134#Bチーム【野犬登場】
アーサーさんと戻って来た砂浜には、平屋だけどやたら出来の良い、一戸建てが建っていた。
あ、あり得ない……すると浜辺の方から、椰子の木を一本丸ごと引きずってくるカーズさんを見つけた……
「アーサー、キンジ。もう戻ってきたのか? 早かったな」
いやいや、数時間で家一軒建てて、椰子の木引きずってるカーズさんに言われても……
「カーズさぁん、あれなんすか? 魔法で出したんすか?」
おれは、家を見てカーズさんに質問した。
「キンジ 馬鹿 クラミングツリー 使った 常識」
だから、おれの常識じゃ、巨木三本で家にならないんですよっ!
「あうぅ……で、カーズさぁんその木は?」
おれは、カーズさんが引きずってる椰子の木を指差す。
「椰子の若木を見つけたんだけどな、椰子の実を五つ、いっぺんに運ぶのは難しいから、椰子の木ごと持って来た」
いやいや、椰子の木を丸ごと運ぶ方が難易度高いでしょ?
「カーズさんも、化け物級の怪力の持ち主だったんすか?」
カーズさんは、椰子の木と実を分けながら、
「化け物なんて失礼な……私は利き腕でも、握力200㎏無いぞ、私は普通だ」
ちなみに日本人の平均握力って、50弱だよな?
あれっ? 待てよ? おれは今、思い付いた疑問を口にした。
「カーズさぁん、その力なら人類最強クラスだけど異世界の魔物……いや、普通のゴリラより弱くないっすか?」
だって異世界は目茶苦茶強い怪物供が、わんさかいるんだぜ?
「キンジ……お前、思ったより頭がいいな……しかし、言っておくが、私は人間ですから。非力なマジックユーザーですよ……まあ、一般人とかけ離れているのは、魔力・HP・知識に戦闘技術くらいですよ……だから、私達は装備で補うんだ……あっ、あれは別……人間と一緒にしゃあいけません」
カーズさんは、アーサーさんを指差してる……
う~ん……言いたいことは解ったんだけど……『非力なマジックユーザー』の台詞にどうも納得いかなんだよね……みんなに聞きたい、非力な人が椰子の木、丸ごと一本引き摺って歩きますか? 答えはノー!
で、結局カーズさんは、第七レベル呪文の『ガンダル・ナイティスター・ソード』を使って、遠隔操作で木々をスパスパ切って家を作っていたんだって。
この呪文は大昔の大英雄『ガンダル』と『ナイティスター』が愛用した聖剣を魔法で具現化したものだって。
因みにこの二人は『王神流』の開祖でガンダルは神に、ナイティスターは大陸の王になったて話だ。
……
…………
食事の時間、アーサーさんが自慢気に収穫物を披露していた。
カーズさんの顔が一瞬歪んだのを、おれは見逃さなかった。
「…………た、大量だなアーサー……ありがたく頂戴しよう……茸だけを……」
ええっ?! カーズさん、今なんて言いました?
と思ったら、カーズさん茸だけを持って、外に出て行ってしまった。
見ると、バーベキュウの準備をしてるよ……狡い!
カーズさんに抗議しようと思ったら、アーサーさんに捕まった。
「キンジ これ 食べる 早く」
そこには、手足のもがれたクモ、バッタ、芋虫、等昆虫類のオンパレード……終わったぁぁぁぁ!!
こうして、おれの地獄のディナーは始まった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新潟秀次・新潟雅子は、海岸線を北上して、その後林に入り、偶然にも短時間で、旗の付いたポールを見つけて二十日分の携帯食料と水、ライター着火材を見つけた。
その後、再び海岸線に戻り、東に向かって進み、日の落ち始めたごろ、人工島第二のセイフティーゾーンの家を見つけた。
家には鍋、包丁、錆びた鉈、マッチ、新聞紙、『セイフティーゾーン、対応生物、巨大蜘蛛・????』と書かれた紙が有った。
「あ、あなた……巨大蜘蛛って……恐いわ……」
きゅっとしがみつく妻に、思うところは有ったが、今ここで蒸し返すのは……と思い新潟秀次も普通に返事をした。
「蜘蛛は気になるけど、ここは安全だって書いてある……途中綺麗な小川も見つけた……食べ物も二人で十日分は有る。この間に自給出来る手段を見つけて、余裕が出来たら、石川兄妹と交流しよう」
新潟雅子は自分の旦那に驚いた。
あの人はこんなに頼りになりそうな人だった?
