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107#渡とランディ

 渡side


 今後の生活の為、渡は自給自足の出来る場所を見つけ、勝手に貰い受ける事にした。


 そこの家には2家族分のゾンビと、たくさん血の付いた衣服があった。


 死体などは、ゾンビがきれいに食べてしまうので、悲惨な状態の死体を渡達は殆ど見ることが無かった。



 渡はこの家で皆と暮らすのは、適していないと考え、住む場所と区別する事にした。



 既に渡達は充分な食料を蓄えていて、岬・美鈴・優樹菜は安心しきっていた……が、渡は違った。


 渡は、日用品を含め、2年先の事まで考えていた。

 そのせいか、渡は来年の冬を越すための、食料事情を考えていて、今夏中に農地を確保したかったのだ。


 農地は確保出来た、しかもその7割は果実の成る木なので、少し手間をかけるだけで良い。


 住居はドラッグストアーから2件隣のオール電化の一軒家を拝借した。

 念のため持ち主が生きていたと仮定し、帰って来たとしても、次の候補を2つ見つけているので、住み家の件は大丈夫だと渡は考えている……


 残された問題は、農地付近の外敵対策と、農地からドラッグストアーまでの道を整備をする事だった。


 後、ここから一番近いホームセンターは、ゾンビが密集し過ぎている為、手が出せない……何とかしたいと考えていた。


 ……

 …………

 ………………


 ◇ドラッグストアー◇


「渡さん、何してるんですか」

 美鈴が、岬をつれて問いかける。


 渡は、消耗する生活必需品を箱詰めしていた。


 渡は、生活必需品を2ヶ月単位で、『綿棒』『剃刀』『歯みがき粉』『歯ブラシ』『シャンプー』『石鹸』等、様々な生活必需品を詰めては、箱に名前と日付を記入していたのだ。

 それも6人分も……


「みんなの生活必需品を最低でも3年分は確保したくて、箱詰めしてたんだよ……」


「うわっ、細かい……」

 渡の几帳面さにちょっとだけ引く美鈴……


 岬はそれを見て小走りしていなくなった……



 そして、2分後戻って来た……買い物かごに大量のコンドームを入れて。


「渡さん、これ……忘れてるよ……」

 頬を染めながら、箱に4ダースぶんのコンドームを入れる。


 渡は照れながらも、2ヶ月分の箱に4ダースのコンドームを入れる岬に驚愕した。


「岬、多すぎだよ……渡さん疲れちゃうよ?」

 美鈴も、頬を赤く染めて苦笑い。


「えっ? だって一晩で2回か4回はするよね? 4回だったら2ヶ月で12日分だよ? 多くないよ?」



 渡は何故2回と4回があって、3回が無いのか不思議だったが、話が話だけに聞けないでいた。

 そんな、疑問を美鈴が代弁してくれた。


「でも、4回って……」


「えっ? 私と美鈴で4回だよ。2人で2回づつ……美鈴はいつも1回でいいの?」


 そう言われて

「あっ……」

 と、なった美鈴は

「そうよね……そうだよね……」

 とブツブツいった後、渡の生活必需品の箱には5ダースのコンドームが入れられていた。



 2人は渡を取り合うような事はしなかった。

 2人はこの生活をする上で、お互いの協力が欠かせないのは、充分に理解していた。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 この日も、道中 今後の対策に悩んでいた渡は、衝撃の人物と再び出会った。


 名前は聞かなかったが、不思議な水……聖水を交換してくれた人……


「おおっ!」

 彼も俺のことを覚えていた見たいで、笑顔で僕の事を指差して、やって来た。


「おお、たしか渡君だっけか……渡でいいよね? 僕はランディ……ランディって言ってくれ。 そうだ! あのゾンビハンド壊れちゃったから、また売ってくれないか? あれは1財産築けるくらいなヒット作だよ」


 あれ、この人こんなに饒舌な人だっけか……

 と、思う渡であったが、渡の方も何故か彼には心を開ける。


「ゾンビハンドが壊れたんですか? 作り方、失敗したかな? それにしてもランディ……さん? 君? 俺も呼び捨てでいい? で、ランディは日本語上手いねぇ」


「はっはっはっ、半分は日本人だからなぁ」

 と、笑っている姿を見て、渡は彼がハーフなのだと勘違いした。



 渡は丁度人手が欲しかったので、ゾンビハンドを渡す代わりに肉体労働を依頼して、交渉が成立した。



 しかしここで、渡にとって嬉しい驚きが起こった。

 それは、ランディと、ピンクの瞳をしたひなたの腕力が超人級で、車をゴロゴロ転がしてしまい、僅か1日で、居住地から農地迄の道の障害物を撤去してしまったのだ。



 夜、ランディは自分の事を渡に簡単な説明をした。

 渡が聞いたのは、ランディがある教団の特殊能力の運用試験中でこの周辺にいたと言う事だった。


 渡が聞いたのは、死者の浄化と食料の浄化だった。


「ランディ、明日からは殆どの脇道の封鎖をしたいんだ……検証したけど、ゾンビは胸の高さ以上の柵は乗り越えれないみたいなんだ」


「冷静に対処すれば、ここら辺のゾンビは大した事無いな……ちょろ過ぎだわ」


「でも、ランディ頭を潰さないとなかなか死なないから、油断は出来ないって、ランディは浄化も出来るんだっけ……◯◯教団って本物なんだね。テレビに出るような霊能力や、退魔師なんて、全員偽物でしょ? 」


