97#case3・嵐山大佐(らんざんたいさ)
登場人物紹介
『嵐山大佐』ゾンビ映画の愛好家? 上官の指示を無視した成果が茨城県の某所一帯を守る結果となった。
『嵐山節子』在神教の教祖で超能力者らしい。親しい人々からは『狂気の予知姫』と呼ばれている中年女性。
渡side
『荒波渡』100万分の1の確率で抵抗者となった。
『前庭ひなた』100万分の1の確率でエルダーゾンビとなった。
『崎守岬』渡に助けられた若者。
『鈴城美鈴』渡に助けられた若者。
『古都成誠』渡に助けられた若者。岬に気がある。
『北野優樹菜』渡に助けられた歳上の女性。渡に両親の死を教えてくれた。
◇茨城県某市、市役所◇
この都市は、嵐山大佐の体規模なゾンビ封殺作戦が成功した都市で、電気は勿論の事、水道代、ガス欠有線電話のライフラインが確立されていた?
そして、テレビも1局だが、2チャンネル分放映されていた。
そして、制圧後たった2週間で、自給自足の目処を立てた。
そして、今日も嵐山大佐は、復興支援に向けて働いていた。
「嵐山大佐、報告です。」
「うん、今日はなんだ?」
「はい、携帯電話使用可能になりました。まだEメールと通話昨日だけですが、より一層便利になりますね」
「それと、科学部から2つの報告が入っています。」
「よし、話せ。」
「ゾンビウイルスのワクチンは今の設備では、製造不可能との報告です」
「そうか」
「次は……………………えっ?」
報告者は紙をめくりながら、驚きの肥をあげていた。
「なんだ? どうした?」
「えっ?あっ、はい……その、ゾンビに襲われて怪我をした1名の男性が……か、回復しました」
「何だとっ! 本当にゾンビに襲われた怪我なのかっ?」
ゾンビの生態をある程度理解している筈の嵐山大佐もこの報告には驚く。
「はい、間違い無いそうです」
「もしかして、彼を使いワクチンを作れるかも知れないな」
「はい、それでは科学部に引き渡しましょうか?」
嵐山大佐は悩んでいる様だった。
「むぅ……その男はモルモットにしないで協力して貰え、協力するなら報酬も用意してやれ」
「はっ、解りました」
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◇貿大学病院、某研究室◇
この部屋に2人の男が話し合っている。
その1人、科学部の科学者が愚痴を漏らす……
「高々400ccの血液と排泄物だけじゃあ、ろくな実験が出来ねぇよ、2000ccの血液と片腕と肝臓の1部で良いから、欲しいよな……」
もう1人が化学者の過激な発言をたしなめる。
「おいおい、嵐山大佐に聞かれたら事だぞ? あの人は、犯罪者には厳しいけど、そうじゃない人には以外な程優しいからな……」
「それだ! あの被験者……なんだっけ? まぁいいや被験者Aに犯罪に手を出させる様に仕向けないか? もしかしたら、実験し放題になるかも……」
「おいおい、それがバレでもしたら俺らがゾンビの餌になっちまうよ……そういやぁ明日だろ? 嵐山大佐の視察……」
「おう、『A』はまだまだだが、『ゾンビ』の方は粗方調べたぞ……お前も明日を楽しみにしてな……」
「何だ? 今教えてくれるんじゃないのか?」
「ばぁか……大佐殿より早く教える筈無いだろ?」
「ちぇ……明日まで待つか……」
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翌日……
嵐山大佐は、化学者の実験成果を聞いて、自分のノートに書き取りをしていた。
「人間がゾンビに至るまでには、二種類の過程があります。第1に生きたままゾンビに成る者。これは個人差があり25時間~50時間内にゾンビに至ります。これは例の1名を除き例外はありません」
カッカッカッ っとボードに書いていく化学者。
「第2に心停止してから、ゾンビに至る者。これは個人差が殆どなく、30分程度でゾンビへと変化します。しかし、重要な臓器が残っていないと、ただの死体のままで、ゾンビに変化しません」
