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105#ランディVSエルダーゾンビひなた

 見つけた……ついに見つけたわ……私を殺せる人物を……


 私より少し強いと思われる仲間(ゾンビ)……たしか学って言ったかしら……その学を殺したのを見た……


 (ゾンビ)が戦っていた様子を見ると、理性を失っても逃げる事は無いと判断出来る……



 私はデートの待ち合わせに遅れた少女の様に、急いで彼の元へ走っていった……


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ランディ達の所にひなたがやって来た。


 ひなたはすでに動いていない心臓に手を当て、深呼吸をした。



「こんにちは……私は『前庭ひなた』と言います。貴方にお願いがあって来ました……私を……私を殺して下さい……」



 ランディは突然やって来た瞳に赤みが差した美しい女性の言動に驚いたが、態度には現さなかった。


「僕はランデイヤだよ……しかし何故死にたいの?」


 ランディはひなたが普通の人間でない事を察知していた。

(あの、異様なほど強かったゾンビと同じタイプか……今回のゾンビは独りで来たのか……それなら……)


「第5レベル呪文……トゥルーサイト……」


 ランディの頭の中にひなたの情報が浮かび上がった。


 《前庭ひなた、女性、エルダーゾンビ、レベル13 HP923 年齢24》




 ランディがひなたを調べている最中、ひなたは何故死にたいのか、教えてくれた。


「私は生きたまま死人(ゾンビ)になってしまったの……そして、私は人を食べなくては正気を保てなくなりました。断食もしました……でもそうすると意識を失ってしまい、その間にもたくさんの人を食べました。もう……人を食べるのは嫌なの……お願い……私を殺して……」


 そして、ひなたは意識を本能に譲った。

 今のひなたは指を折ろうする動作で、自由に意識を手放せるようになっていた。


「ヴォォォォォォォ」



  ~敵プロフィール~


 エルダーゾンビひなた レベル13

 HP 923

 格闘 C

 噛みつき E

 装備 只の服



 ランディは事もあろうか、ゾンビと素手で戦う選択肢を選んだ。



 ひなたは凄まじい速度でランディの頚部に噛みつきにかかる……


 ランディはひなたの速い攻撃すら、遅いと言うかの様に余裕を持って、掌底突きをひなたの側頭部に当てる……


 しかしランディの攻撃はすり抜けた。

 ひなたは噛み付き攻撃はフェイントで、ランディに足払いを仕掛けてきた。


「何っ?! うわっとと……」


 ランディはバランスを崩したが辛うじて足払いを避けた。


 ひなたはこの動きも読んでいたかの様に追撃してきた。


「ぐぁぁ……」


 ランディはひなたの攻撃を身体ごと回転して、いなす。

 更に反撃の拳をひなたに撃ち込んだ。

 ランディは避ける動作がそのまま攻撃に繋がる事が多くあった。



「お兄ちゃん凄い……」

 マーニャはランディが倒れた体勢から大型スケルトンの猛攻を(ことごと)く避けていた昔を思い出す。


 ひなたのフェイントを散りばめた多彩な攻撃に驚くランディであったが、攻撃方法の引き出しはランディの方が多かった。


 しかしひなたは通常攻撃は殆ど効かない身体で、頭部はきっちり守っている……


 このまま続けばランディの体力負けかも……香織達が思い始めていた。



 しかし、ランディには疲労の影すら訪れない……しかもランディは超高位のクレリック、武器を使用しないでも、ひなたにダメージを蓄積させていった。


 それでもひなたは、怯む事を知らず……戦いながら、塵となったゾンビの近くにあるバットを手にして、ランディに襲いかかった。


 しかし襲いかかった瞬間、ひなたは何かに足をとられる……


 ランディが使った物は、渡から物々交換で手に入れた『ゾンビハンド』だった。


 ひなたほどの力が有れば『ゾンビハンド』を壊す事は容易い……だが、その壊す隙をランディは逃がさなかった。


 ひなたの頭部にランディの掌底突きが決まった。


 それでもひなたは、絶命には至らないが、エルダーゾンビとしての本能は消え去ってしまった。


 身体の支配権を、取り戻したひなたは話始める。

「やっと、死ぬことが出来るのね……ありがとう……ありがとう……」



 ランディは、

「止めを刺す前に……最後に君がエルダーゾンビになった前後の話を聞きたい……」

 と言ってきた。


 ひなたはすべて話した。


 そして、最愛の家族(おとうと)を食べた事まで……

 どんなに人を食べるのが嫌でも、結果的に食べてしまう事を……


 それが、正常な心を持ったまま、人間を食べる事が、どんなに辛いかみんな理解してしまった。


 更には、少しずつ怪我等で醜くなっていく身体も、若い女性であるひなたにとって、耐えがたい苦痛であると教えてくれた。



「解った……ひなたさん……苦しまないようにしてあげる……第4レベル呪文……リバース……コーズデス」


 この呪文はランディの蘇生呪文『レイズデッドLVⅠ』リバーススペルで、対象に直接『死』を与える呪文である。


 そして、呪文と共にひなたに触れるランディ……


「あ……あ、ああああああっ!」


(な、なんてすと?! エクスタシーを迎えた様な色艶のある悲鳴は?)