あの人が、たくましく見える……
男に限らず、人間は一度どん底に落ちてから這い上がった時、成長するものだ。
新潟秀次は、妻の浮気の発覚・生死のかかったゲームの強制参加などで、『気弱で無能』の殻を自ら破ることに成功した。
おまけに、サバイバル経験は無いものの、その手の本は読んでいた。
数ヵ月なら兎も角、三十日で三分の一の食料、家、火が、あればそれほど難しく無い。
気になるのは外敵くらいだった。
新潟夫婦は、お互いに話したい事がたくさんあった……しかし、疲れていたのか、語らいもしないで二人はすぐに寝てしまった。
翌日、二人は山菜や木の実を集めて一日を過ごした。
新潟雅子は負い目を、新潟秀次はモヤモヤとした怒りを持っていたのだが、そんな思いを忘れるくらい、二人は夢中になって協力しあい、山菜や木の実を集めていた。
そう……大蜘蛛の存在を忘れる程に……
地図~~新潟夫妻~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
軸 ─1 2 3 4 5 6 7 8 9 0
─ 海海 海 海 海 海 海 海 海 海 海
一 海┏ ━ ━ ━ ━━━━━┓ 海
二 海┃ 食 林 川 □ □ 林 林 ┃ 海
三 海┃ □ □ □ □ □ □ 家 ┗ ┓海
四 海┃ □ □ □ □ □ □ □ □ ┃海
五 海┃ □ □ □ □ □ □ □ □ ┃海
六 海┃ □ ┏ ━ ┓ □ □ □ □ ┃海
七 海┗ ━ ┛ 海 ┃ □ □ □ □ ┃海
八 海海 海 海 海 ┃ □ □ □ ┏ ┛海
九 海┏ ━ ━ ━ ┛ □ □ □ ┃ 海
零 海┗━━━━━━━━━┛ 海
─ 海海 海 海 海 海 海 海 海 海 海
━┃┏┓┛┗ =海岸線
林=雑木林
家=セイフティーゾーン
食=食料
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
石川 兄妹は、直ぐにセイフティーゾーンの家を見つけ、家の中にあった紙から、『犬』と『熊』が外敵として存在していることが分かった。
「お兄ちゃん、ここに籠ってるだけじゃクリア出来ないね」
「ああ……もしかしたら、武器もこの島に隠してあるかもな……」
「じゃ早速、このカードに書いてある座標まで、何があるか、探しに行こう」
「うんっ」
……
…………
精度の高そうな地図を持っていても、現在地が大雑把にしか解らないので、座標に記された場所にたどり着けるかどうか、心配していた石川兄妹は、一際目立つ旗付きのポールを見つけた。
ポールの下には、二十四日分の携帯食料と、ライター、着火材が入った大箱があった。
「やったねお兄ちゃん! でも、かなりの量になるね……」
「不本意だけど、持っていくのは半分にしよう……動きを悪くしたくない」
こうして半分の携帯を簡易リュックに、詰め込みフットワークの良いまま、雑木林の中を進んでいると、なんと富山健太と出会した。
そして、富山健太の右腕には拳銃が有った。
「よう……石川兄妹……ずいぶんと大漁じゃねぇか……お前らのカードに書かれていたのは、なんだ? 全部出しな、さもないと……」
富山健太は、上に向かって銃を撃った。
「きゃ!」
「うっ……」
石川兄妹は本物の拳銃だとは、見たときから予想していた。
この男は、強力な武器を手にして、心を闇にのまれ、交渉すら出来ないであろう獣に堕ちた事を確信した。
「お兄ちゃん……」
「分かってる……」
石川兄妹は、リュック入れていた携帯食料を全て取り出した。
「おおっ! 食料か……よし、それは全部俺様が貰う。おい妹、俺様のリュックに、食料を全部入れろ」
富山健太は、拳銃をちらつかせる。
「………………」
(そのリュックは、お兄ちゃんが作った物なのにっ! 何が『俺様のリュック』よっ)
心の中で、 叫びながら黙々と携帯食料を詰めていく。
しかし、ジーパンで作成したリュックはの容量では、水まで入りきらなかった。