ここで、嵐山大佐が質問する。
「なんの臓器が必要なのだ?」
「判っているのは、『心臓』『肝臓』です。……さらに詳しく調べるには後10人ほど、欲しいのですが……」
嵐山大佐はため息をつく。
「死んでも良い犯罪者が、早々手にはいる訳無いだろ! 諦めろ……」
「は、はい! 失礼しました大佐殿!」
化学者は失言を反省した。
嵐山大佐は、ゾンビの騒ぎに便乗した、強姦や殺人を犯した犯罪者達を実験台として、科学部に差し出していたのだった。
「続いてゾンビの性能ですが、生きたままゾンビに成る個体と死んでからゾンビに成る個体に若干の違いがありました。 それは力です……力と言っても腕力と耐久力の2つだけが生きたままゾンビに成った個体が上回っていました。 脚力や瞬発力は殆ど差は有りませんでした」
説明んしながら、ボードに書いていく化学者に、化学者の説明をノートに書いていく嵐山大佐。
「ゾンビの知能は皆無かと思われます。基本押す、叩く掴む、噛む以外の動作は見られません。そして、視覚は0,01、 聴覚は優れた人間並み、嗅覚は特殊になっていました。」
「嗅覚?」
紙の上を走らせていたボールペンを止めて聞き直す。
「はい、実際は超感覚的な物なんですが、便宜上『嗅覚』にしました。ゾンビ達は人間と人間で無い者をその嗅覚でかぎ分けます。その距離は約5m。それまでは、物影や音に反応して近づくだけなのです」
嵐山大佐はこの化学者を高く評価した。
サンプルの少ない状況で良くここまで調べあげた物だ……と。
「あと、被験者Aについてですが、彼を『抵抗者』と名付けました。それで彼の血を調べた所、何も変わった点は見つかりませんでした」
「変わった所は無いだと?」
不思議そうに答える。
「はい、今の設備ではこれ以上は……あと、彼と同じ血液型なら25cc程で、ワクチンと同じ血液働きをすることが判明しました。しかもゾンビウイルスに感染後でも助かりました」
「そうか、予想以上だな……彼の血を使ってワクチンは作れるか?」
「今の設備では不可能です。それと彼の血液はO型なのでそれ以外は拒絶反応を起こしました。今の研究結果は此処までです……」
「解った……お前が居て色々助かった。ありがとう……それで念のため血液ワクチンは保存可能なら、4人分確保したい、頼めるか?」
「勿論です……」
そうして、嵐山大佐の視察は順調に終わった。
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◇マンションの一室◇
ここに被験者Aが、三機あるパチンコ台を打っていた。
彼は血液提供の報酬として、パチンコ屋の復活を要求したのだが、結果は実機3つと部屋の提供だけであった。
「がぁぁぁぁぁぁ! 損もしないが、儲けもしないパチンコなんて、パチンコじゃねぇぇぇぇ!!」
被験者Aは気分転換の為、外に出た。
くっくっくっ……しかし俺様にもとうとうツキがまわって来やがった。
ゾンビに引っ掛かれた時は、死んだかと思ったが、アレ以降妙に頭が冴え渡る……
そして、軍隊からはVIP待遇と来てやがる……
飯は食べ放題だし、娯楽も概ね聞いてくれる……
チョイと献血するだけで、俺様はキングだぜ!
ん? おっ? 良い女はっけぇぇん!
あの女も、頼めば貰えるんじゃねぇか?
いやいや、まてまて……善は急げだろ?
どうせ俺様は特別なんだ……
事後報告で良いだろう……
……
…………
これから起こす行為が、被験者Aの最後の晩餐ななるのだった。
彼、『被験者A』が乱暴した女性は自殺してしまったのだ。
『被験者A』は略式裁判の末、科学部に身柄を引き渡した。
その際「今後『被験者A』の報告はするな」と条件が付いた。
その意味は『死』を含めたどんな人体実験をも許可したのと同じ意味であった。
こうして、科学部は『抵抗者』の研究を大幅に進めることが出来た。




