101#動き始めた運命
登場人物紹介
『嵐山大佐』ゾンビ映画の愛好家? 上官の指示を無視した成果が茨城県の某所一帯を守る結果となった。
『嵐山節子』在神教の教祖で超能力者らしい。親しい人々からは『狂気の予知姫』と呼ばれている中年女性。
渡side
『荒波渡』100万分の1の確率で抵抗者となった。
『前庭ひなた』100万分の1の確率でエルダーゾンビとなった。
『崎守岬』渡に助けられた若者。
『鈴城美鈴』渡に助けられた若者。
『古都成誠』渡に助けられた若者。岬に気がある。現在死亡
『北野優樹菜』渡に助けられた歳上の女性。渡に両親の死を教えてくれた。
ひなたside
絶望と言う名の出口の見つから無い、長い長いトンネルを歩いていく……
そんな日々を歩いて行く中、私は稀有な存在に出会った。
そう……私は同類に出会った。
切っ掛けは、私の支配しているゾンビ以外で、器用な動きをしているゾンビを見つけたからだ。
その同類はスーツ姿に運動靴といった異色な姿をしていた。
「女のスーパーゾンビか……まだ綺麗で良かったわ」
同類の言っている意味が解らない。
私の体や顔には幾人もの人間達と戦った結果、たくさんの傷がついていた。
「どういう事? 私達の他にも同類が居るの?」
「ああ、1人見つけた。『卓也』って奴……しかしかなりムカつく奴でさぁ、親の見ている前で子供を生きたまま食べるわ、生き残った方を助けるって言って恋人同士に殺し合いさせるとか、俺が奴を殺してやろうかと思ったわ」
「思ったって言うからには、殺してはいないのね?何故? 強かったの?」
同類は複雑な表情をして話してくれた。
「俺は……いや俺達は同類とは戦えない仕組みらしい……だから……君の望みは叶えられない」
そう、私は同類と出会って直ぐに『殺してくれ』と頼んだのだった。
だが、それも叶わない望みだと知った。
「君も、人間を食べるのに未だに抵抗があるみたいだけど、早く割りきる事だな……要は、慣れだよ慣れ。あとさっ、頼みが有るんだが……手を繋いじゃくれないか?」
同類の言葉の意味は解らないけど、手を繋ぐくらい問題ないわね。
同類と手を繋ぐ……
「ん……」
あ、なんか力が溢れ出した気がする……
「ねぇ、これってまさか……」
「ああ……俺達は今、少しだけ強くなった……徒党を組んだ人間の中には、かなり強い者もいた。だからパワーアップしておきたくてね」
なんて事なの……また死ににくくなるじゃないの!
私がムッとしたのがバレたのか同類が耳よりな情報を貰った。
「そんなにスリリングな生活が好きなら、東に……茨城県に向かって行くと良いよ……あそこには纏まった軍隊が今も機能している……まあ、嫌な奴もあそこの人間たちが狙いだから、かち合うかもなぁ、まあ、俺もそっちに見学に行くんだけどな」
こうして私は不本意なパワーアップを果たし、東に行くことにした。
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嵐山大佐side
◇研究室◇
研究グループのリーダーが、ある研究結果に頭を抱えた……
「なんてこった……まさか『抵抗者』の精子にこんなにも強い坑ウイルス作用があったとは……」
『被験者A』の血液25ccで、人間1人分のワクチンの代わりになるのに対し、精液なら5ccでその役割を果たした。
「こんな、実験結果になるなんて、もう少し生かしておけば良かったかな……」
しかし気づいた時は『被験者A』の臓器や脳まで調べ尽くした後だった。
しかも冷凍保存すると、ワクチンの効果は失われていた。
研究者の幾人かは、要人向けに生きた実験体が欲しいと考えていた。
◇嵐山大佐、執務室◇
この日 嵐山大佐の元に、初めてと思われる凶報が届いた。
その内容は、農地拡大のために展開していた、兵士○○班5人が行方不明になっていたのだった。
彼ら5人は其々ゾンビ対処法は知っていた筈である。
