114#Bチーム【一繋ぎの鎖】
◇一繋ぎの鎖の間◇
この部屋に6人の男女が鎖に繋がれた首輪を嵌められ、眠っている。
……
…………
………………
始めに新潟秀次が目を覚ました。
(此処は…………そうか、このゲームの説明をされて、その後眠らされたのか……)
新潟秀次は辺りを見回す。
(妻の雅子を見つけた……)
ドクン
(心臓が高鳴る……眠らされる前に雅子の浮気現場の証拠を見せられた……僕を拐った機関は雅子が弱味を握られたのが切っ掛けと言っていたが、見せられた動画は完全に同意の行為だった。いやむしろ雅子はこれ以上ないほど乱れ喜んでいた……悔しさと怒りで死にたくなった……だけど、どうせ死ぬ気ならこの賞金5億のゲームをやってやろうじゃないか……死んで元々、生き残れば復讐も出来る)
新潟秀次が色々考えている間に、
次々に目覚めていくゲームの参加者達。
Bチームの面々は自分と繋がっている首輪と鎖に驚くが、悲鳴や怒声を出す者はいない。
そう、Bチームにはここが生死のかかったゲームだと伝えてある。
勿論ゲームクリアの報酬も5億と伝えている。
福井麻紀が彼氏である富山健太二話しかけてる。
「ねぇ 健太ぁ マジヤバくない? 2人で10億だよ、10億!」
「ああっ、どんなゲームか知らねぇがヤってやるぜ!」
「さすが健太ぁ 頼りになるぅ」
この2人は理不尽に拐われた事を忘れてしまっている様だ。
一方新潟雅子は、鎖の付いた首輪を嵌められている事に戸惑いを隠せない。
「私……どうしてこんな事に……」
石川かなたと、まどかの兄妹はアイコンタクトをした後、お互いの首輪を調べている
その後、新潟秀次が自分の妻の雅子に向かって怒鳴り散らしている。
原因は新潟雅子が夫である秀次に助けを求めた事から始まった。
「どの面下げて俺に『助けて』なんて言えるんだっ! あ、あんな事をしておいてっ」
「そ、それは……脅されて、仕方なく……」
「うるさい、うるさい! うるさぁいっ!!」
それを見ていた、富山健太・福井麻紀の両名が、
「やだ、超ウケる……ケンカしちゃってる」
「へっ、みっともねぇな」
一通り周囲を見回した石川兄妹は、鎖の出所がカーテンで見えない事が気になった。
そして、正面には恐らくこの首輪を外せるであろう鍵が壁にかかっていたのも確認した。
そして、壁付近の床には鉤のある突起物があちらこちらに有るのも確認した。
突起物の意味までは解らないが……
「まどか、多分あれが脱出用の鍵だ……あと、カーテンの先には、今見せてはいけない程の物があると思う……覚悟を決めてくれ」
「うん、わかったよお兄ちゃん」
そんな中、部屋のどこからか、機械的な男性の声が響き渡る。
『このエスケープ・サバイバルゲームへようこそ諸君、先にも話をした通り、3つの部屋を脱出出来た者だけが、サバイバルゲームに参加出来、見事30日間生き残れば、金5億又は金2億と特権階級の市民権が与えられます』
ゲーム挑戦者の半数、富山健太・福井麻紀・新潟秀次は、鎖に繋がれている事を忘れ、瞳を輝かせる。
『そして、先にも伝えましたが、ルールの説明します。……このゲームの途中退場者の殆どは死亡となります』
勿論、今のところ【殆ど】では無く全員死亡しているのだが……
瞳を希望に輝かせていた3人の表情に緊張が走る。
「と、とにかく失敗しなきゃ良いのよ……」
「あ、ああ……5億だもんな……」
さらにアナウンスが流れる。
『それでは見事、このゲームに生還して、大金を手に入れて下さい…………第1の部屋【一繋ぎの鎖】制限時間は3分。目の前にある鍵を使い、首輪を外して左にある扉からこの部屋を脱出して下さい……』
壁に鍵が掛かっている反対側のカーテンが外れる……
すると鋭利な刃物が無数、壁から生えている。
富山「うわぁぁっ!!」
福井「何よこれ?!」
新潟夫「くっ……」
新潟妻「い、いやぁぁぁぁぁぁ!」
石川兄「これは……」
石川妹「お、お兄ちゃん……」
部屋に動揺や悲鳴が生まれた中、ゲームが始まる。
『それではゲーム開始!』
一斉に壁に向かって動こうとする6人。
しかし同時に動こうとすると、鎖は遊びが無くなった所で6人の動きは止まる。
「ぐえっ」
「ぎゃっ」
「おえっ」
「かはっ」
「うっ……」
「きゃっ」
そんな中、富山健太と新潟秀次がゆっくりと鍵のある壁に近づいて行く。
代わりに、新潟雅子・福井麻紀の2人が刃物の生えている壁に少しだけ近づく……
