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130#エスケープゲーム(キンジの異世界奮闘記9)

たいへんお待たせいたしました。

 ◇【一繋ぎの鎖】◇


 おれがこの部屋に入った時は、ちょっと可愛い女が三人首輪の付いた鎖に繋がれていた。


 この人達は後で教えてもらう『マリ』『ユリ』『エリ』だ。


 それにしても、生死の懸かったゲームなんて、したくないなぁ……

 カーズさんとアーサーさんのしごきも、命がけなんだけど、それはそれ、これはこれ。


「カーズさぁん、やっぱ止めましょうよぉ」


「キンジ、宴会のセッティングしてくれるまでの間、ゲームで飽きさせない展開を、用意してくれた会社に失礼だぞ」


「そうだ キンジ 楽しめ」


 だ、駄目だこの2人……話にならない……。

 

 ほぼ強制的に首輪を嵌められ、イエス準備・ノー覚悟だ。


 次の部屋に、続くと思われれる扉から数えて、女3人・カーズさん・アーサーさん・おれの順番だ……何故おれが一番遠いのか、全く理解出来ない。


 そんな事を考えていたら、何処からか胡散臭い声色の声が聞こえてきた。



『このエスケープ・サバイバルゲームへようこそ諸君。先にも話をした通り、三つの部屋を脱出出来た者だけが、サバイバルゲームに参加出来、見事三十日間、生き残れば、金五億が与えられます』



 まったく……五億より命だっての!



『そして、先にも伝えましたが、ルールの説明します。……このゲームの途中退場者の殆ど(・・・)は死亡となります』



 女性三人は、どこか覚悟を決めた表情だったが、アーサーさんとカーズさんは楽しそうだ……



 さらにアナウンスが流れる。


『それでは見事、このゲームに生還して、大金を手に入れて下さい…………第一の部屋【一繋ぎの鎖】制限時間は三分。目の前にある鍵を使い、首輪を外して左にある扉からこの部屋を脱出して下さい……』



 壁に鍵が掛かっている反対側のカーテンが外れる……


 すると、壁には鋭利な刃物が、数えきれないくらい、生えていた。



 おれは、目茶苦茶びっくりした。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ユリ・マリ・エリ三人は、事前にこの部屋での対策を済ませていた。


 この部屋では、全員生き残る事が可能なのは判明している。


 ただ、意識の共有……説得の時間が無いだけ……

 ならば、スタートダッシュを実行して、三人で壁まで突き進み、鍵を取り、首輪を外して、残ったメンバーを壁まで移動してもらい、六でこの部屋を脱出することだった。


 何故なら、彼女らが理解している範囲では、エスケープの【人減らしの鎖】で一人、【生け贄の祭壇】で二人脱落すると思っているからだ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


マリ達三人が、鎖を手に持ちダッシュで動いた。


 しかし、ガクッと止まり全く動けてない。


 う~ん、分からん……そういえば、アーサーさんがカーズさんとおれに繋がってる鎖を握ってる……どうしたんだろう……


「成程 納得」


「へぇ……巧く出来てるね……」


 カーズさん、アーサーさん、全く意味が解らないんだけど……それより、早く脱出したいです。


「鎖 皆 繋がってる 誰か 助かる 誰か 犠牲になる」


 そういうことか……誰かが鍵のある壁に行けば、誰かが剣に刺さるって事か、こえぇ……


マリ達三人が、全力を出してもピクリとも動かない事に、焦りを感じ始めた時、アーサーが動き出した。


「俺 犠牲に なる キンジ 前 進む」


 ああっ! アーサーさんが、我が身を犠牲にして後退していく ……


 おれは目頭が熱くなった。


 こうして、アーサーさんの犠牲で、おれと女性三人は鍵の設置場所に向かって進んだ。


 もう少しで鍵に手が届く寸前で、ガクンとして進まなくなった。


 なんで?


