表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/172

134#サバイバルゲーム終了

 ◇人工島A◇


 ランディ達六人と、宮城陸達三人のグループは、海岸線で大型船がギリギリまで近づいて来るのを見ていた。


「やりましたね、陸さん……」

 福島美月が、涙を浮かべる。


「これで、金五億……本当に?」

 山形葵は、半信半疑だった。

 何故なら彼女等にとって、ランディ達が来てからのサバイバル生活は、自分が見たことのある『無人島生活一週間』と言うテレビ番組よりも、楽に感じたからだ。


 彼女等にとって大変だったのは、熊や猪の解体ぐらいだった。


 それも、宮城陸と福島美月が主役で、山県葵はだだの助手だった。



 ランディも、ガストブレイク社の動向に少々気になったののか、少なからず情報を持っているカミーラに、小声で聞いてみた。

「カミーラ、運営は賞金の支払いと宴会はやってくれそう?」


「うむ、今回ガストブレイクは、白い部分、黒い部分が別れているのが判明したのじゃ……なんとも言えん……ただ、あの船は無人船でガストブレイク研究棟の近くにある港停泊する仕組みじゃ、ランディよ、今一度確認する……サクラの敵をワシと一緒うってくれるのじゃな?」


「ああ……ただし僕は向かってくる敵以外は殺さない……そこは、カミーラがやるんだよ。 僕は手伝うだけ……」


「ランディ、それで充分じゃ……感謝する…………あっ」


 カミーラが何か思い出したように、声を上げた。


「何? カミーラ……」


「そう言えば、ガストブレイクは、ランディ級の測定不能反応を、後三つも確認していたが、心当たりは有るかの?」


 これを聞いたマーニャは、ランディが答える前に質問した。


「ねぇカミーラさん……測定不能って、どうして測定不能になるか解る? それに三つってまさか……」


「ガストブレイクの生命力測定装置は一定以上の力を測定すると、誤動作から測定不能になるのじゃ、言い換えると測定限界値オーバーじゃな」


「なるほど…………それで、後三つなら心当たりが有るぞ。僕の仲間だ」


「仲間?」


「カミーラさん説明するね。私達はお兄ちゃんの仲間でも、意味合いは『彼女とか妻』なの。」


「何でやねん!」

 ランディはマーニャに『ぴこっとはんまぁ』でツッコミを入れる。

 ピコッ!


「あたた…………でね、お兄ちゃんの言う仲間は、戦闘力なら化物級のマジ仲間なの……えっとね、ガルさんから聞いた話だと、お兄ちゃんの攻撃力は四人中最弱で、しかも現在弱体化中だから、『早く元に戻らないかな』って言ってたよ」


「最弱!? 弱体化中!? あれで? ……あれで!? …………」

 カミーラはそれ以降、だんまりとしていた。





 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ◇人工島B◇



 ここも、大所帯で大型船に乗り込み、抱きしめ合うようにこのゲームを生き残った事を喜んでいた。


 大型船の中は、ほとんどの場所がロックされていて、移動できる場所は船首とデッキ。そこに繋がる六つのプライベートルーム、食料が保存されている倉庫だった。


 新潟秀次も、ある疑問に到達していた。

「運営は本当に私達に、お金持や特権階級を与える気が有るのかな? もし私だったら……」



 すると、船内に添え付けられていたスピーカーから音声が流れて来た。

『あ~、あ~、こちらマイクのテスト中…………聞こえますか。 残念だが、そちらの映像は届くけど、声は聞こえないんだわ』


 この時、カーズとアーサーが同時にずっこけた。


「カーズさん!? アーサーさんまで!? この床は摩擦係数がゼロなんですか?」


『アーサー・カーズ、久しぶりだなぁ……どうだった? ゲームは楽しかったか? 俺様を差し置いて遊びまくった感想は如何かな?』


 アーサーもカーズも、声の主がガルだと瞬時に理解した。

「オークキング 出したの ガルか? 少し 物足りない もっと強いの 用意しろ」


「ガルがそこにいるって事は、兄さんもいるんだな? ガルより、兄さんの声を聞かせろ!」


 当然二人の声は、ガルに届かない。


『因みにガストブレイク社は、俺様が乗っ取った。賞金は約束の物プラス、不動産の斡旋、就職の口利き、旅行会社の紹介も追加してある』




 ガルの声に、マリ・ユリ・エリの三人と、新潟夫妻安堵と喜びの表情を浮かべたが、キンジはスピーカーに対して、突っ込みを入れていた。


「一人や二人で、このゲームを作れる巨大な企業を乗っ取るなんて、あり得るんですか? 答えはノー!! 恐らく相手は、国家レベルの何かと繋がってるはずだよ? ありえ~ん!」