 ランディの『死』の呪文はひなたを回復させていった。


 無数の傷は殆ど回復して行き、失われたHPも半分近くまで復活していた。


 そう、ランディの『死』系統の呪文はアンデッド系のモンスターを回復させるのだった。

 


 自分の状態を見たひなたは

「最後に綺麗にしてくれてありがとう……そして……快感まで……」


 少しモジモジした後、もう思い残す事は無いと『死』を催促した。



(困ったなぁ、一応死んでもらうつもりで使った呪文だったんだけど……でも、後は食料問題だけ……何とかしてあげたい……何とか……)



「ひなたさん……これでもし駄目だった、本当に殺してあげるよ……だから少し試させて……」



「? ?」

 ひなたはランディが何を言っているか理解出来ていない……



 ランディは自分の腕を剥き出しにして、自らの腕を噛み千切った。



 ひ「なっ?」

 リ「えっ?」

 か「ちょっとランディ?」

 マ「お兄ちゃん!」


 みんなが驚く中、ランディ噛み千切った部分を咀嚼して飲み込んでしまった。


「……第1レベル呪文……ライトヒール」

 ランディの腕は綺麗に治ったが、さらにランディは呪文を続ける。


「第5レベル呪文……クリエイトフードフリー」


 そこには大量の生肉と、パンが出現した。


 その生肉の塊を見て、香織とマーニャは気づいた……ランディが何をしようとしているかを……


「あ、あ、お兄ちゃん?! まさか……」

「ランディ……でもそれって、あの人を……」


 ランディは2人の言葉を遮り、ひなたに向かって話す。



「ひなたさん……これは僕の魔法の食料です……死ぬ覚悟をする前に……これを食べてみてくれませんか?」


 ランディは生肉を一切れ、ひなたに手渡した。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ランディと言われている人から、試しに生肉を一切れ貰った……ごめんなさい……私は人の肉以外は受け付け無いの……


 でも……でも、その肉を見てると、何故か食欲が湧いてくる……。

 私は意を決して生肉を受け取り、それを口に含んで咀嚼した。


「ん~~~~~~っ!?」


 な、何!? 今まで食べた人の肉より数段美味しい! な、なんなの此は……


 私は無意識に『も、もっと頂戴』とおかわりを要求していた。


 美味しい……美味しい過ぎて涙が溢れてくる……しかも、受けたダメージも回復している上に、力が溢れる様な感覚まで覚えた。


 あのランディって人はいったい……そう言えば私の事を『エルダーゾンビ』って言っていたわね……

 彼は私の生体にも詳しい、たがら私の食べれる物を知っているのかも知れない……


 私は沢山の生肉を食べながら考えていた。


 すると、ランディが私に語りかけて来た。


「ひなたさん、この肉は食べられただろ? だから『死にたい』だなんで言わないでくれ……僕ならこの肉をいつでも出現させる事が出来る……そして怪我も治す事が出来る……だから、僕と一緒に来ないか?」


 ランディが私に手を差しのべて来た……


 こ、これってプロポーズ!?


 私達たった今、出逢ったばかりなのよ?


 でも、顔も何となく好み……しかも、私を独りで倒せるくらいに凄く強い人……


 よくわからないけど魔法みたいなのも使える……


 プロポーズは了承し難いけど……差し出された手を握るくらい良いよね?


 

 私はランディの手を取った……あ……なに?……暖かい……それに気持ちが良い?


 私はゾンビになってから失われた感覚まで取り戻したの? でも気持ち良いって何?


 この人だから……?

 この人のは運命の人なの?


 試しに、(ランディ)の近くにいた青髪の可愛い女の子に触ってみる……変化はない……(ランディ)に触ってみる……あっ気持ち良い……やっぱり彼は特別なんだ……運命の人なんだ……


 そう、逢ったばかりとはいえ、今まで出会った誰よりも強く、人を食べなくては生きていけない地獄から救い出してくれた……しかも顔も好み……

 そして、彼だけが私に人としての感触を与えてくれる……


 迷うこと無いわね……


「不束者ですが、よろしくお願いします」


 私は(ランディ)のプロポーズを受け取った。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 余った魔法のお肉は、マーニャちゃんが持っていた『次元弁当』に入れてくれた。

 初めのうちは、渋っていたマーニャちゃんだったけど……何かランディに言われてから、鼻息を荒くしてランディに『次元弁当』を渡していた。


 魔法をのお肉は、焼いても、湯がいても、美味しく食べれた……本当に不思議なお肉ね……。

そして、食べる度に力がみなぎる。



 実はランディのあの言葉は『プロポーズ』じゃ無かったらしい……2人の……マーニャちゃんとリリスちゃんから猛抗議を受けた。


 名前からして、香織ちゃん以外は日本人じゃないのかな……みんなとっても日本語が上手だけど日本育ちなのかなぁ。

 ランディに聞いたら、みんな異世界からやって来たんだって……香織ちゃん以外は魔法を使って教えてくれた。


 ビックリしたけど、私の存在事態がビックリなので問題無いかぁ。



 こうして、私はランディと共に生きていく事になりました。


 Fin



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