103#ランディVSエルダーゾンビ学
ランディside
リリスが突然倒れた……
症状は貧血に似ていたが、それにしては少し状態がおかしい……そして、一番異常なのは、現地の助けた人間達の対応だった。
「ま、まさか……」
「そのまさかだよ……あの人と同じだ……」
「怪我は? 何か変な物を口にしなかった?」
とざわめき出した。
ぐったりとしていたリリスは力無く答えた。
「あ……そういえば初めてゾンビさんを倒した時、口の中に何か入った様な気が……」
それを聞いて、現地の人々は一様に青ざめ顔を下げた……
「あの……ランディさん……でしたよね、非常に言い難いのですが……あの子はもう……」
「それでですね、あの子がゾンビなって皆さんを襲わない内にあの……そのですね……なんと言うか……」
現地の人たちは、リリスがゾンビになってしまうと確信していたが、命の恩人にリリスを見捨てろとは言えないでいた。
ランディはこう言った。
「リリスたんを、見捨てろ。と言いたいのか?」
「あ……その…………はい……」
ランディは首を横に振り、
「それは出来ない」
と言った後、誰にも聞こえない程の小声で、
「信じてるぞランデイヤ」
と、自分に言っていた。
「皆さんとは、ここでお別れですね。食料もだいぶ有ることですし、みんな頑張って下さい。 リリスたん、行こう……」
「え? うん……」
リリスが、頑張って起き上がろうとする。
ランディがリリスを抱き上げて、呪文を唱えた。
「第3レベル呪文……ライトキュア」
すると、リリスの顔に赤みが戻ってきた。
「リリス、どお?」
「リリス、治った?」
マーニャと、香織も心配して体の具合を聞いてる。
リリスは自分の手を、にぎにぎしながら
「うん! 治った……と思う。 ランディもう大丈夫だよ、もう歩けるよ……ランディ? ……あっ……」
お姫様抱っこされているリリスはランディの瞳が潤んで揺れているの見た。
「リリスたん、もう少しこのままで抱っこされていなさい……」
「うん……」
(有り難うランデイヤ……僕、スーパークレリックで本当に、本当に良かった……)
ランディは自分の能力に、これ程感謝した日は滅多に無い。
数刻程で、いつもの調子に戻ったランディは、
「あっマーニャ、あの三バカ(社員組)どっかに棄てるから、このリヤカーで回収してくれない?」
「え~っ、あっ……ねっお兄ちゃん、私にもあの抱っこして」
ランディも、やれやれと思いながら
「うん良いよ。手が空いたらしてあげる」
と言った。
……
…………
三バカを空き家に放り込み、段ボール1箱分の食料と水をを置いていった。
念のため三バカには、気絶してもらった。
運が良ければ暫く生き延びるだろうとランディは言う……でも、ランディの顔はニヤケ顔だった。
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ランディ達はホームセンターに、到着した。
ランディはここで人払いをした。
「みんな……悪いんだけど、暫く僕を独りにさせてくれ」
マーニャとリリスは理由を聞いたが、教えて貰えなかった。
でも香織には大体の予想はついていた。
……
…………
………………
◇ホームセンターのリフォームコーナー◇
ランディはハンマーを肩に抱えて、雄叫びを上げた。
「これで僕の夢がまたひとつ叶う……」
深呼吸したランディは雄叫びをあげた。
「ウリィィィィィィィィ!!」
ドガン! ドゴン! バギャン!! メキメキ! ゴシャァ! バガン! グシャッ! メキャ! バリィィィン!!
「はぁはぁ……だ、第1レベル呪文……リカバー」
そこにはランディが徹底的に壊した筈の、ユニットバス(魔法瓶方式)、 システムキッチン、ホーロータイル、人造大理石、物置小屋、物干し台、大型ポリバケツ、大小の脚立、収納式三面鏡、等多数が、ランディの呪文3回分で全てを修復してしまう。
そう、ランディ『リカバー』で修復出来た物品は、これまたランディの『クリエイトアイテム』で再現可能なのだ。
その後ランディは奇声を上げながら、寝具コーナーまで走っていった。
……
…………
………………
「コホン……皆さんお待たせ致しました。さあ度を続けましょう」
その後、ランディの破壊活動は多種多様に及んだ。
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ランディ視点
聖水入りの水風船や瓶をカートで、ガラガラと運んでいると、ゾンビ達がワラワラやって来る。
もしかして……音に敏感なのかも知れないな……と思っていると、ゾンビではなく人間4人の一団を見つけた。
外で見かけるのは初めての事だ、しかし……男1人と女3人の組合わせ……僕と一緒じゃん。
僕の中で急に仲間意識が芽生えた。
声を掛けよう。
一団のリーダーの名前は荒波渡。
この一団はなんと、ゾンビに対して逃げる事しかしてなかった人間達と違い、道具を持って対抗していたのだ。
特に興味を持ったのは『ゾンビネット』に『ゾンビハンド』この2つの構造は素晴らしい……
ゾンビの特性を生かして、上手く無効化出来る様に作られている。
しかも再利用可能な仕組みになっていた。
僕はゾンビを大声で呼び出し、聖水の力を見せつけ、手持ちの聖水と『ゾンビネット』と『ゾンビハンド』を交換した。
いい買い物したね香織ちゃん……あれ? 香織ちゃんジト目なんですけど何か?
