104#ギースVSアーサー(キンジの異世界奮闘記8)
おれの名前は『マジックユーザーキンジ』だ。
今 おれは『キンジ無双』発動中だ。
おれとゾンビで1対2の戦闘中だ。
少し前まで1対1でヒィヒィ言っていたが、今は余裕余裕。
得意の『ファイヤーミサイル』2発で、ゾンビを1体退治したら、肉弾戦で残りを倒す。
でも、たまに倒れないゾンビもいるから、その時は超必殺技『アーサーさん助けてぇ』を使う。
1対1なら10分くらいかかるけど、もうおれの敵じゃないな……
そんなある日、おれは急に体調を崩した。
カーズさんがおれを見て呟く……
「もしかして……ゾンビのウィルスに侵された?」
まじぃ?!
あの映画で、やるような感染ってやつっすか?
おれが世界を席巻する日は?
「カーズさぁぁぁぁん……」
おれはカーズさんに泣きついた。
カーズさんがアーサーさんに質問した。
「アーサー? 今日のクレリック呪文は?」
「ライトキュア シリアスキュア 覚えてる でも キンジの 唾液 要らない」
~アーサーは対象の唾液を接種する事で、大体の病状を把握できるのだ~
「あぁ、大丈夫。ゾンビウィルス程度なら ライトキュアで治る……ってゾンビウィルスでぶっ倒れるなんて……やはりこの世界の人間は脆弱だな……」
この2人は、ゾンビ菌は効かないんですか?人間ですか?
なんて見つめていたら……
「第3レベル呪文……ライトキュア」
アーサーさんが僕に回復呪文をかけてくれた。
身体に力がみなぎってきた……自分でも治ったと実感出来るくらいに……
「アーサーさん、ありがとうございます! しかしアーサーさんってホント何でも出来ますね……」
いや、ほんとアーサーさん1人いれば何も要らないくらいに凄いですよ……おれ、カーズさんの弟子だけど……
「俺 ランディ 比べる 赤子 同然」
あっ時折聞く、カーズさんのお兄さんの話しだ……あの2人が誉めちぎるって、どんなの? 興味あるなぁ……
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おれたちは、ひさしぶりに生きている人間を見つけた。
しかも、大人数だ……エンジンの音がしない車があり、それに巨大な荷台を牽引させている。
おれ達を見ていた銀髪のハンサムと言うか、美人と言うか、そんな男が数歩こっちに、歩いてきて、
「お前らは勇者か?」
と聞いてきた。
ん? 勇者? なんの事だ? まさか……アーサーさんの事かな?
おれはアーサーを反射的に見てしまった。
銀髪の男は
「お前か……フレア」
といって大きな炎の玉を飛ばして来た。
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嵐山節子side
節子から今日の未来が見えないと言われ、何故か心踊る自分がいた。
そう、今の私は退屈だったのだ。
そして、3人の人間を見つけた。
『3人の人間』と言ったが、内2人の内包しているオーラは人間とはかけ離れていた。
私は質問した「お前らは勇者か」と……
3人のうち、あきらかに小者な男が『勇者』の言葉に反応して、大男を見る……
そうか、こいつが勇者か……たしかに見ただけで強敵と判る……
私の覇道の邪魔はさせない……
「お前か……フレア」
瞬間大男が前に出たせいで、フレアの炎は大男独りで、受ける事となった。
やったか? しかしこんな物か? だとしたらつまらないな……
炎が消えると、大男が長棒を持って笑っていた。
効かない? やはり勇者か……
「この炎 貫通力 有る しかし 攻撃力 無い」
何を言っているのか意味が解らんぞ……と考えていたら、一瞬でこちらの間合いに踏み込み棒を振ってきた。
「むっ速い!」
びしぃぃぃぃぃん…………
な、なんて威力なんだ……私の『ジャッジメント改』で完璧に防いだ物の、大気が震えたではないか……
「「ほう……」」
偶然にも大男と同じ言葉を発する。
面白い……
「我が名はギース、貴様は?」
大男は答えてくれた。
「俺 アーサー 次 もっと 重い」
あの男の片言の言葉が、更なる攻撃を加える事を示す。
しかし私の『ジャッジメント改』は無敵だぞ?
ん? 無敵……その傲りが前回の敗北を産んだのではないか……
アーサーの攻撃は正確に『ジャッジメント改』の、弱い部分……綻びを狙って来た。
「くっ……」
咄嗟に綻びの位置を変え衝撃に備えた……
バシィィィィィィィン!!
実際私には何のダメージも無いが、ゾクゾクする程の威力だと判る。
あの男の連続攻撃の合間にフレアを放つ。
「フレア!」
しかしあの男は物ともせず、攻撃を繰り返す。
「フレアを受けて平気なのか?」
「ダメージ 蓄積 してる」
本当か?
私はノーダメージ、あの男は少しづつだが、フレアのダメージが蓄積している。
圧倒的に有利と思えるが、そうではない……あの男の激しい攻撃で、我が両手は殆ど防御に費やしている。
私もギリギリの所で『フレア』を放っているのだ。
それに……なんだ? あの男喜んでる? 馬鹿な……
「第1レベル呪文……マジックミサイル」
あの男から光球が4つ出現して、飛んできた……判るこいつは脅威じゃない……
バシュバシュバシュバシュ……
光球を防ぎきった瞬間、鋼鉄の棒が迫り来る。
アーサーはマジックまミサイルを目眩ましに使った
。
「し、しまった! ……ぐあああっ!」
凄い衝撃と痛み……だが今がこちらも好機だ……
「フロストォ!」
そして、我が爪を喰らえ!