嵐山大佐は至急10倍の兵力と装甲車2台を投入した。
そう、遂にエルダーゾンビが嵐山大佐の勢力圏に、やって来たのだった。
『卓也』と言う名のエルダーゾンビは、兵士を尋問していた。
「生きたまま喰われるのと、人として死ぬのと、どっちを選ぶんだ? ああっ?」
生き残りの兵は統率されて動いていたゾンビを見て驚いたものの、このエルダーゾンビ『卓也』を知った時は、統率されて動いているゾンビなど可愛い者だった。
このゾンビは会話が出来るだけでなく、頭が良く、狡猾で残忍だった。
そして、エルダーゾンビ『卓也』は嵐山大佐の情報を欲していた。
「た、助けてくれ……」
命乞いをして、助けを乞う兵士に『卓也』は嫌気が差した。
「ああっ面倒くせぇ、もういいや……生きたまま食べちまおう……」
『卓也』は日本刀を振って兵士の片腕を切り落とした。
聞くにも絶えない悲鳴が響く……
「よしっ、お前らも喰え!」
『卓也』の支配下に置かれていたゾンビは漸く本能のまま人間を食べる事を許された。
『卓也』は
「さぁ同じ目に遭いたく無きゃとっとと知ってる事全部話な」
と言った。
「は、話す……だ、だから……助けてくれぇ……」
『卓也』はやれやれといったジェスチャーをしてから、兵士に話した。
「バカだなぁお前を解放したら、俺の事バレちゃうじゃん……相手が軍隊なのにそりゃぁ無いわぁ」
「わかった誰にも喋らない……だ、だから助けてくれっ!」
「バカだなぁ……そんな言葉誰が信用するんだよ? しょうがねぇ……今は満足してるから、もう一度ゆく考えな……」
と言って『卓也』この場を後にした……
『卓也』は、狡猾、残忍、しかも嘘も付くが、約束したことに関しては何故か守ろうとする。
だから、迂闊な約束はしない……それても人でなしと言われるくらいは嫌な奴ではある。
1日空けて、戻った頃……
最後の兵士は『全て話すからゾンビにしてくれ』と懇願され、それを了承した。
『卓也』は生きたままゾンビ化した場合、腕力が生前の約2倍になると、考えていた。
従って、強いゾンビ1体と嵐山大佐の情報を手に入れて、茨城県某市に攻めた。
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渡side
渡は、岬、美鈴、優樹菜と4人で、旅をしていた。
しかし、もう宛の無い旅ではない……渡は少しだけ広い無人の農地を見つけ、自給自足計画を進めていた。
渡は、コンビニ、ドラックストア、スーパーから食料を貰う事に、近い将来まで視野に入れると、2年持たないと考えていたからだ。
今渡のやるべき事は、ホームセンターで野菜の種や苗木、果物の苗木を見つけ『農地』で育てて、新太陽光発電のある施設で生活する……さらに、コンビニ、スーパーの、施設を加えた区間のゾンビの駆除、徘徊しついるゾンビが近づかないように、バリケードを作成も考えた。
今ある食料を食べる事しか考えてなかった美鈴、岬の瞳は♡マークを浮かべていた。
しかし、優樹菜は渡の能力をこの小数で独占することを勿体ないと感じていた。
渡なら、大集団のリーダーになれる筈なのにと……
ある日渡は、異様な姿をした4人組と遭遇した。
内2名は外国人のようだったが、言葉は完全に日本人だった。
4人組の内、男は1人だけでその男は渡のゾンビネット、ゾンビハンドの2つに感動して、物々交換を要求してきた。
男が、用意したのは2種類、1つは大きなサイズのカロリー○イトと、もうひとつは、ガラス瓶と水風船だった。
中身は聖水だと胡散臭い事を言っていたが、ためしにゾンビに投げたら2発で動かなくなって灰になってしまった。
渡はこの人の事をバチカンから来た本物の牧師だと勝手に認識した。
こうして、お互い『うぃん、うぃん』な取引が完成して、彼らは去っていった。
渡は100人前のカロ○ーメイトと100発分の聖水を、手に入れた。
渡の出会った4人組が、物凄い常識ハズレな人物だと言う事を、渡はしらなかった。