 後ろを振り向く……


 するとアーサーさんは、まだ生きていた。

「お前ら 力 足りない 剣 刺さらない」


 あ~ 忘れてましたよ、アーサーさん『無機物攻撃無効』だったもんね……さっきは感動して損しましたよ。

 しかも、『チクチク すら しない がっかり』とか恐ろしい事、言ってますよ……



 と、思っていたら、アーサーさん針金で首輪の鍵を開けてしまった。

 針金なんてどっから出したんですか? 何でも有りですか?


 でもそのお陰で、壁まで到達出来たおれと女性3人は首輪をはずしてこの部屋をカーズさん、アーサーさんと脱出した。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ◇【人減らしの薬】◇


『マリ』『ユリ』『エリ』の三人は深刻な表情で話し込んでいた。


 当初の希望通り、一つ目の部屋【一繋ぎの鎖】を一人も脱落者を出す事無くクリアしたのだが、その過程が尋常じゃなかった。


「本当に剣が刺さらなかったの? 刺さる手前で止めたんでしょ? 」

 ユリがマリの『あの男、剣に当たっても刺さらなかった』の言葉に疑問をのべる。


「どっちにしても不味いよ……あれじゃ絶対に【生け贄の祭壇で】負けちゃう……」

 エリが焦りの含む表情で話す。


「ねぇ……あの、チョロそうな男から情報を引き出せないかな?」

 マリが提案した。


「そうね……何もしなかったら三つ目の部屋でジ・エンドだもの……」


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 おれが暇そうにしてると、三人の女の人がやって来た。


 そこでお互い自己紹介をした。


 でも、自己紹介したのはおれだけ……

 そう、あれよあれよという間に、おれだけ壁際に連行されたのだ。


 どうやら、おれやアーサーさんが気になったらしい。


 何故おれ? 良くわからないが、おれが三人のなかで一番イケメンって事かも……


 マリ・ユリ・エリの三人があまりに密着するから色々喋ってしまった。


 まあ、簡単に言うとアーサーさん自だな……


 久しぶりに、可愛い女の子と話した……おれは満足したった。


 それから、マリ・ユリ・エリは何故か部屋の四隅にバラバラになって座ってしまった。


 意味が解らない……ケンカはしていない筈だけど……



 暫くしたら、体調が急激に悪くなってきた。

 おれは、アーサーさんに相談しようとしたら、アナウンスが流れてきた。



『ようこそ、この【人減らしの薬】へ……現在この部屋には現在致死性の猛毒ガスが散布しています。 とは言っても、解毒薬を摂取すれば簡単に助かる程度の毒ですが……』


 ガーン! なんてこった……致死性の毒ですって?


『先ず解毒剤を、一本差し上げます。誰か飲んでみてください』


 中央の部屋に有るテーブルに、一本の小瓶が出現した。



「ふむ キンジ お前 飲め」



 アーサーさん……また自分を犠牲に……ハッ!?

 そうだ! アーサーさんは、毒なんか効かない体質だった。

 また騙されて、感動するところだった。



 続いて流れる、アナウンス。



『これから、解毒薬を置いている四つの小部屋を出現させます。その小部屋には解毒薬が一本(・・・)置いてあります……解毒薬を飲んだら、体調が戻るまでの二時間弱、休んでいてください……この部屋の試練はこれだけです。』



 このアナウンスの直後、部屋の四隅に1m四方の『小部屋』と言うより『大きな箱』と言った方が似合う物体が出現した。



 あれっ? あの女の人達、絶好の位置に居るね……

 何でだろう……


 あっそうだ! アーサーさんは兎も角カーズさんは大丈夫かな?


