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135#Aチーム【カミーラ捕獲計画】

 ランディ達五人は『八・9』座標付近で谷に阻まれ、谷沿いを歩く事にした。


 途中、ランディの前に全長一メートルの大きな蜘蛛が進路を阻む様に出現した。


「さ、さすがにこれは食べれないなぁ……」


「それを聞いてほっとしたよ。お兄ちゃん」


「香織ちゃんと、二人で殺る……香織ちゃんは浜辺で拾った石でどこまで通用するか試して……」


「解ったわ……でもマジックストーンは使わなくていいの?」


「うん……手の内を見せるのはまだ早い……」

 ランディ、この先の事を考え、何かを警戒していた。


 香織の投げた石は大蜘蛛の眼に当たり、大蜘蛛は攻撃を忘れ、暴れだした。


 すかさずランディが、近づき蜘蛛の脚をもぎ取り、谷底に投げてしまった。


「よ、弱い……」


「ダンジョンにいた、あの時の大蜘蛛より弱いね」

 どうやら、異世界の地下迷宮に生息していた蜘蛛より、弱いタイプだった様だ。


「火炎弾、使うまでも無かったね……」


 ……

 …………


 谷沿いを進んで行くと、谷の幅が小さくなっていって、谷の向こう側に行けるようになった。

 そして、谷の起点付近には川が流れていた。


 ランディ達は反対側の谷沿いを進み『七・9』の座標付近で武器を納めた箱を見つけた。


 箱の中には、槍・剣・ヌンチャクと火打石・油紙が入っていた。


「おおっ双節棍(ヌンチャク)じゃないか……これは僕が使うね」


 そして、剣はひなたが、槍はリリスが持った。

 途中、大蜘蛛と二度遭遇したが、武器を持ったランディと、ひなたの敵では無かった。


 その後、ランディの探索は順調に進んで、座標『三・8』付近で家を見つけた。


「拠点発見! みんな、ここを拠点にして色々探検しよう……」


 ランディ達は、持ち物を整理している。


 座標『九・2』で見つけた拳銃は、ランディが海に投げてしまったので無い。

 座標『九・6』で見つけた携帯食料は、手荷物があり過ぎて、四日分の携帯食料と、椰子の実を一つその場に残した。


 武器になりそうなものは、錆びた鉈・薄刃の包丁・槍・剣・ヌンチャク・石が少々。

 食料になりそうなのは、犬が一体分・携帯食料が二十日分・椰子の実が二つに・ひなた専用に次元弁当が用意してある。


 道具は、鋭利な石・太い木の枝・シャツとジーパンが少々・マッチ・ライター・火打石・着火材・新聞紙・油紙だ。


 サバイバルゲームが開始されてから、終始笑顔だったランディが、珍しく難しい表情で皆に話しかけた。


「皆、今までの事を振り替えると、このゲームはかなり意地悪だ……」


 ランディの以外な言葉に驚く女性達。


「脱出ゲームは気転がきかなければ、二人~四人は脱落する……そして、二人だと色々な面でサバイバルゲームがきつくなる。四人ならば、ヒントの座標で、武器・食料・拠点が手に入るが、食料が足りなくなるのが予想出来る……簡単にまとめると、このゲームは六人のメンバーで、協力するふりをして、五人を蹴落とすのが目的のゲームと、僕は予想した」


 実際は、六人の人間を一人づつゆっくり殺して、それを見ている裕福層を楽しませるのが、運営の目的なのだが。


「…………」×4


「だったら、ちょっとムカつくね……僕達を仲違いさせようなんて……」


「でも、ランディはそんな相手の考えなんて、ぶち壊すんでしょ?」


「もちろんですよ、香織ちゃん。僕らは運営の意向は無視して楽しみますよぉ」


 ……

 …………


 深夜……


 ランディは、この拠点でも熟睡が出来ない事を確認した。

(やっぱりね……でも、目を閉じて休む事は出来るから、呪文の取得以外は問題ないな……いや、逆に燃えるな……適度な障害が、こんなにドキドキするなんて……)


 ランディは心底、このゲームを楽しんでいた。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 宮城陸・福島美月・山形葵の三人は、表情をひきつらせ、立ち尽くしていた。