『まあ、そう言うわけで、約半月の間クルージングを楽しんでな。 俺様はやることがまだまだ有るからな…………ブツッ……』


 音声は一方的に切れてしまった。


「あっこら! 兄さんを出せっ! 」


「半月間 暇だ キンジ 鍛える 」


「死亡フラグ、キターー!!」



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ◇大型船内◇


 船内のラウンジにみんなが集合して、六つの部屋割りを決めていた。


 九人で六つの部屋割りで難航していた。


 ランディ「だから、僕と香織ちゃんで一部屋、マーニャとリリスたんで一部屋、ひなたんとカミーラで一部屋、後の三人で三部屋が一番平和だって……」


 マーニャ「反対!」

 リリス「いやっ! わたしはらんでぃと一緒の部屋!」

 ひなた「夫婦円満の秘訣は公平なローテーションだぁ」

 ランディ「誰が夫婦だ!」


 美月「あのぅ、私は別に陸さんの同室でも、いいんですけど……」

 葵「えっ?! 美月、抜け駆け?」

 陸「はぁ、面倒くせぇ……」


 カミーラ「そんなに同室が良いなら、六部屋も使わず、いっそ三部屋だけを使用したらどうじゃ? そこの宮城、福島、山県で一つ。ワシとランディと香織で一つ。マーニャ、リリス、ひなたで一つ。ほら解決じゃ」


 マーニャ「ちょっとまったぁ!! カミーラさん? ちょっと気を使って優しくしてれば、突然恐ろしい案を出しましたね? 断固反対!」

 ひなた「もう、くじ引きで決めないかぁ? 私はくじ運が強いし……」

 香織「私は別に一人でも大丈夫だよ。みんな仲良く……ね?」

 ランディ「さすが香織ちゃん! 大好き❤ガバァッ」

 香織「きゃっ! ランディ!? みんな見てるっ」


 マーニャ「正妻の作戦勝ち?」

 リリス「らんでぃ、私にもそれやってぇ」

 ひなた「さすが香織……ランディのツボを心得てるなぁ」


 ランディが香織に抱きついた辺りで、スピーカーから音声が流れて来た。


『あ~、あ~、只今マイクのテスト中。 ランディ、今のイチャイチャは録画したからな……』


「ガル!?」×4

 ランディ、香織、マーニャ、リリスが声を揃えた。


『あ~因みにそちらの声は聞こえないが、通信可能な受話器をただ今設定中だ…………喜べ、半月後に全員集合だぞ。さ~ら~に~、見事このゲームに生還した『宮城陸』『福島美月』『山形葵』の三名は金五億または、金二億と特権階級の住民票を進呈して、追加で一流の旅行会社と不動産会社を紹介しよう』



 香織・マーニャ・ひなたはランディの仲間達集合に期待と恐れを抱いていた。


 仲間との再会とは言え、あの強さを持ちながら、悪ふざけが四倍になったらと思うと素直に喜べない三人だった。



 宮城達にとって、あきらかに怪しい男の声だったのだが、不思議と説得力があり、山形葵は座り込むように安堵した。


 しかし宮城陸は、ランディを睨み付け、

「あんた、あの男の知り合いなら、運営の仲間なのか?」


 はっとして、ランディを見る福島美月と山県葵。


「無実です……」


 そして、空気の読まないガルは、話を続行する。

 それは、実にタイミングの良い内容だった。

『ランディ……驚いただろ? 俺様はガストブレイクの研究棟・カーズとアーサーはもう一つのエスケープ・サバイバルゲームの会場に巻き添え召喚された。 ……だけどな、あいつ等俺様の約束を破った上に、俺たち全員を研究のモルモットにしようとしてたから、研究棟丸ごと乗っ取ってやったわ。わはははは』