「さすがに水まで全部は無理か……そういやぁもう一つの場所には何があった? どうせ見つけてんだろ?」
「「…………」」
「ほう……黙りかよ?」
富山健太は、銃を構えた。
「くっ、家が有る! どうやら安全地帯らしい……嘘じゃない……座標もほら」
石川かなたは、カードに記されている座標を見せた。
「…………ふん……そこなら俺様一人でも行けるな。おい、その槍も置いて行けよ」
「なっ!? いくらなんでも酷いよっ!」
これは無意識であるが、富山健太が石川かなたに対して、相当警戒しているため、起きた行動だった。
「こいつがないと、犬や熊から身を守れない、考えなお「駄目だ!」…………だが俺の食料を分けてやる……」
冨山健太は、二日分の携帯食料を置いて、代わりに入りきらなかった水を一本摘めて、後ずさる。
「変な気を起こすなよ? こっちには拳銃があるんだ………………」
そして、冨山健太は石川兄妹の視界から去った。
……
…………
「お兄ちゃん……アイツ頭に来ちゃう……」
二日分の携帯食料と、五リットルの飲み水をリュックに入れて、愚痴る。
「ああ……だけど、被害は最悪じゃないあそこに戻ればまだ半分……十二日分の携帯食料がある」
「これを合わせて、一週間ぶんか……槍が取られたのが痛いね……」
「ああ……これで、道具は包丁と鉈だけになったな……」
石川彼方は、家に有った鉈と包丁を持ってきていたのだった。
「流石お兄ちゃん……やるぅ」
暗い表情を続けていた、まどかの顔が緩んで、笑顔になった。
「楽観は出来ないぞ、まどか。鉈は切れ味が悪すぎるし、包丁は薄い……武器としては役に立たないと思うぞ」
「そっかぁ……お兄ちゃん、これからどうする?」
「鉈と包丁を使って、今日明日中に拠点と安全そうな場所を作る……それから、食べれる物を探して、余裕が出来たら、新潟さん達に冨山の事を伝えようと思う……」
「お兄ちゃん……伝えるなら、早い方が良いんじゃない?」
「言っておくけど、第一優先はお前の安全だ……」
「お兄ちゃん……アリガト……」
そっとかなたの手に、まどかの手が重なる。
こうして石川兄妹は、たった三日で、大木を登りやすく加工して、樹の上を安全地帯にした。
さらに、木の実を中心とした食料も、ある程度確保出来ているのだった。
地図~~石川兄妹~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
軸 ─1 2 3 4 5 6 7 8 9 0
─ 海海 海 海 海 海 海 海 海 海 海
一 海┏ ━ ━ ━ ━━━━━┓ 海
二 海┃ □ □ □ □ □ □ □ ┃ 海
三 海┃ □ □ □ □ □ □ □ ┗ ┓海
四 海┃ □ □ □ □ □ □ □ □ ┃海
五 海┃ 林 家 □ □ □ □ □ □ ┃海
六 海┃ 林 ┏ ━ ┓ □ □ □ □ ┃海
七 海┗ ━ ┛ 海 ┃ □ □ □ □ ┃海
八 海海 海 海 海 ┃ 林 □ □ ┏ ┛海
九 海┏ ━ ━ ━ ┛ 食 林 林 ┃ 海
零 海┗━━━━━━━━━┛ 海
─ 海海 海 海 海 海 海 海 海 海 海
━┃┏┓┛┗ =海岸線
林=雑木林
家=セイフティーゾーン
食=食料
~~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~
キンジside
地獄の晩餐から一夜明けた朝……
もう、おれに恐い物はねぇ……
今ならどんな下手物食材も食べれる気がする……
何でもかかって来いやぁ!!
「キンジ 朝御飯 献立 バッタ カマキリ イナゴ 美味しく 食べる」
やっぱむりぃぃ! 助けてぇぇ!
「アーサー、それは私が使う……今朝は椰子の実にしよう……」
うえ~~ん! カーズさんっ、一生ついて行きます!
食後にカーズさんが、鳥とか土竜、兎が食べてみたいとリクエストしてくれて、アーサーさんがそっち方面でやる気を出してくれました。
やったぁ!!