「全員がどうかは判らないが今までの見た人は偽物っぽいよね。渡も霊能力特集のテレビ見たんだ」



 そんな、和やかな2人を美鈴と岬は嫉妬の入り混じった視線で見ていたが、美鈴は話の腰を折る。



「渡さん、それより人数も集まったし、ゾンビが大量にいるホームセンター攻略の計画と、……その食料をどうするか……」


 ランディは美鈴の話を聞いて、

「さんだっけ? 食事は僕たちの事は気にしないで……それにホームセンターの確保は僕らだくでやるよ……良い物貰ったしね」


 と言って、ゾンビハンドを見つめる。


彼処(ホームセンター)のゾンビの数は桁違いだよ?」

 と渡は忠告するが、ランディは、


「気にしない、気にしない、等価交換、等価交換」

 と言っていた。



 岬が渡にひそひそ話をする。

「ランディ君って、日本語上手くても、やっぱりハーフだね。『等価交換』の意味解ってないよね」

 と言っていた。




 翌日……渡はホームセンターにゾンビ討伐に言ったランディの事が気になり、農作業を早く切り上げランディの様子を見に行く事にした。


 渡は岬と美鈴にその事を伝えると、揃って見に行きたいと言ったので、優樹菜を1人にする事が出来ない為、みんなで見学に行くことになった。





 そこで渡は、見てはいけない物を見てしまった。


 それは、2つのゾンビハンドで2体のゾンビを引き摺りながら、高笑いして走っているランディの姿が在った。



 そして、ランディを追いかけるゾンビ達……その群がるゾンビ達を、やたらと攻撃力のある(マジックストーン)で、次々とゾンビ達を破壊していく……


 途中……


「あぁ~もうっ! こっちのが楽、いっけぇぇぇ火炎弾! ……はい命中!」


「あっマーニャ狡い……我が力、魔の下に凝縮し魔光となり弾けよ。魔光破…………ねえみんな、たまに魔光破じゃ死なないのがいるよ……」


「はい! 其処と其処の君止まって……そうそう。」

 ゾンビに命令をして、動かなくした後、至近距離でゾンビに石を投げるひなた。

「はい、命中!」


「「ひなたが一番狡い!」」


 並の神経の持ち主なら、この場面を見てゾンビよりランディ達に恐怖するはずなのだが、ランディ達はあまりにも楽しそうに遊んでいる様に見えた為、恐怖する事を忘れていた。


 さらに、渡が

「特殊部隊だ! 彼等は特殊部隊のヒーローなんだ! 何の組織かなぁ?」

 等と言っていたので、恐怖その物が無くなってしまったのだ。



 夜……ランディは渡にゾンビ全滅の報告をした。

 勿論、渡達はランディの凶行を半分以上見ていたので驚く事は無かった。


 こうして暫くの間、渡とランディの生活が続いたが、ある日突然ランディから別れを告げられた。


 そして、最後だからとランディが渡にプレゼントが有ると言い出した。


 そこにはあり得ないはずの新鮮な果物がたくさん箱に入っていた。


 ランディは家庭菜園をするなら、食べた後に種を使ってみたら? 等と言っていた。


 ランディは渡にとって不思議な男として、永遠に記憶に留めるのだった。




 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 エピローグ


 僕はまた、ランデイヤと対面している。


「…………」


「ランデイヤどうした?」


「香織達のためとは言え、シャンプー、リンスに、美容液……よく飲んだね……」


「あれは、不味かった飲むもんじゃねえな……」

でも、クリエイトウォーターで再現可能だった。


「それより、今回は短い滞在だったね。何かの前兆かな……」


「前兆?」

 とランデイヤに聞く。



「うん、過去に何回か短い滞在が続いた後に、大きなイベントが起きるんだ」


「イベント?」

 とランデイヤに聞く。



「魔王と戦ったり、魔王になったり、楽しかったなぁ……」


「はぁ、楽しいんだ……」

 僕はため息をつく。



「それより今回は『ライアーフィルム』について説明しようか」


 ライアーフィルム?何じゃそりゃ?


「ライアーフィルムって、ステータスを誤魔化す非常に都合の良いフィルムだよ、ステータス色々弄れるし、デフォルトで能力値が約1割程度になる……覚えておくといいよ……じゃあまたね」


 こうして、ランデイヤとの会話が終わった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 おれはマジックユーザーキンジ。


 異世界を席巻する男だ。


 おれは今、新たに『ギース』さんと言ういじめっ子が加わり、更なる地獄の様な日々を送っている。


 カーズさんも、アーサーさんも、ギースさんまで、ゾンビは弱くてつまらんと、おれ1人にゾンビを押し付ける始末。


 もう100回は死にかけた。

 アーサーさんの回復呪文が無かったら間違いなく100回以上死んでましたよ?



 そんなある日、身体に悪寒が走るのを感じた。

 異世界転移だ……もう?


 と思っていたらカーズさんも、この短い間隔は以上だなと言っていたから、かなり不安だ。


 そして、転移の直前カーズさんが不思議な事を言っていた。


「何が忘れてる……大事な何かを……何かとんでも無い事を忘れてる気がするんだが……」


「カーズ 忘れる 大した事 無い」


「そうか、そうだよな……」


 と、言っておれ達は日本を去ったのだ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ◇某所◇


 此処に、ある男が1人立ち尽くしていた。


 彼は幾日も幾日も、人を待っていたのだ。


 そして、今日この男は声を大にして叫ぶ。


「アーサー!! カーズ!! なぜ来ない!! ちゃんと待ち合わせしただろうがっ! こんなんだったら、ランディと遊んでいた方が良かったわっ!

  畜生! 畜生!! 畜生!!!」



 その男の名は『ガル』カーズとアーサーに約束をすっぽかされた哀れな男の姿がここにあった。



 第3章完

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