 それは、のカードに記されていた座標『九・6』まで来たら、箱が開いていたのだから……


 しかも、明らかに人が開けたであろう形跡まで残っていたのだから。


 しかし、箱の中は空では無く、四日分の携帯食料と、水分を抜いた椰子の実が有った。

 この状況に、常時冷静な行動を取っていた宮城陸も、思考がうまくまとまらない、


 約十五分程費やし、宮城陸は考えを纏めた。


「サバイバルゲームの参加者が、他にも同時進行してるのか……」


「それって、協力者とかですか?」

 福島美月が、聞いてきた。


「確実にライバルよ……だって、食料、拠点の奪い合いになるかも知れないし……現に、ほら……」

 山形葵は、すでに開けられた木箱をみる。


「恐らく……ここの箱を開けたグループは、少ない人数だな。持ちきれなくて、携帯食料と椰子の実を置いて行ったんだからな……こいつを持っていったん家に戻るぞ」


「陸さん、勝手に持って行って怒られないかな?」


「……バカか?」


 ……

 …………

 ………………


 拠点に戻った宮城達は、鉈を使い椰子の実を食べやすくカットした。

 さらに、余っているシャツと刃物を渡し、福島美月と山形葵に丈夫なロープを作れと頼んだ。



 宮城陸は出来上がったロープを持って、ヤシの実を探しに行ったのだ。


 そして、直ぐにヤシの実は見つかり、実を三つ持ち帰った。


 そしてもう一往復し、宮城達の拠点には、計六つのヤシの実が並んでいた。


 ……

 …………


「これで当面の食料は確保出来たな……」


 二十一日分の携帯食料……山盛りの山菜……ヤシの実が七つ……食べれそうな木の実と、食べられ無さそうな茸が山の様につまれ、並んでいた。


 余裕で十日分、切り詰めれば二週間は持つ量だった。


 宮城陸は、さらに鉈を使って、大小の木の槍を作った。


 大きい方は『熊』対策、小さい方は枝を利用して返しを作り、川魚を捕まえる道具にした。




 そして、数日後……宮城達は、熊と遭遇した。


 山形葵、福島美月は怖がりながらも、冷静に逃げるそれを猛然と追いかける熊が、突然転倒した。


 宮城陸が罠を仕掛けていたのだ。


 そして、木の槍もいくつか熊に刺さったのだが、それは熊を怒らせるだけだった。


「ぐおぉぉぉぉぉぉ!!」



 宮城陸は、これを予想して既に逃げていた。


 宮城陸の不良仲間が、スクーターで猪と正面衝突した時、猪はノーダメージで怒らせただけだったと聞いた。

 ならば、熊は想像より遥かにタフだと、判断したのだ。




 無事に拠点まで逃げた三人だが、宮城陸が熊の様子がおかしい事に気づいた。


 いくら安全地帯と言っても家を叩くぐらいはする筈だ……それが家から約五メートルより近寄らない……

 此が何故か、判別出来ないが運営が何かをしてるのだけは理解した。


 宮城達は暫く籠城していたが、熊は諦めたのかいなくなってしまった。



 宮城陸は、外に捨てていたキノコの山が一部を除いて無くなっているのを見つけた。


 きのこ類など滅多に食べない熊だが、山のように積み重なっていれば話は別だ。

 熊は本能で、毒きのこをかぎ分け、食べられそうな物だけ食べて去っていったのだ。


 これにより、宮城陸はこのキノコを毒きのこと判断して、それ以外は食べらるかもとキノコも食料として集め出した。


 これには福島美月が渋ったが、山形葵が毒味役をかって出た。

 これは、福島美月が無人島で役に立つ様になった為、焦りから生まれた行動だった。



 結果、山形葵は毒で倒れる事が無かったうえに、携帯食料よりも味が良かったらしく、満足気だった。


 あれ以降宮城達は、熊に遭遇する事が無かった。


地図~~宮城陸~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 軸 ─1 2 3 4 5 6 7 8 9 0

 ─ 海海 海 海 海 海 海 海 海 海 海

 一 海┏ ━ ━ ━ ━━━━━┓ 海

 二 海┃ 食 林 川 □ □ □ □ ┃ 海

 三 海┃ 林 林 川 □ □ □ □ ┗ ┓海

 四 海┃ 林 林 川 湖 湖 □ □ □ ┃海

 五 海┃ 林 家 林 林 川 □ □ □ ┃海

 六 海┃ 林 ┏ ━ ┓ 川 □ □ □ ┃海

 七 海┗ ━ ┛ 海 ┃ 川 □ □ □ ┃海

 八 海海 海 海 海 ┃ 林 □ □ ┏ ┛海

 九 海┏ ━ ━ ━ ┛ 食 □ □ ┃ 海

 零 海┗━━━━━━━━━┛ 海

 ─ 海海 海 海 海 海 海 海 海 海 海



━┃┏┓┛┗ =海岸線

 林=雑木林

 家=セイフティーゾーン

 食=食料

川=小川

湖=淡水湖


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 一方、ランディが拠点にしている座標『三・8』にある異変が起きていた。


 それは、ランディが居る地点を中心に、気温が下がっていたのだ。


 それでも、摂氏1℃程度であるが、暖房器具が無いこの無人島では、数日で致命的な物になる筈だった。


 仕掛人はカミーラ・フォン・アルフシュタイン。

 種族はノスフェラトと呼ばれる、ヴァンパイアと違い、生命のある吸血種族だ。

 彼女は、自身が持つ特殊能力の一つ『温度低下』の広域魔法を使っていたのだった。



 ……

 …………


「ねぇらんでぃ、寒いのに全く辛くないのは、なんで?」

 リリスが、不思議そうに聞いてきた。


「そうだよ、お兄ちゃん周りは霜が降りてるのに、寒いって理解してるだけで、寒さを感じないの」



 ランディは、香織以外に自分の配下の証である『exclamationバックル』の説明するのを忘れていた。


「あっ……そう言えばexclamationバックルの効果を言ってなかったような……」


「聞いたぞぉ、ランディ……たしか、ランディの頼みは断れれるけど、命令は断れない……しかも、異世界に転移する時は、接触していなくてもランディと同じ世界に転移出来るって」