「カーズさぁん、致死性の毒って言ってましたよ? カーズさんは大丈夫なんっすか?」


「ん? 私の心配か? 128年くらい早いが、礼を言っておこう」

 

「カーズ キンジに 優しい」


 はい、二人とも平常運転でした。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ◇【生け贄の祭壇】◇


『マリ』『ユリ』『エリ』の三人は深刻な表情で話し込んでいた。


 

「あの大男、情報通り、毒も効かないのね。どうする?」

「あんなのに、勝てる訳無い……」

「決まってるじゃない、三人がかりで、味方に着けるのよっ!」

「どうやって……」

「決まってるじゃない、身体よ身体。私達はどんな変態どもの仕打ちにも、堪えて来たじゃない……」

「そ、そうね……あのアーサーだっけ? その男をたらしこんで、四人で脱出しましょう」


 マリ・ユリ・エリはアーサーと交渉に入った。


 ……

 …………

 ………………


 マリ・ユリ・エリの三人は、この部屋で助けてくれると言質を取った。


 対価は、三人の身体だった。

 マリ達は、自分の売り込みに成功したのだ。


 彼の仲間の二人には悪いけど、この部屋で犠牲になって貰う…………筈だった



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 この部屋に入室してから、約十分後アナウンスが流れてきた。

『ようこそ、最後の試練【生け贄の祭壇】へ、この部屋は。中央の十字架に生け贄を二人捧げるだけで脱出用の扉が開かれます。なお、只今より一時間半経過すると、部屋は爆発します……それでは健闘を祈ります』


 

 マジで!? だれか二名犠牲になるの?

 しかし、こんな時はカーズさん……


「カーズさぁん、助けてぇ……」


 そうしたらアーサーさんが、以外な言葉を投げかけた。


「カーズ あの女 助ける」

 そういえば、マリ達三人は、アーサーさんと話していたな……おれが、恐くないって言ったからだな。


 でも、マリ三人組が『ギョッ』とした顔してる……面白れえ~。


「キンジ、これは二人分の生け贄は要らないな」


「何でですか? カーズさん」


 カーズさんはハンマーと槍を持って来た。


「答は、ハンマーと槍に有る。この鎖が一部脆いのは、製造ミスだろうけど、それ以外はかなり精巧に作られている……そして、この腕輪と足輪は電気を通すと、何かが起きる仕組みになっている、と予想出来る」


「電気……ですか?」


「そして、ハンマーと槍を組み合わせ「アーサー パァンチ!」えっ?」


 ドゴォォォン!!


 おれは、轟音がした方を振り向いた。


 ボガァァァン!!


 ああ……アーサーさんが、扉を素手で殴ってる……

 バギャァァァ!!


 スゲェ……みるみる扉がひしゃげている……

 おれが呆れている間に、扉が完全に潰され人が通れる隙間になったよ……


「あのアーサー? いったいその奇行はなんだい?」


「カーズ 言った 俺の腕(ハンマー) 使う」



「あっ……そっちの(ハンマー)ね……もういいや……私は、サバイバルゲームで遊ぶから」

 カーズさんは、色々とやる気が削がれた様だ……分かります。


 将棋をして、こっちが優勢なのに、味方が将棋盤をひっくり返したようなもんだからな……




 部屋を出て廊下を移動中、突然壁におれのダガーが、壁に引っ付いた。

 アーサーさんの鉄棒も引っ付いたけど、アーサーさんがひっぺがしてくれた。

 頼もし過ぎます。


 女3人組は、感謝するどころか、顔面蒼白だったよ……その気持ち解るぜ。


 ……

 …………

 ………………



 サバイバルゲームは五日後……それまで、この何もない部屋で待機する事になる。


 この部屋は、ただの待機場所だが、壁に鉄製の小扉が30個も有り、その中には一日分の食料が有った。


 この鉄製の小扉は遠隔操作で解錠出来るようになっていて、一日に生存人数分の扉が開く仕組みになっていた。


 部屋の隅に仕切りがあり、そこにはトイレとシャワーが設置されていたが、使える水は衛生上とサバイバルゲームに使えない様に、強力な消毒剤が混じっている。


 トイレットペーパーは有るが、バスタオルは無く汗を流す程度の機能しか無かった。


 そして六人分の衣類が置いてある。


 ただそれだけの部屋だった。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 五日後……


 生き残ったおれ、カーズさん、アーサーさんと女三人組のサバイバルゲームの時が来た。


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