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136#Bチーム【急襲!ゴブリン軍団】

 マリ・ユリ・エリの三人は焦躁していた。


 理由は、カードに記されていた座標のアイテム置き場は空になっていたからだ。


 彼女達は、石川兄妹・新潟夫妻・富山健太の先客が居ることを知らなかった。


「不味い、不味いよユリ……食料も無い、武器も無いじゃ、一ヶ月も持つわけないよ……」


「う……ん……座標『七・9』のアイテムを見つけてから考えようよマリ」


「喉乾いた……」

「「…………」」


 エリの呟きには、マリとユリも答えない。

 彼女らは、座標『二・2』のポイントに行き、箱が空なのを確認したあと、東に移動して小川ぶつかると川を上流に向かって進み、湖を迂回しながらもうは一本の川を下り、海岸線までたどり着いたら、座標『九・2』のまで行って、箱がまた空だったのを確認した。

 同じく、座標『九・6』地点の箱がまたしても空なのを見て、絶望の色が浮かんだ。


 そして彼女達は今、座標『八・9』から『六・7』まで続いてる、深い谷を迂回して、座標『七・9』

 の地点にたどり着いた所だった。


 見つけた箱の中には、槍・剣・ヌンチャクと火打ち石と油紙が入っていた。


 三人は箱の中身が、食料じゃなかった事に落胆していた。



 だが、三人は落胆している余裕は無かった、彼女らに音もなく忍び寄る影……大蜘蛛が忍び寄っていたのだった。


「ヒッ!?」

 エリが襲われる前に、蜘蛛の姿を見つける。


 咄嗟に武器を持ち構える三人と、蜘蛛が飛びかかって来たのは、ほぼ同時だった。


 この戦闘で、マリが大ケガを受けてしまう。

 しかし、命には別状は無い様だ。


 怪我をしたマリが驚きの言葉を発する。

「私を棄てて……いっそのこと楽に……」

 自分を殺してと言いたかったが、恐くなってそれ以上の言葉が出てこない。


「馬鹿言わないで! 私達、三人で生き残るって来もたじゃない」

「そうよ! その怪我だって、すぐに治るわ。そうね……谷を上って行けば綺麗な小川があるわ……そこでみんなで休憩しましょ」

「ユリ……エリ……」


 三人の絆は、この数日間で強いものになっていた。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



『人工島A』では、特別ゲストとして、火器を持った傭兵が二人送り込まれる予定だが、『人工島B』では、こん棒を持った『ゴブリン』が前倒しで送り込まれる事になった。


 理由は、超が付く富豪や権力者の、観戦者達を配慮しての事だ。


 当初、宮城、石川の予想外の奮闘と、イレギュラーで参加した人外組みの奮戦に、観戦者達は多いに沸き上がったが、一週間も経過すると、物足りなくなった様で文句が上がってきていた。

 それほど今回の参加者達は優秀だった。



 サバイバルゲームは長丁場なので、編集して見るのがセオリーなのだから、仕方ないとも言えよう。


 ただ、運営もこの状態ではつまらないと判断して、もっと後半に出現させる予定だった『ゴブリン』を、前倒しで転送する事を決めたのだった。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 山菜集めをしていた、新潟雅子の背後に大きな蜘蛛が近づき、襲ってきた。

 そんな雅子の窮地を救ったのは夫の秀次だった。


 秀次は自分で驚いていた、何故自分は雅子を助けたのか?

 とりあえず協力して、サバイバルゲームを生き抜く事は理性では了承したが、感情は納得していない。

 赦してはいけないのだ。


 なのに今、反射的に雅子を庇った。

 そして、今も雅子を守る姿勢を取っている。

 何故なんだ……。


「雅子! 逃げろ! 書いてある通りなら、家は安全だ!」


「あなたっ!」


「いいから行けっ!」


 雅子は温厚であるはずの夫の以外な一面を見た、こんなに頼りに成る人だった?


