131#Aチーム【サバイバルゲーム】開始
この生き残りゲームの、Aチームと呼ばれている生存者三人は、宮城陸をリーダーとして、早朝……無人島に上陸した。
最終日の食料ボックスには、地図と、一枚の座標を記したカードが添えられていた。
宮城陸は、完全に従順となった山形葵と福島美月にカードを見せた。
「なにかしら……」
「その、座標になにか……あるのかな」
二人は自分達にも、有った座標を記したカードを見せ合う。
地図~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
軸 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0
─ 海海 海 海 海 海 海 海 海 海 海
一 海┏ ━ ━ ━ ━━━━━┓ 海
二 海┃ □ □ □ □ □ □ □ ┃ 海
三 海┃ □ □ □ □ □ □ □ ┗ ┓海
四 海┃ □ □ □ □ □ □ □ □ ┃海
五 海┃ □ □ □ □ □ □ □ □ ┃海
六 海現 □ ┏ ━ ┓ □ □ □ □ ┃海
七 海┗ ━ ┛ 海 ┃ □ □ □ □ ┃海
八 海海 海 海 海 ┃ □ □ □ ┏ ┛海
九 海┏ ━ ━ ━ ┛ □ □ □ ┃ 海
零 海┗━━━━━━━━━┛ 海
─ 海海 海 海 海 海 海 海 海 海 海
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
宮城陸のカードには『五・3』
山形葵のカードには『二・2』
福島美月のカードには『九・6』
と記してある。
そして、三人の持ち物は、
Tシャツ六枚・ジーパン六枚・トイレットペーパーが一つと半分、トイレからもぎ取ったプラスチック片が二つ・空のペットボトル(一リットル用)が十五本
明らかに三人でこの持ち物を運ぶには多過ぎた。
宮城陸達は、運営の指示通りに部屋から出ると、そこは海岸だった。
透き通る綺麗な海、裸で寝転んでも問題ない程清潔感のある、綺麗な砂浜。
とても、命を落とす可能性を含んだサバイバルゲームとは思えない。
そして、後ろを振り向く。
今までいた部屋は大型のコンテナだったのか……
三人は綺麗な景色を眺めていたら、コンテナから『ピコン、ピコン』とアラーム音がしていた。
嫌な予感がした宮城陸は、
「おいっ! 急いでコンテナから離れろ!」
すると、コンテナは爆発して木っ端微塵になってしまった。
宮城陸達は、慌て逃げたので、荷物の大半をコンテナに置きっぱなしにしてしまった。
宮城陸が持っていた、プラスチック片二枚。
山形葵が持っていた、Tシャツ六枚。
福島美月が持っていた、ペットボトルが二本とトイレットペーパーが一つだけだった。
やられた……いや、不意を突かれて、これだけ持っていたのはラッキーだ。
宮城陸は、呆然としている女二人に、
「カードに書いてある座標に行くぞ」
と言って、動き出した宮城陸が突然止まる。
「んきゃ?!」
「うわっ! ……どうしたの? 陸さん」
福島美月はこの五日間で、宮城陸を下の名前で呼ぶ様になっていた。
「葵、シャツを二枚くれ」
「あっ、はい…………宮城さん、どうぞ」
山形葵はまだ、宮城陸を下の名前では呼んでいない。
実は、恥ずかしくて呼べないだけなのだが……
宮城陸は、プラスチック片を上手く使い、長袖のシャツの袖を切った。
四つなった袖の出口を結んで、長細い袋にして、小石や砂を四分の一程詰める。
「宮城……さん?」
「ん? まぁ、見てなっ」
小石や砂を詰めたら、もう一度結ぶ。
宮城陸は、即席の武器『ブラックジャック』を三つ作った。
袖が四つ有るのに対して、三つの武器を作った宮城陸をに、福島美月が質問する。
「陸さん、後の一つは?」
宮城陸はこれには答えないで、にやっと笑った。
今度は砂等は詰めないで、両端を結んだ後、真ん中に切り込みを入れて半分だけ切る。
「美月、ペットボトル」
「はい、どうぞ…………あっ!」
宮城陸は袖を上手く使ってペットボトルを収納できる物を作ったのだ。
「これならかさばらないだろ?」
「そうね、これなら片手で二つのペットボトルが持てるわ。陸さん凄いです」
「いや、そうでもない……思いついたのは、たった今なんだ。もっと早く気づいていれば……」
宮城陸は少し悔しそうだ。
即席の武器を二人に分けて、
「持っておけ……」
「「…………」」
無言の二人に宮城陸は、
「あの、意地の悪い運営が、只のサバイバルゲームなんてするか? きっと予想外の障害がある……警戒しとけよ……」
といって内陸部に向かって、歩き始めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