「はぁぁぁっ」
私のフロストで、凍ったあの男に爪を突き立て粉々にする……するはずだったのだ……
あの男は、粉々に成らずそのまま攻撃の体勢を取っていた。
ま、不味い防御だ!
「王神流奥義……刹那」
速い!避けられん……
「くっ、ごはぁぁぁぁぁっ」
それでもギースは僅かにヒットポイントをずらして、ダメージを軽減するが6mくらい吹き飛んだ。
ぐっ……思いがけず私の肉体の耐久度が高い事が判ったし、距離も出来た……今度は私の番だ!
「フレア!フロスト!フレア!フロスト!フレア!フロスト!フレア!フレア!フロスト!フロスト!フレア!フレア!フロストッ!!」
ふっふふっ、どうだ?
しかし、そこには黄金の鎧を身に纏った大男がいた。
恐らくあの男だ……
まだ生きている……瀕死なのか、ダメージはほとんど無いのか、どちらなんだ……
判らないが……私はここで命をかけて挑まねばならん程の相手だと解った。
いくぞ! と思った瞬間
「お待ちください」
「待った!」
と節子とあの男と一緒にいたもう1人の男が割り込んで来た。
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あの銀髪イケメン男……まさに魔王と要って良いような出鱈目な強さだ、あのアーサーさんの鉄棒を完璧に防ぐ何て初めて見た……
「7・8・9・10……くらいか? スゴいな……」
はっ?何言ってるんですかカーズさん……
「ほぼ間違いない……あいつが召喚されたと見て間違い無いだろう。あいつから召喚主を聞くから、キンジ割り込め!」
「無理ッス! 瞬殺されますよ? もう少しおれを大切にしてくださいよっ」
カーズさん酷い、酷すぎます。
「むっ?」
カーズさんが真顔で戦いを見ている。
おおイケメン魔王が吹き飛んだ……うわっ今度は炎の玉がぁ……アーサーさんにぃぃぃ……
「ゴールドオプティマイザー!」
アーサーさんが何か言った途端に大量の火の玉と氷の礫が降り注ぐ……
ヤバイ……ヤバイよぅ……
ついカーズを見る……ん? ソワソワしてる何故? ………………あっ……ああぁぁぁぁぁ!
爆炎から出来たのは黄金の全身鎧と黄金の巨大な盾を装備したアーサーさんがいる。
ゴ、ゴールドセ○ントだぁぁ! カッケー、メガカッケー!
「カーズさん、アーサーさんゴールド聖衣なんて持ってたんすか? スゲー」
カーズさんは呆れ顔で
「なんだそりゃ? アーサーの鎧は『オムニポテントメイル』だ……あれに対抗出来る武器は、私でも4つしか知らない……それよりっ!」
カーズさんがダッシュで2人の戦いに割り込んだ。
「待った!」
カーズさんがイケメン魔王を、中年オバサンがアーサーさんを止めに入った。
アーサーさんは素直にオバサンの言うこと聞いて元の姿に戻った。
そして、イケメン魔王もカーズさんのエグイ交渉で大人しくなった。
何て言ったと思う? 『これ以上戦うなら、全力のアーサーと私が相手になる』だって……
今までどんな化物相手でも、本気のアーサーさんを見る事なく倒してきたのに……
2匹の猛獣が大人しくなったら、カーズはオバサンに話しかけた。
「このギースさんを召喚したのは貴女ですね?」
えっまじ? そうなの?
オバサンも答えたみたい。
「はい……そうですが、貴殿方はいったい何者なのでしょう……全く見えません……」
困惑顔のオバサンだ……
カーズさんが嬉しそうだ……
「私の名前はカーズです、聞こえていればもう知っているでしょうが、あいつがアーサー、そこの玩具はキンジだ」
はぁ……玩具か……やっぱりおれその程度の価値しかないのか……
「召喚主に告ぐ、私達はそこのギース召喚に、巻き込まれてこの世界に来た者だ……我々のルールに則り、宴会の開催を要求する!」
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こうして、カーズさんの無茶苦茶な要求はあさっさりと通り、宴会となった。
アーサーさんとギースってイケメン魔王が、仲良く話している……
おれ、あのイケメン魔王の事がスゴく怖いんだよな……暫く一緒に居たら魅いられそうなんだよ。
カーズさんは3世界ぶりに、召喚主と宴会をして、楽しそうだ。
……
…………
………………
アーサーさんが1人になったので色々聞いてみた。
カーズさんが言っていた数字の謎と、ゴールド聖衣に対抗出来る武器を……
アーサーさんは ギースの特殊防御膜が、プロテクションリング+5の2個分の防御膜が有るって教えてくれたさらに、魔法レジスト効果も有るって、やっぱ『魔王』だわ……
そして、武器については3つしか知らないって。
一本目、カーズさんの『神殺のダガー』。
二本目、ガルって人の『神刀アマテラス』。
三本目、ランディさんの『ゴットメイス』。
だそうだ……全員身内じゃんか!
と、突っ込み入れていたら、『在神教』の人々に捕まった。
宴会だから騒げと厳命されているのだけど、アーサーさんとカーズさんは何となく怖いそうです……解りますよそれ……
こうして、おれは吐くまで飲まされた。
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追伸、暫く在神教の人々と一緒に暮らしていたが、突然カーズさんが『あっ』と大きな声を出した。
そして、次の言葉はこうだった。
「ガルとの待ち合わせの約束……忘れてた」
だった。