 ひなたの答えにランディは付け加える。


「ひなたん、それはexclamationバックルの副産物だよ。ひなたんが身に付けているシルバータイプのバックルの効果はね、飛び道具からの完全防御・ダメージ低減+2・毒無効・病気無効・寒さ、暑さ耐性が付いてるんだよ」


 ランディの説明を聞いて、マーニャとひなたは呆れ返っていて。


「…………いや、ランディのビックリドッキリにはもうお腹一杯だぁ」


「まったくだよ……でも、お兄ちゃん、 シルバータイプって事は、まさか香織さんが持ってるのは効果が違うの?」


 ランディは、マーニャの頭の回転の良さに関心しながら答えた。


「 うん、効果は少しだけ違ってね、飛び道具からの完全防御・ダメージ低減+5・毒無効・病気無効・寒さ、暑さ無効になってるんだ」


「うわっ、香織さんズルッ! お兄ちゃん私も金のあれが欲しいなぁ」


「わたしも!」

「私にもくれないかぁ?」


「『金』のexclamationバックルは、数が無いので無理です。『鉄』や『木』なら沢山有るんですけどね」



 こうして、ランディから貰ったアーティファクトにより、カミーラの気温低下の魔法は無意味に終わった。


地図~~ランディ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 軸 ─1 2 3 4 5 6 7 8 9 0

 ─ 海海 海 海 海 海 海 海 海 海 海

 一 海┏ ━ ━ ━ ━━━━━┓ 海

 二 海┃ □ □ □ □ 林 林 林 ┃ 海

 三 海┃ □ □ □ □ 林 林 家 ┗ ┓海

 四 海┃ □ □ □ □ 湖 林 林 林 ┃海

 五 海┃ □ □ □ □ 川 林 林 林 ┃海

 六 海┃ □ ┏ ━ ┓ 川 谷 林 林 ┃海

 七 海┗ ━ ┛ 海 ┃ □ 林 谷 武 ┃海

 八 海海 海 海 海 ┃ □ □ 林 ┏ ┛海

 九 海┏ 武 ━ ━ ┛ 食 林 林 ┃ 海

 零 海┗━━━━━━━━━┛ 海

 ─ 海海 海 海 海 海 海 海 海 海 海


  ━┃┏┓┛┗ =海岸線

 林=雑木林

 家=セイフティーゾーン

 食=食料

 武=武器



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ◇ガストブレイク社・研究棟地下?階◇



 ここである男が、自分の武器を念入りにチェックしていた。


 散弾銃・軽量マシンガン・電磁ネット・ダガー・超強度ロープ・スタンガン・特注ハンドガン・大人の玩具・その他多数。


 彼のコードネームは『ジャック』

 一部の人々から、狂人ジャックと呼ばれていた。


 男は、江屈巣(えくす)常務から特命を受け、カミーラ・フォン・アルフシュタインの捕獲に乗り出した。


江屈巣(えくす)常務は、カミーラではランディ一味を翻弄する事が出来ないと考え、早めに捕獲して、狂人ジャックの玩具として配信し、その後はサクラの様に人体実験を行う予定でいた。



 サクラ・フォン・アルフシュタインの人体実験により開発された、ノスフェラトの弱点を突いた装備を揃えて行く。

 ノスフェラトは、高圧の電撃に弱い性質を持つが、例外で53ボルトから56ボルトの電圧が、非常に弱いと実験結果が出ている。


 ジャックは、カミーラを早めに捕獲にして、迎えが来るまでの数日間、カミーラを凌辱して遊ぶ予定を立てていた。


 当然彼女の詳しい情報は、江屈巣(えくす)常務から得ていた。


「へっへっへ……今回の獲物はどんな味がするかなぁ……そうだ、人質の妹は既にあの世行きで、肉片一つ残らず使いきったと言ってやるか。ヤバイ……考えたら立って来ちまった……うん、そうするか……どんな顔で泣き叫んでくれるか、今から楽しみだぜ」


「…………」


「……ケッ、ジェイソンは黙んりかい……俺の獲物はやらんぞ?」


「……要らない……」


「ああ、そうかい……」



 ジャックは運営の用意した囚人兵、コードネーム『ジェイソン』を一人連れて『ブラックパンドラ』に入り、カミーラの入る人工島に転送された。



 ……

 …………


 ただ、ジャックの話を聞いていた男が、もう一人いた。


 その男は、監視カメラに映る事なく、全職員に気に気づかれる事もなく、この場から消えていった。

 ある一言を残して。


「予想はしていたが……水面下で色々動いてるな……人質? 既にあの世? 調べてみるか……」


 その男の瞳は、左右違う色をしていた。


 

ここら辺から急展開な予感がします。

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