「「「…………」」」

 宮城陸たちは今の話に言葉も出ない。



「ランディ! この男と話がしたい! 頼む『研究棟』を支配したなら、サクラの仇を捜せるはずじゃ。頼む」


 ランディはジェスチャーで、カミーラと話をしたいと伝えてみた。


『カミーラ・フォン・アルフシュタインか…………そうか……ラウンジの出口付近に、非常用の受話器が有る……そこで話そう。俺様もカミーラに話す事が有る』


 カミーラは神妙な顔付きで、指定された受話器に向かって走っていった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 受話器にを取り、耳にあてるカミーラ。


「これで、いいのか?」


『ああ、聞こえる……改めて名乗ろう。私はランディの仲間でガルと言う』


「カミーラ・フォン・アルフシュタインじゃ。そなたなら私の妹、サクラ・フォン・アルフシュタインを殺害した者共を調べられよう。頼むそやつ等を調べてワシに引き渡してくれぬか? お願いじゃ」


『残念だが、それは出来ない……』


「何故じゃ、ワシに出来ることなら何でもするから……お願いじゃ……お願いじゃ……せめて、サクラの苦しみを少しでも、あやつ等に…………」


『俺も、サクラとカミーラの事情は調べてある。サクラの死因もな……はっきり行って胸くそ悪くなったぜ……』


「ならっ『そんな、ムカつく奴等を俺様が生かしておくと思うか?』……えっ?」


 カミーラは、ガルからサクラ殺害の関係者は既に無惨に殺され、主犯格はサクラ以上の苦しみを与えられて、数日中に生き絶える事を聞いた。

 そして、ガルの言葉でカミーラは胸のすく思いをした。


「出来れば……ワシの手で、それを成したかったのじゃが……ガルとやら、おぬしにはランディ以上の借りが出来てしまったな。」


『そんなに気にするな……たっぷりと感謝するだけでいい……』


「そんな訳にもいかんのじゃ。ワシの命を掛けても、この恩に報いよう」


『…………それなら頼みがある。暫くの間、ランディを護ってくれないか?』


「ランディをか? 護ると言っても、はっきり言ってワシより強いぞ? 」


 カミーラの疑問を、受話器越しにガルが答える。

『それでもだ……ランディは回復職な上、現在弱体化中でな……攻撃力のある用心棒が居ると便利なんだが……そうだな、気が進まないなら別にいっかぁ……あと半月もすれば、俺様がランディの護衛をすれば良いしな……』


「いや……そなたの頼み、聞き入れたのじゃ……ワシは故郷も身内も、もう無い……ランディと女たちを見ていると、寂しさを忘れる程に楽しいしの……」


『そうか、じゃ頼むわ……(合流まで後、半月なんだけど…………どうも嫌な予感がするんだよな)』


 後半の言葉は、カミーラには聞き取れなかった。


 ……

 …………


「と言う訳で、ワシはランディと行動を共にする事になったのじゃ……これからは『主殿』と呼ばせてもらうのじゃ。末長く宜しく頼む」


「末長くって、カミーラさんもお兄ちゃんの事、好きになっちゃたの? 香織さんピンチよピンチ」


「えっ? 私は問題ないわよ」

 全く動じない香織だった。


「くっ……流石は正妻の余裕ね……」


「らんでぃ 仲間が増えるの? やったぁ。よろしくカミーラ姉さん」


「…………サ、サクラ……」

 カミーラはリリスを抱き締めた。


「わたしは、さくらじゃないよぅ……でもカミーラ姉さんにギュッとされると、なんか嬉しいな」


「ところで、リリスはなんで私らは呼び捨てなのに、カミーラさんだけは『姉さん』なんだぁ?」


「さあ……でも戦力増強だな、半月後にはガルと合流して……ククッ、楽しくなってきたな」


「ランディ……また悪い顔になってるよ。」




 ……

 …………

 ………………


 しかし、ガルの予感はこんな形で的中する事になる。


 ランディにゾクリとした悪寒が走った。

(まさか……もう、異世界転移だと? 二ヶ月もたっていないじゃないか……)