ランディは暫く楽しい旅を続けていた。
そんな楽しそうなランディ達を、双眼鏡を使い遠くから見ている者がいる。
「ほう、ハーレム発見! 裏山だねぇ……男は美味しく食べて、女は下僕にするか、死ぬか選ばせてみようかなぁ……」
その男の名は『大学学』
ひなたと接触したエルダーゾンビだった。
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ランディはバットと繊維ロープを持った異色のゾンビ軍団と遭遇した。
しかもゾンビ軍団だろうはランディ達を前後で挟み撃ちするように出現した。
その数なんと約40体。
「香織ちゃん、リリスたん、マーニャ、いつもと様子が違う、警戒して! 香織ちゃん前方のゾンビにスクロールを使って、僕は後方!」
香織はすぐにマジックスクロールを取り出し、呪文を唱えた。
「大気中の酸素よ、我が魔力と交じり合い爆炎の刃と化せ……ファイヤーボール」
ランディもゾンビの浄化を実行する。
「死に属する者よ、無へ帰れ!」
香織の『ファイヤーボール』で前方のゾンビは全滅したが、
後方のゾンビは16体までしか浄化されず、残りの5体が襲い掛かってきた。
この様子を、見た『エルダーゾンビ学』は事の異常さを察知して撤退しようとしたが、この行動がゾンビの潜在本能に抵触した。
ゾンビは本能的に、目の前の食べ物を諦めたと誤認して、学の意識が飛んだ。
そして、ランディ達と戦闘しているゾンビが2体に迄減った時『エルダーゾンビ学』が乱入した。
「ゴルルルルルルァァァァァ!」
ランディは迂闊にも、このゾンビが強敵と感じて喜んでしまった。
「みんな! このレア物は僕が貰った! 残り2体を頼むっ」
リ「わかった!」
か「わかったわ」
マ「わかったよ」
~敵プロフィール~
エルダーゾンビ 学 レベル17
HP 1211
格闘 C
噛みつき E
装備 フォーマルスーツ
ランディは武器と言える武器は殺傷能力の無い『第六位契約神器・ぴこっとはんまぁ』のみ……一応この世界のバールを1本自賛してきたが、素手で向かってきたエルダーゾンビに対して、ランディは力比べをしてしまう。
ゾンビの力強さにランディは歓喜する
「やるなぁ君……だが……鍛え方が足りないっ! ふんっ!」
ランディはエルダーゾンビを力づくで転がす。
既にゾンビを倒し終えてランディの戦いを観戦していたマーニャが、
「君とか鍛え方とか……お兄ちゃん、相手がゾンビって事忘れてない?」
香織も
「忘れてるわね……」
と言う。
倒れたゾンビに対してランディはバールをエルダーゾンビの頭を狙い降り下ろす。
エルダーゾンビは大袈裟に体を動かしたため、肩に直撃する。
だが頭部以外の破壊は、エルダーゾンビにとって致命傷にならない……
激しい攻防の中、ランディがエルダーゾンビの胸を刺し貫いた。
しかし、それはエルダーゾンビの罠だった。
わざと胸を貫かせた隙をついて、動きの速いランディを捕らえる事に成功した。
そして、エルダーゾンビの牙がランディに突き刺さる。
「「ランディ!」」
「お兄ちゃん!」
「やるなぁ、ふん、ふん、ふんっ!」
ランディは腕を振り回た。
エルダーゾンビは一噛みしただけで引き離される……しかも肉を服ごと咀嚼するはずだったのに、ランディには歯形しか付いていない。
ランディに決定打は無かったが、約10分後にはエルダーゾンビの頭部を残したまま、ランディは勝利した。
滅びゆくエルダーゾンビに、理性が戻る。
「兄ちゃん強いなぁ……しかもこれから死ぬってか分かってるのに、身体が暖かいや……ははっ、死ぬ直前なのに何だこの幸福感は……なぁ兄ちゃん……あんたもしかして天使かい? ……まぁ、何でもいいか……兄ちゃんありがとな……」
こうしてエルダーゾンビは塵になって消えていった。
(今のゾンビ、最後に理性が有ったよな……トゥルーサイトを使っておけばよかったな)
「お兄ちゃん、今のゾンビ……不思議だったねってお兄ちゃん噛まれた所大丈夫?」
「ランディ、怪我は? ランディも回復呪文使って」
「ランディ、大丈夫?」
僕は噛まれてた箇所を見ていたが、不思議と感染していない、そう直感した。
「ん、たぶん大丈夫……念のために、明日はライトキュア2回覚えておくよ」
僕はこの戦いに満足していた。
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そして、この様子を遠くから、見ていた1人の女性が居た……
「見つけた……ついに見つけた。私を殺せる人を……これでやっと死ねる……この地獄から解放される……」