そして、石川兄妹は現状から動いていない。
今時点の立ち位置はこうだ。
鍵―新潟夫―富山―石川兄妹―岩手―福井=新潟妻―刃物
となっていた。
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◇観戦会場◇
本日二回目ゲームにも関わらず、大半の観戦者達は物凄い盛り上がりを見せていた。
今回の賭けは予想しずらくバラバラであったが、どちらかと言えば女性が死ぬだろうと賭けていたのが大半であった。
過去の統計上、イレギュラーが起きなければ、体重の軽い者が死んでいったからだ。
観戦者達は、前回と違いほぼ拮抗している6人を見て、時間切れで全滅もあり得ると興奮していた。
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石川かなたは、少しづつ差は開きつつあるが、拮抗した状態を確認して、このままでは制限時間をオーバーすると悟った。
「まどか、兄ちゃんを信じてくれ……」
「……? ……分かったお兄ちゃん……」
石川かなたは、事もあろうか妹の手を握り後ろに下がりだした。
そして、懸命に前に進もうとしている新潟雅子の妨害をした。
「な、何するの!? やめて、いやぁぁぁぁ!」
石川兄妹と新潟雅子が後ろに下がる事によって、残りの3人が前に進め、鍵のある壁までたどり着いた。
(早く……早く鍵を外せ……)
石川かなたは、祈る。
……
…………
3人が、首輪の鍵を外して、次の部屋へと駆け出した。
「よしっ! 今だ……あっ、し、しまった!」
3人から投げ捨てられた首輪は床にある突起に引っ掛かっていた。
石川かなたは、作戦の読み違いに諦めかけたが、新潟秀次がこちらを振り返った時に、まだ絶望には早いと自分に言い聞かせた。
「奥さんを見捨てる気ですか? 」
すると男は立ち止まり、叫ぶ。
「何も知らない奴が何を言う! 雅子は……あいつは僕を裏切っていたんだぞ!」
「言い訳くらい聞いて上げたらいいじゃないですか? でないと後悔しますよ!」
「後悔なんてしない! 僕はもう1人で生きるんだ……」
「真実を知らないままなら、絶対後悔します! 奥さんが死んでから、もし奥さんに非が無かったと知ったら絶対後悔しますよ!」
「し、真実だと………………どうすればいい? 僕はそれでも死ぬわけにはいかない……」
「床に引っ掛かっている首輪を投げてくれるだけでいい! 早く!」
「わ、わかった……」
新潟秀次は首輪の引っ掛かりを3つ全て外した。
「まどかっ今だ!」
「うん」
石川かなたは新潟雅子の腕を掴み、鍵の壁まで到着した。
時間がもうない筈だ……
石川兄妹は鍵をすぐ外せたが、新潟雅子は恐怖のためか、手が震えてうまく解錠出来ない。
しかも、新潟雅子は鍵を落としてしまう。
なんと、その鍵は床にある突起物に当たり、跳ねかえり、遠くに転がって行った。
「い、いやぁぁぁぁ!!」
新潟雅子の悲鳴が木霊した。
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◇観戦会場◇
今、観戦会場が騒ぎに包まれていた。
そう、観戦者達は珍しい光景を見ていたからだ。
「6人全員生き残った……」
「あの男……石川かなたでしたっけ? 彼私の会社に欲しいわ……」
「彼、自分鍵を使って助けたわよ……あの窮地でよく思い付いたわね」
「此の部屋の賭けも、運営の1人勝ちじゃないですか……」
「今迄、最初の部屋を死者無しで乗りきった事、何回ありました?」
「私の見てる中ではこれで3回目ですが、毎回参加してる訳ではありませんからねぇ……」
口を出したのは『エックス氏』だった。
「エックス氏毎回いるわよね? いったいどれだけ暇なのかしら?」
「ははっ、そう言われると辛いですな……しかし今回はひとつ目の部屋で全滅に賭けたので大損ですよ」
「まあ! エックス氏が大損?……それは面白しろいわねっ」
と言いながら、微笑んでいる『オメガ嬢』だった。
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こうして、生き残った『富山健太』『福井麻紀』『石川かなた』『石川まどか』『新潟雅子』『新潟秀次』の6名は次の部屋に入るのだった。
なんと、明日も投稿いたします。
よかったみてくださいね。