……
…………
おれは、またまたアーサーさんと、食材の探索中だ……
途中、蛇を2回見つけて、見事アーサーさんの餌食になった。
サクッと首を切断され、皮を剥がされて、二枚に下ろされた後、内蔵を取り出す……
うわっ、蛇って頭だけなのにまだ動いてる……うえっ!? 心臓も単体でまだ動いてる!?……なんて生命力なんだ……
アーサーさんが、頭、皮、内蔵を食べてしまって、身だけが残った……
「これ カーズ これ キンジ」
ほっこれなら食べれそう……
……
…………
それから暫く探索した後、おれ達は五匹の野犬と遭遇してしまった。
やばい……
アーサーさんの敵じゃ無いのは分かるけど、五匹もいたら、二匹はおれのところに来るよな……
ああ……サバイバル二日目にして、ピンチが来ました。
「グルルルルゥ……」×5
「食材 発見」
「グルッ?」×5
「えっ?」
アーサーさん……今なんて言いました?
「今夜 犬鍋 歓喜 溢れる」
うわぁ、アーサーさんには、この犬達……敵どころか、夕食の具材にしか見えないらしい……
「グ……ル……?」×5
「食材 回収」
すると、五匹の野犬は猛然とアーサーさんに突っ込んでいった。
初手から全力って作戦は正解なんだけど……相手が悪いわ……んっ、
野犬達は、アーサーさんの近くまで来たら、スライディングするように滑り、腹を見せて、『きゅうん、きゅうん』泣き出した。
まさか、これは……
「何? 俺の事 好き なのか?」
「わん!」×5
その、作戦があったかぁ!
こいつら……賢い!
「きゅん!きゅん、きゃん!」×5
(マイマスター! お腹が空いて死にそうです!)×5
「む? そうか 第2レベル呪文 クリエイトフード……お前ら これ 食べる」
すると人間の分量で言うなら、十四食分のカロリー○イトが、出現した……ちょっとまってぇ、昨晩の地獄のディナーは何?
そして、犬どもはカ○リーメイトにがっつくように食べている。
「お、おれもそれが食べたい」
「キンジ 駄目」
「なんで?! なんでっすか? アーサーさぁん 」
アーサーさんはやれやれって感じで、説明してくれた。
「キンジ ゲーム 参加者 反則 ダメ でも 犬 問題 無し」
「……って事は、おれとアーサーさん達の食べ物は現地調達ってことなんですね……シクシク」
おれは今、モーレツに犬になりたい!!
満腹になったであろう犬どもは、アーサーさんになついている……質問です、人を襲うような犬が、突然人になつくような事ってあるんですか? 答えはノー!
「アーサーさぁん、それよりも食材見つけに行きましょうよ~」
「その前に すること ある お前ら どうする?」
アーサーさんは、犬どもに話しかけてる。
「わわん!」×5
(ついて行きます!)×5
「そうか こいつは キンジ お前らの 先輩 しかも お前ら より 少し 強い 一応 敬え 解ったか?」
「うぉん、わわん!」×5
(イエス、マイ、マスター!) ×5
こうして、仲間を五匹増やして、おれ達は食材探しの旅に出掛けた。
まてよ、犬どもの先輩って、おれのカテゴリって『ペット』?!
のおぉぉぉぉぉぉぉ!!
地図~~キンジ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
軸 ─1 2 3 4 5 6 7 8 9 0
─ 海海 海 海 海 海 海 海 海 海 海
一 海┏ ━ ━ ━ ━━━━━┓ 海
二 海┃ □ □ □ □ □ □ □ ┃ 海
三 海┃ □ □ □ □ □ □ □ ┗ ┓海
四 海┃ □ □ □ □ □ □ □ □ ┃海
五 海家 林 □ □ □ □ □ □ □ ┃海
六 海┃ 林 ┏ ━ ┓ 川 □ □ □ ┃海
七 海┗ ━ ┛ 海 ┃ 川 □ □ □ ┃海
八 海海 海 海 海 ┃ 林 林 □ ┏ ┛海
九 海┏ ━ ━ ━ ┛ 林 林 □ ┃ 海
零 海┗━━━━━━━━━┛ 海
─ 海海 海 海 海 海 海 海 海 海 海
━┃┏┓┛┗ =海岸線
林=雑木林
家=匠の一戸建て住宅




