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117#巻き添え召喚

 時はBチームが【人減らしの薬】の部屋で解毒剤を求めて移動をしている頃、事件は起こった。



 ◇ガストブレイク社・研究棟◇


 この研究棟で『escape・survivalgame』の管理・運営をしている一画がある。


 丁度サバイバルエリアに、肉食獣(クマ等)を召喚したところだった。



『ホワイトパンドラ』による召喚直後、研究棟に異状事態を告げるアラームが鳴り響く。



 一人の男が、オペレータと思われる者に問いかける。


「今回は、どんな警報だ?」


 オペレータが、カチカチと計器を色々と操作した後、答えた。

「室長! イレギュラー召喚です、イレギュラー召喚が発生しました」


「ほう、イレギュラー召喚か……場所は?」

 室長と呼ばれた男は、楽しそうに問いかける。


 イレギュラー召喚は年に数回起きる出来事で、珍しい事ではあるが、それほど驚くような頻度では無かった。


 ただ、イレギュラー召喚の対象物は、良い研究材料になるため、室長にとっては楽しいイベントになっていた。



「はい…………召喚ポイント割り出せました……召喚ポイントは……えっ?……み、三つ……」

 オペレータの声が震えている。


「三ヶ所だと?」

 さすがの室長も、初めての現象に驚く。


「ひとつは、え……Aタンカー。もうひとつは、Bタンカー……」

 AタンカーはエスケープゲームのAチームの開催場所で、BタンカーはBチームの開催場所だった。


「なんだと!? 今エスケープゲームの真っ最中じゃないか!」


 しかし、さらに驚く台詞が、オペレータの口から出る事になる。


「最後のポイントは……け、研究棟三階、ここの五つ上の階です!!」



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ◇ある密室内◇


「おや? 今度の異世界は、何もない鉄の壁の部屋だな……まるで牢獄みたい」

 とランディがぼやく。


「これじゃどんな世界か解らないわね」

 と香織。


「お兄ちゃん、どうするの? この壁、頑丈そうだよ?」

 とマーニャが壁をコンコンと叩いている。


「ランディ、初めての異世界が牢獄なんでショックぅ」

 とひなたが苦情を漏らす。


「らんでぃ、どうするの?」

 リリスが聞いてくる。


 ランディはにこやかに答える。

「ふっ、こんな時のために取って置きのアイテムを用意してあるのさっ」


 ランディはポケットから有るものを取り出した。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ◇ある密室内その二◇


「カーズさぁん、今度は訳解んない密室っす」


「今度は……明るいな……なんか囚われの身になった気分だな」


「牢獄 スタート テンション 上がる」


「今から、私がサイコロを作る。これで、今後の活動方針を決めよう」


「カーズさん……また運試しですか? 膨大な魔法と知識を持ったカーズさんが、棒倒しに続いて、サイコロなんて……アーサーさぁん、なんか言ってくださいよう」


「サイコロ 内容 俺も 書く」


「アーサーさぁん……しくしく」



 今、生死を賭けたゲームの真っ最中に、人外四人衆の内三人と、その仲間達が乱入してしまった。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ◇ガストブレイク社・研究棟◇


 今、ここでは慌ただしく人々が走り回っていた。


「上の階には、ネゴシエーターを連れていけ! 生命力測定器も忘れるな! もし、カミーラクラスなら、細心の注意を払え!」


「Aタンカー、Bタンカー共に音声と映像が接続出来ました。……Aタンカーは来訪者五人! いずれも人間型です。 Bタンカーは三人!こちらも全て人間型です!」


「三階に出現した者を含めて、人間型が九人か……よし! 言葉が通じるなら、エスケープゲームに参加させよう……そうだな、Aタンカーにいる五人には、カミーラを使おう」


「カ、カミーラですか? ……じゅ、準備します」

 

「Bタンカーには……」


「室長! 江屈巣(えくす)常務から、映像通信が来ました」


 室長は明らかに驚いていた、ガストブレイク社研究棟最高責任者の江屈巣常務から、映像通信が接続される事は通常、あり得ない筈なのだから……


「はい、鈴木です! 如何なさいましたか?」


「鈴木室長、子細は聞いた。彼らが話を理解できる人種ならゲームに参加させてはどうかね? 」


 この場にいる研究員たちは、打ち合わせもしていないのに、同じ考えに到達する2人に驚いていた。


「はいっ、それなら既に手を打ってあります。Aタンカーにはカミーラを使います」


「そうか、カミーラか……それならBタンカーには、私が破棄しようと思っていたメイドが、四人いる……使ってくれ。だだ、ちょっとエスケープ、サバイバルゲームを数回観てしまっているけど、その程度なら、問題ないだろ」


「解りました、それでは三人ほどお借りしたいのですが人選は如何なさいますか?」


「メイドたちに決めさせよう……決まり次第『ブラックパンドラ』で送りつける、Bタンカーの座標を知らせてくれ」


「解りました。直ちに手配します」


「それでは通信を切る」


 ふう……今夜はまだまだ楽しめそうだな……

 江屈巣は別の場所に連絡をしていた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 小さい部屋に、金髪でスタイルの良い美女が佇んでいた。


