔法 レベル2
ステータス看破 レベル2
補正値……
異世界人補正、200・100
魔人族補正、100・10
片親補正、6・3
【前庭ひなた】
レベル 68
職業 重戦士
HP……4760+500=5260
STR……680+200=880
SPD……612+200=812
INT……340+200=540
MID……340+200=540
MP……680+400=1080
スキル……
剣技 レベル3
物理防御 レベル4
魔法防御 レベル4
補正値……
異世界人補正、200・100
エルダーゾンビ補正、300・100
【カミーラ・フォン・アルフシュタイン】
レベル 100
職業 戦士
HP……6000+500=6500
STR……900+250=1150
SPD……1100+250=1350
INT……600+250=850
MID……600+250=850
MP……1200+500=1700
スキル……
剣技 レベル5
攻撃力上昇 レベル4
速力上昇 レベル3
魔法防御 レベル3
氷魔法 レベル5
再生 レベル2
補正値……
異世界人補正、200・100
ノスフェラト補正、300・150
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ランディは、ステータスカードを見て、自分のレベルに突っ込みを入れた。
(おい! レベル200ってなんだ? 僕のレベルはガルと同じで、MAX50じゃなかったか?)
ちらりと香織のステータスカードを見る。
(レベルは24か……確か『トゥルーサイト』で見た最新の情報でも、香織ちゃんのレベルは6だったはず……ってあれ? 香織ちゃんのHPの数値も違う……)
ランディから見た香織のステータスカードには、こう書かれていた。
【遠藤香織】
レベル 24
職業 盗技士
HP……1160+200=1360
STR……468+100=568
SPD……420+100=520
INT……412+100=512
MID……144+100=244
MP……556+200=756
スキル……
魔石加工 レベル2
速力上昇 レベル2
剣技 レベル1
(確か香織ちゃんのHPは290だったはずなのに……まさか、レベルや能力値の表記が僕の世界と四倍違うだけなのか? そうなんだな?)
ランディはステータスカードの裏側も確認した。
(ぶっ!? 異世界人補正? チュートリアル完了補正ってなんじゃぁ!?)
色々リアクションをしていたランディに香織が覗きこんだ。
「あれっ? ランディ、裏側は何にも書いてないのね……私には異世界人補正って書いてあるけど……」
香織のステータスカードの裏側を、見たランディには、何も見えていない。
「えっ? …………もしかして……裏側は本人しか見えない作りなのか?」
「えっそうなの? ってちょっ…………」
香織はランディのレベルや能力値の高さに絶句した。
ランディもそれを察して、例のアイテムを即座に使った。
ピト……
ランディの能力値表記が変化した。
【ランデイヤ】
レベル 20
職業 僧侶
HP……1160+220=1380
STR……180+110=290
SPD……190+110=300
INT……154+110=164
MID……224+110=334
MP……378+220=598
スキル
回復 レベル2
補正値
異世界人補正、200・100
チュートリアル完了補正、20・10
「うん、HP1380か……低くなりすぎたか?」
それを見聞きした香織が、
「ランディ今のアイテムって何? 能力値がすごく下がったわ」
「うん、僕だけ能力値が四桁ばっかりだから弄ってみた」
「はあ、ランディは何でもアリね」
そこでマーニャも頚を突っ込んで来た。
「ねえ……裏側の補正値の内約は自分以外に見えないみたいね。」
(成る程……そうだったか……でも、このチュートリアル完了補正っていったい……)
「みんなは補正値って異世界人補正だけ?」
「「うん」」
香織とマーニャが答えたが、他は違った様だ。
「わたしは、魔人族補正と片親補正ってのがついてるよ、らんでぃ」
「私は、エルダーゾンビ補正だぁ」
「ワシは、ノスフェラト補正があるのじゃ。主殿は?」
「えっ? 僕? ……ええっと……チュートリアル完了補正?」
「「「「「……はぁ?」」」」」
「ですよねぇ……」
……
…………
「で、お兄ちゃん……ここはゲーム又はゲームに酷似した世界だと思うの……よーく思い出して。きっとお兄ちゃんは、この世界のとよく似たゲームをしてると思うの、少しだけど……」
マーニャは、ランディのチュートリアル完了補正と地下迷宮、モンスターは倒すと死体にならずに魔石になる、の情報だけでこの推理をした。
「だけどなぁ、携帯ゲームも入れたら、チュートリアルだけやったゲームなんて、腐るほどあるぞ」
「う~ん……じゃ携帯ゲーム以外では?」
「魔石……地下迷宮……心当たりは有るんだけど……地名が違う」
「どんなゲーム? お兄ちゃん」
「『ファンタジーユーフォリア・オンライン』っゲームなんだけどな、地下迷宮は全部で四つ、舞台はユーフォリア大陸のリスタニア王国内にある町が舞台になっているんだ」
「ふぅん……あっこの話は、また後にしよっ」
「……そうだな」
ランディとマーニャは、換金所のオヤジが戻って来たのを見た。
「よう、ずいぶんと盛り上がってるじゃないか……金持ちかと思えば田舎者か? 」
と言いつつ、ステータスカードをチラ見する換金所のオヤジ。
オヤジの位置からは、香織、ランディ、リリスが覗き込める様だ。
「ん? おおっ!?」
いったい換金所のオヤジは、ランディ達の何を見て驚いたのだろうか……