宮城陸たち三人が内陸部に入ってから五時間弱が経過して、太陽がもう少しで上になる頃、爆発したコンテナ付近に、もう一つのコンテナが、出現していた。
そのコンテナが、開くとその中から、一人の男と五人の女が出てきた。
その男女とは、ランディ・香織・マーニャ・リリス・ひなたと、最後にカミーラだった。
「カミーラ、君がこのゲームの障害なんだよね?」
ランディが楽しそうに聞く。
「そうじゃが……ワシを見逃して良いのか? 」
「良いに決まってるじゃん……楽しさ二倍だよ……三十分はこの辺に居るからさっ」
「なら、甘えるとするかの……後悔するなよ? ひとつ行っておく……時期にあのコンテナは爆発するぞ」
すると、コンテナからアラーム音が鳴り、その後コンテナは爆発した。
「おおっ、凄い……」
コンテナの爆発に、見とれていたランディ達は、この隙にカミーラが、いなくなった事に気づいた。
カミーラが、完全にいなくなったのを確認したランディは、珍しく真剣な表情で話始めた。
「香織ちゃん……みんな……これからサバイバルゲームを楽しむところ水を挿して悪いんだけど、困った報告があるんだ」
香織やひなたはサバイバルゲームを楽しんでるのはランディだけと、心のかで突っ込みを入れた後、同時に聞く。
「報告?」
マーニャは、
「 香織さんだけ名前で、後はみんなで済ませたよ」
と呟いていた。
「実はこの世界に来てから、僕は熟睡したことが無い。」
「ランディそれってどう……あっ」
訳を聞こうと思った香織だったが、香織の予想が当たっていたなら、それは相当深刻な問題だった。
本来ならマーニャも気づくはずなのだが、いまだにぶつぶつ言っていた。
「そう、僕は呪文の再取得が出来ない状況にある……原因はカミーラかもと、思ったけど……カミーラだけじゃないな……このゲームは監視されている」
「ランディ、それって困ることなの?」
リリスが聞いてきた。
「そりゃそうだろ……呪文が使えない僕なんて、ただのチョイエロオヤジじゃん」
「それはないわ」
「それはないよ」
「はい、ダウト!」
「わたしとカミーラを呪文無しで倒しておいて、そんこと言うかぁ」
ランディは、香織、リリス、マーニャ、ひなたの順番で突っ込みを貰う。
「まあ兎に角、僕は呪文の乱用を避けるから、このゲームを真剣に遊ぼう!」
「「「うん!」」」
「わかったぁ」
「ひなたん用に、クリエイトフードは使うけど、ピンチの時以外は全て現地調達、みんなちゃんとペットボトルは二本持ってるね?」
「「「うん!」」」
「あるぞぉ」
「じゃ持ってる地図と、カードの座標を照らし合わせて、宝探しをしながら、食料と水の確保だ……出発!」
とても、楽しそうなランディだった。
ランディ達の持ち物は、この世界に来たときに持っているものを覗けば、
トイレットペーパーが一つ、ジーパンとTシャツが六つづつ、ペットボトルが十本
だった。
「じゃ、みんなのカードを見せて、宝探しのルートを決めよう」
集めた座標を記したカードは『二・2』『三・8』『七・9』『九・2』『九・6』の五枚だ。
ランディは数秒考えた後、移動ルートを決めたようだ。
「うん……海岸線を南下しながら、『九・2』『九・6』『七・9』『三・8』『二・2』と移動しよう」
ランディたち一行は、砂浜をゆっくり南下していった。
約一㎞くらい歩いたあたりで、ランディは何か見つけた様だ。
「ラッキー! ヤシの木っぽいの見つけた」
ランディはヤシの木に走って行った。
そこで、香織達が口をあんぐりと開けてあきれていた。
香織達が呆れたのは、ランディがヤシの木に、駆け昇ったからかだ。
でも、ランディヤシの実目前で落下してしまう。
無事に着地したランディは、
「くっそおっ! もう少しだったのに……」
「ランディ、ヤシの木はロープが有れば上り易く「仕方ない普通に昇ろう」えっ?」
ランディは、凹凸の殆ど無いヤシの木を、するすると上っていった。
「ひなた、ランディには常識通用しないのよ?」
びっくりしている、ひなたをまえに、香織は苦言する。
香織も、ひなたと出会った直後は『ひなたさん』と読んでいたのだが『正妻にさん付けされるのは、ダメ!』と理不尽な呼び名を取り消して貰う代わりに、敬称を辞めた。
いまや、ひなたを『さん』付けするのはマーニャだけである。
ランディは調子にのって、ヤシの実を次々砂浜に落として言った。
「ちょっとランディストップ! どうやって運ぶのよっ!」
ランディの落としたヤシの実は、四つにとどまった。
……
…………
「……で、お兄ちゃんこれ、どうするの?」
ランディは、答えた。
「どうしよう…………」
ランディは、何も考えていない様だった。
「「「「…………」」」」
道具の無いランディは、ヤシの実をどうやって食べるのだろうか。