 その美女の顔は何処と無く寂しさを浮き立たせていた。


 部屋の隅にあるスピーカーから、声が聞こえてくる。


『カミーラ、カミーラ・フォン・アルフシュタイン』


 カミーラと呼ばれた美女は顔を上げる。

「なんじゃ?」

 容姿に合わない幼い声。


『仕事です』


「何回じゃ? 後何回ヌシ等の言うことを聞けば『サクラ』を解放してくれるのじゃ」



『…………』


「ふっ答える筈も無いか……」

 と、瞳を閉じる。


『……二回……いや、今回で顧客が満足すれば、二人とも解放しよう……』



 突然の朗報に驚愕する。

「なっ!? 急にそんな話が信じられるかっ!」

 怒鳴るカミーラだったが、次の言葉で納得した。


『今回カミーラが相手をするのは来訪者五人……他に四人来訪者が別の場所にいて、既に一人はこちらの手の内にある……』


「なるほど……私の代わりが来たのか……それも複数か……」


『だから、これからもカミーラには、わが社で働いて貰いたいが、強制するなと命令が来た』


「解った……で、ワシ等の解放の条件は?」


『顧客を満足させる、又は二名我社にスカウトする。このどちらかが達成されれば、カミーラとサクラは介抱しよう』


 カミーラは息を呑んだ。

(これなら、サクラを助けられる……いやまてまだ油断するでないぞ)

「顧客の満足とは随分と曖昧だの……」


『来訪者が弱ければ、協力を。強ければ、妨害を。

 気に入った者がいれば、魅了してもいい……』


「そんなもので良いのか……来訪者には悪いがサクラのためだ……解った、転送してくれ」


『我々ガストブレイク社は、カミーラの働きに期待しています…………ブツッ』


 通信が切れたのを確認して、カミーラが呟く。

「サクラ……待たせたな。やっと、やっと、サクラに会える……もう少しだけ待っていてくれ……愛する妹、サクラよ……」



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ◇ 江屈巣の屋敷◇


 ある一室にメイドの四人が急遽集められた。


 その内、三人はメイドとは名ばかりの性奴隷だ、残りの一人も性的奉仕をする立場だか、顧客を選べるだけ、他の三人とより地位は高い。


 四人が集まったことで、スピーカーから自分達の主人である江屈巣の声が流れてきた。


『突然ですまないが、君達四人には解雇する事に決定した』


「え!?」×4

 いきなり解雇と言われても、江屈巣の意図が全く解らない四人だった。


『それでだ、退職金代わりにエスケープサバイバルゲームに参加してもらう事になった』


「あっ…………」

 メイドの小頭は、ゲームのルールと報酬自体は知っているが、細かな事までは知らない。


 三人の性奴隷(メイド)も、本来なら同じであるはずなのだが、顧客に凌辱されながら、ゲームを見た事が数回あった。


 顧客の中には、人の死ぬ瞬間に性的に高ぶる変態が多くいたからだ。


『因みに、このゲームに参加しない者は、予定通り解雇して、『ゴライアン』のオモチャになっていていただく』


「ひいっ!」×4


 ゴライアンとは、『ホワイトパンドラ』で召喚したゴリラに似た生物で、そこに人間を入れると三日間休みなしで犯され、満足すると手足から生きたまま食べてしまう凶悪な生物で、江屈巣のペットでもある。


 四人のメイドは、解雇=ゴライアンに殺されると言う事実を思い出した。


「い、いやぁっ!」

「助けて、助けて、助けて、助けて、……」

「何でもしますから、それだけは許して下さい!」

「えっ? えっ? 何で私が解雇?」


 スピーカーから再び江屈巣の声が聞こえてくる。

『エスケープ・サバイバルゲームの生存者には、金五億の退職金が支払われ、自由なる……住みたい国があったら、パスポートも用意しよう……では、ゲームに参加するかね?』


「参加します!」×3

「えっ? あっ……さ、参加します……」


『解った……しかし、このゲームの参加枠は三人までなんだ……悪いが、誰か一人はここで死んで貰えるかな? では迎えをよこす。以上だ…………ブツッ』



 突然の出来事に嘆いている場合じゃないと、メイド小頭のユミは、思考を切り替えた。

「仕方ないわね……マリ、あなたはここで死になさい、ユリとエリはゲームで私を守るのよ、いいわね?」


 と言った矢先に、三人のメイドに襲われた。


「うるさい!」

「おまえが死ねぇ!」

「よくも変態の顧客ばかり私たちに、押し付けやがってぇ!」


 思いきり殴られ、怯んだところを、三人かがりで間接を外され、最後には首を締められて、メイド小頭のユミは死んだ。


 その後、三人はお互い数少ない情報を持ち合い、協力してゲームをクリアしようと話し合っていた。


 だが、彼女達の分かっている事は少ない。


 ①三つのエスケープゲームのルール

 ②【人減らしの薬】の部屋の解毒剤の出現場所。

 ③【一繋ぎの鎖】で先に鍵のある壁にたどり着いた者が、気を使えば全員助かる事。

 ④【生け贄の祭壇】戦闘になった時、生存率の高い武器は槍である事。

 ⑤サバイバルゲームに使えるボーナスアイテムを貰える座標を記した紙を貰えると言う事。

 ⑥サバイバルゲームでの危険地帯の座標を2つ知っている事。


 彼女等はこの持ち寄った情報で、お互いに生き抜こうと誓うのだった。



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