 香織・マーニャ・リリス・ひなたも異世界転移の前触れを察知した様だ。


「主殿? 何があった? 」


「後、数刻で僕たちの異世界転位が始まる……」


「なんじゃと!? そんなにも急なのか?」

 ランディの発言に驚くカミーラ。


「うん。直前にもう一度、サインが出るから僕の近くにいてくれ」


「解ったのじゃ」


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「やあ……」


 ランデイヤと六回目の対面だ。


「ランデイヤ……今回も宴会が実現しなかった……」


「そうだね……心中察するよ……同一人物だしね……でも、いく先々で女を仲間にしてないかい?」


「えっ? そお? そうだっけ?」

 そういえば、次々と仲間が増えてるような……


「でも、以前ほど宴会願望が少ないね……ベースが変わった影響かな……」


「どんだけ宴会好きやねん」

 自分に突っ込みを入れてみる。

 まるで、性格は同じで知識の違う自分と話してる感じだ。


「僕の感だと、次の滞在期間は年単位と予想する」


 何で分かるんだ? 今までの経験からか?

 でも、間違いなと思う。


「で、ランデイヤ……今回のお役立ち情報は?」


「そうだな……仲間が増えたけど、安心して別れを迎えられるように、わりと理想な国に置いていく方法を教える……」


「そんな国があるんだ」


「そう、みんなで作った……でも呪いのせいで殆んど帰らないんだけどなっ」


(なるほど……『帰れない』じゃなくて『帰らないか』)


「帰還方法は第9レベル呪文の『トラベル』だ……これで五十時間本国に帰れる」


「本国って故郷あるんかい! 初耳だぞっ! 」


「でね、長期間滞在したい場合は、第9レベル呪文『ウィッシュ』の併用か、カーズの第9レベル呪文トラベルと組み合わせて、合体呪文『ダブルトラベル』を使えば五十日間の滞在が可能だ」


「しかし、僕はまだ第6レベルまでしか開放されてないね」


「まぁまだ先だね……でも、時期的に第7レベル呪文開放は近いね……でね、本国に戻って配下の契約を解除すればオッケーだから、今回はそれだけかな……じゃまたね」


「ああ……またなランデイヤ……」



 ~~しかし、ランデイヤとの会話は、二度と実現する事は無かった。~~



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 意識を取り戻したランディは、大急ぎで配下の契約をしたカミーラと、香織・マーニャ・リリス・ひなたの六人で新たな世界に旅立って行った。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「久しぶりに兄さんに、会えると思ったのに……連続転移とは……頭にくるな……このストレスはキンジで……」


「カーズさぁん、やめてくださぁい……おれカーズさんの弟子なのに、アーサーさんのシゴキが、致死量寸前なんっすからっ」


「宴会 また 不発 この 悲しみ どおすれば」


「おれにはぶつけないで下さいよ、アーサーさぁん」


 キンジ・アーサー・カーズは、マリ・ユリ・エリと新潟秀次・新潟雅子の見てる中で忽然と消えてしまった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「マヤ、後の処理は任せた」


『お任せ下さいガル様……残りの寿命の五分の一もあれば、エスケープ・サバイバルゲームの生存者の安全性の確保など容易い事です』


「まあ、過保護にしなくていいからな……理不尽な目に合わなければ、後は自己責任だ」


『それならば、あと三日ほどで根回しは完了しますが……人間とは予測が困難な生き物ですから、寿命まで監視させて貰います』


「じゃ頼んだ……行ってくるわ」


『私の本体にも、よろしくお伝え下さい……とくにガル様の真の力とか……』


 こうしてガルも、異世界へと転移していった。


『私の本体も、あんな化け物相手によく、五度も戦いを挑んだものだ……』



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 そして、ついにランディたちは、次の世界で本気の遊びが始まる。


 第四章完

四章は、エピローグと人物紹介で完全に終わりになります。


宣伝です。

ランディの転生物語を書いてみました。


題名は『神級回復呪文使いが、転生したら……こうなった』



http://book1.adouzi.eu.org/n9057df/


です。

気になる方はどうぞ、って言うかミテ~~~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