111#Aチーム【一繋ぎの鎖】
◇一繋ぎの鎖の間◇
この部屋に6人の男女が鎖に繋がれた首輪を嵌められ、眠っている。
……
…………
………………
始めに宮城陸が目を覚ました。
(此処は…………そうか、このゲームの説明をされて、その後眠らされたのか……)
宮城陸は辺りを見回す。
(俺と同様に5人眠ってる……もうすぐ目覚めそうだな……)
宮城陸の予想通り、次々に目覚めて行くゲームの参加者達。
皆、鎖の付いた首輪を嵌められている事に戸惑いを隠せない。
「何よ……何なのこの首輪は……」
と福島美月が涙目になっている。
「これが、このゲームの最初の部屋か……」
岩手拓巳は始めこそ、首輪を嵌められていた事に戸惑いを感じていたが、特権階級向けの秘密のゲームなら、これくらい当たり前か……と思い直して、ポケットにあるボイスレコーダーに『録音』のスイッチを入れた。
秋田大和は黙々と自分の首輪やを色々触って構造を調べている。
山形葵は周囲の5人を観察している。
青森海斗は
「ふ、ふん……大金を手にするゲームなんだ! こ、こんなの当たり前だろっ!」
と声を上ずらせながら、虚勢を張っている。
一通り周囲を見回した宮城陸は、鎖の出所がカーテンで見えない事が気になった。
そして、正面には恐らくこの首輪を外せるであろう鍵が壁にかかっていたのも確認した。
そして、壁付近の床には鉤のある突起物があちらこちらに有るのも確認した。
そんな中、部屋のどこからか、機械的な男性の声が響き渡る。
『このエスケープ・サバイバルゲームへようこそ諸君、先にも話をした通り、3つの部屋を脱出出来た者だけが、サバイバルゲームに参加出来、見事三十日間生き残れば、金5億又は金2億と特権階級の市民権が与えられます』
ゲームの挑戦者の半数、青森海斗・福島美月・山形葵は、鎖に繋がれている事を忘れ、瞳を輝かせる。
『そして、先には伝えなかったルールを説明します。……このゲームの途中退場者の殆どは死亡となります』
勿論、今のところ【殆ど】では無く全員死亡しているのだが……
瞳を希望に輝かせていた3人の表情が固まる。
「「な、何だって?!」」
「「えっ? どういう事?」」
奇しくも男2名と女2名が、同時に声を上げた。
ただ秋田大和と宮城陸は、黙ったままだった。
文句、罵声、悲鳴が飛び交う中、アナウンスが流れる。
『それでは見事、このゲームに生還して、大金を手に入れて下さい…………第1の部屋【一繋ぎの鎖】制限時間は3分。目の前にある鍵を使い、首輪を外して左にある扉からこの部屋を脱出して下さい……』
壁に鍵が掛かっている反対側のカーテンが外れる……
すると鋭利な刃物が無数、壁から生えている。
岩手「うわぁぁっ!!」
山形「いやぁぁぁぁぁぁ!」
秋田「くっ……」
青森「た、助けてくれぇぇぇぇ!」
福島「ひぃっ!?」
宮城「…………」
部屋中に悲鳴が木霊する中、ゲームが始まる。
『それではゲーム開始!』
一斉に壁に向かって動こうとする6人。
しかし同時に動こうとすると、鎖は遊びが無くなった所で、6人の動きは止まる。
「ぐえっ」
「ぎゃっ」
「おえっ」
「かはっ」
「ぐきゃ」
鎖を手に持っていた宮城陸だけが、悲鳴を上げていない。
そんな中、青森海斗だけがゆっくりと鍵のある壁に近づいて行く。
代わりに、秋田大和・岩手拓巳・福島美月・山形葵の4人が刃物の生えている壁に少しだけ近づく……
そして、必死になった秋田大和と宮城陸も鍵に向かって少しづつ進ん行く。
今時点の立ち位置はこうだ。
鍵―青森―宮城―秋田―岩手―福島=山形―刃物
となっていた。
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◇観戦会場◇
ここでは、大半の観戦者達の予想通りに動いていたが、物凄い盛り上がりを見せていた。
ここに居る8割方が、山形か福島のどちらかが死ぬだろうと賭けていたのだった。
今回、元プロレスラーの青森海斗と、強いと情報のある宮城陸に賭けているのは、『0』だった。
観戦者達は、涙と鼻水を垂らしながら、徐々に刃物に近づきつつある女2名を観て、興奮していた。
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山形葵と福島美月は、死の恐怖に怯えながらも必死に前に進もうとしているが、実際は刃物が生えている壁に近づくだけだった。
全身に力を入れながらも、死の予感を感じてしまった山形葵は、後ろを見ていた宮城陸と目が合う。
「た、助けて……」
宮城陸は、山形葵の懇願とも言える声に反応した。
宮城陸は、2歩後ろに下がったと思うと、隣の秋田大和に足払いを仕掛けた。
「うぎゃっ……な、何するんだ……ぐへぇぇぇ」
秋田大和の腹を踏みつけて、
「今だ! 鎖を持って走れ!」
と、叫んだ。
踏ん張りの効かなくなった秋田大和に対して、残りの5人は鍵に向かって近づいて行く。
「あわわ、ま、まって……待ってくれ助けてくれ、助けてくれぇ! げへっ……」
始めに、青森海斗が壁に到達して鍵を手にした。
この時。宮城陸は、一人先に首輪を外せば、後でみんな助かるのでは? と思った。
所が、鎖の付いた首輪を外した青森海斗が首輪を捨てた時、上手い具合に鎖と床の鉤の付いている突起物に嵌まった。
宮城陸は、(そう言う事か……良く考えてやがるぜ……全員助かる道はある……だが3分じゃ無理だな……せめてゲームの開始時に気づいていれば……まあいっか……)
続いて、 岩手拓巳が鍵の掛かっている壁まで到達する。
反動で、秋田大和は壁の刃物に突き刺さる寸前だった。
「ぐぇぇぇ、た、助けて、助けて……あっっ、痛い、痛い、痛いぃぃぃ!! やめろぉぉぉぉ! ぎゃあぁぁぁぁ……」
秋田大和の悲鳴に、怯えた福島美月と山形葵に宮城陸は、活を入れる。
「躊躇すると、死ぬぞ! 鍵は直ぐ目の前だ!」
3人が鍵を手にした時には、岩手拓巳は身体中鋭利な刃物で貫かれて死亡していた。
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◇観戦会場◇
大半の予想を覆して、先に死亡したのは『秋田大和』だった。
一部の人等が
「あの男の日用大工の腕をサバイバルゲームで見たかった」
「宮城陸のせいで1億ふいにした」
とか騒いでいるが、本気で怒ってはいない。
秋田大和の死に様に満足しているからだ。
「これは、宮城陸と青森海斗がサバイバルゲームに出場する可能性が濃厚ですわね……誰かあの2人に賭けた方はいるのかしら?」
「ははっ、私が彼らに賭けさせて貰っているよ……」
名乗りを上げたのは『エックス氏』だった。
「またエックス氏なの? 貴方は一体いくら稼ぐのかしら?」
「今回は読みやすいぞ、私もあの2人に賭けた」
「まあ! ガンマ氏まで……面白くないわっ」
と言いながら、微笑んでいる『オメガ嬢』だった。
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こうして、生き残った『青森海斗』『岩手拓巳』『山形葵』『宮城陸』『福島美月』の五名は次の部屋に入るのだった。