 そして、言われるままに、家に向かって動いた時、大蜘蛛は、雅子に向かって襲ってきた。


 その大蜘蛛に秀次の、投げた包丁が偶然突き刺さる

 。

 ダメージを受けた大蜘蛛だが、大蜘蛛の生命大きく削る事は出来なかった。

 そして、大蜘蛛は標的を秀次に変更して飛びかかって行った。


 ……

 …………

 ………………


 雅子は家にたどり着いて、暫くの間震えていた。

 その震えが収まる頃、夫の秀次が戻ってこない事に今さら気づいた。


(あなた……)


 意を決して、様子を見に行った。


 ……

 …………


 雅子が襲われた場所には、大蜘蛛が一匹いるのを見つけた。


(あなた…………どこ?)


 もう少し近づいて様子を見ると、大蜘蛛の下に秀次らしき姿が見えた。

 大蜘蛛は自分の夫を食べていたのだった。


 雅子は、大蜘蛛に気づかれる事も忘れて叫んだ。

「あなたぁぁぁぁぁ!!」



 ……

 …………



 雅子の大きな声に、秀次は意識を取り戻した。

 身体のあちこちが痛い……いや、それより重い……目の前には、息絶えた大蜘蛛が、被さっていた。


 新潟秀次の攻撃は偶然、大蜘蛛の急所にだけ命中して、ほどなく大蜘蛛は息絶えたのだが、当然新潟秀次も骨を2本ほど折るなどして、大怪我をしていた。

 大蜘蛛の補食のための麻痺毒は、人間には効果が薄く、鎮痛作用しか発揮していなかった。


 従って、新潟秀次は『痛いより重い』等と悠長な事を、考えていられたのだった。



 首を横に向けると、雅子が泣き崩れているのが視界に入った。


 秀次は、声を振り絞り、大声を出そうとしたが、結果は雅子にやっと聞こえる程度になってしまう。

「家に……隠れてろって……言っただろ……」


「あなた!? ……あなたぁ!」


 しかし、雅子のお陰で大蜘蛛の下敷きになっていた状態から救われた。


 救出時に、秀次は気づいてしまった、雅子の浮気が未だに許せなかったのは、まだ雅子の事が好きであると分かってしまった。


 そして、無意識にその事を雅子に伝えてしまった。


「まだ、あの事は赦せないが……つっ!」


「あなたっ、赦してくれなくてもいい。だから、今はここから抜け出さなくちゃ……」


「……それでも、お前が……雅子が好きだ……」

 そして、もう一度意識を手放した。


「あなた? あなたぁぁぁ!」


 ……

 …………


 次に秀次が気づいた時には、家で雅子に介抱されていた。


 この後、久方ぶりに二人は、結ばれる事になった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 富山健太は、携帯食料に飽きて、果実が無いかと探して歩いていた。


 そんな時、五体のゴブリンと遭遇した。


「う。うわぁぁぁっ! バ、バケモノ?! 来るな……来るなぁ!」


 パンッ! パンッ!パンッ!

 富山健太は、銃を構え、連続で撃った。


 しかし、慌てて撃った弾丸は、ゴブリン達当たるはずも無かった。


 バットの様な棒を振りかぶって、遅い来るゴブリン達……


 それでも、富山健太は走って逃げる事に成功した。


 家に着いた富山健太は、息を切らせながら、『はぁはぁ……た、助かった』と呟いた時、家にゴブリン達が侵入してきた。


「あ、安全地帯じゃなかったのか?」


 そう、この場所は、犬・熊に対しての安全地帯であって、ゴブリンは普通に侵入してきた。


 慌てて銃を使うが、玉の補充を忘れていた。

「あっ! や、やめろっ! グバッ……助けて、助けて、ゴギャッ……死にたくない、死にたくない、死にたくないぃぃぃぃ!!」


 グチャ……グチャ、バキッ……ドチャャ……


 富山健太は肉の塊と化して、この世から消えた。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 一方、マリ・ユリ・エリの三人にも、ゴブリンの魔の手が襲ってきていた。

 

 しかし、運良く襲ってきたのは、たった二匹のゴブリンだった。



 マリを守りながらの戦いは、劣勢から始まった。

 しかし、怪我をおしてゴブリンの注意を逸らしたマリの行動で、ユリの攻撃は偶然ゴブリンの急所に当たる。


 そして、ゴブリンを追い払う事が出来たのだ。



「はっ、はっ、はっ……はぁぁぁ」

「やった、やったよマリ、ユリ」


 エリの言葉に、マリはしかめっ面で、話す。

「ねぇユリ、エリ……あの小さいバケモノ見たことある?」


 マリとエリは順番に答える

「私は、無い……」

「私は、あるけど……」


「その時、何匹いた?」

 らさに、マリは質問する。


「えっ? …………あっ……」


「そう、私が映像で見たときも、五・六匹はいたわ……」


「あっ、じゃぁ……近くに?」


「いるかもね……それにお腹が空いて、もう一回来たら、二匹でも、勝てない」


「使おう……アレを使おう……」


「でも、あのバケモノも呼んじゃうよ……おそらく近場の全てのバケモノを……」


「でも……このままでも、全滅しちゃう……黙って死ぬより、賭けに出ましょ」


 三人は使わないと決めていた、あるアイテムを使った。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 潮干狩りをしているアーサーさんの動きが止まった。

「どうしたんですか、アーサーさぁん?」


「救援 信号 確認 アーサー 始動」


 何すか? そのロボットみたいな物言いは……


「ふっ、最近暇で困っていたんですよ……私達も行きましょう」


 それって、おれも数にはいってますよね? 足手まといですよ。


「第4レベル呪文……ヘイスト」


 カーズさんは、僕に反射速度倍化の呪文をかけてくれた。


「でも、これって反射速度倍化っすよね? これか

 けても、そんなに速くはならないんじゃ……」


「平坦な道ならそうだね……でも、障害物の多い森林はどうかな?」


「キンジ 次第 だが 走るの 楽ちん」


 俺たちはアーサーさん、おれ、カーズさんの順番で雑木林の、なかを突っ込んで行った。


 凄い、障害物の接近がスローに見える。

 ついでに自分の動きもスローに感じるけど……


 全力で走っている筈なのに、足下の樹の根まで確認出来る……まるでグラウンドで走ってるくらいの速さは出てるんじゃないのか? スゲーおれっ。


 しかし、キンジの移動速度は、それでも100メートル十八秒程度だった。


 途中で、六体のゴブリンを見かけた。


 その途端に、カーズさんが呪文を発動する。

「第1レベル呪文……マジックミサイル!」


 六体のゴブリンは、一瞬で御臨終なられました。

 すげぇ……既に障害物程度だ。


 あれ? カーズの上にマジックミサイルが一発分残ってる……六×四=二十四……なるほど一発余るな……


 ……

 …………


「ゼー、ゼー……あ、アーサーさん、もう走れないっす」


 こんなハイペースで、千メートル以上走ったおれをほめてよぉ


「キンジ 頑張った 第1レベル呪文……ライトヒール 」


 うおぉぉぉぉ!?

 体力がもどったぁ!?

 怪我を治す呪文じゃ無かったんですか?


 驚いているとカーズさんが、説明してくれた。

「怪我をしていない時は、体力の回復も出来るんだよ……便利だよ、しかも軽傷なら傷の治療と一緒にスタミナの回復も出来る」


「カーズ キンジ 急ぐ」


 おれは、またしこたま走らされた。


 ……

 …………


 途中で、アーサーさんが立ち止まった。


 理由は聞かなくても、すぐに分かった。


 人が倒れている…… 人が二人……倒れているゴブリンが一体、に立っているゴブリンが二体……





 そこには、絶命まで五分持たない程の、致命傷を受けた石川かなたと、既に呼吸をしていない石川まどかの姿があった。


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