91#エルダーゾンビ
登場人物紹介
『嵐山大佐』ゾンビ映画の愛好家? 上官の指示を無視した成果が茨城県の某所一帯を守る結果となった。
『嵐山節子』在神教の教祖で超能力者らしい。親しい人々からは『狂気の予知姫』と呼ばれている中年女性。
『荒波渡』100万分の1の確率で抵抗者となった。
『前庭ひなた』100万分の1の確率でエルダーゾンビとなった。
『崎守岬』渡に助けられた若者。
『鈴城美鈴』渡に助けられた若者。
『古都成誠』渡に助けられた若者。
あれからどのくらい時が経ったのだろう……
私は自分の置かれている状況が、少しだけ解った。
私は自殺をしようとすると、意識を失う……まるで身体が死を拒絶するかの様に……
もう1つ……空腹になり過ぎても意識が無くなる。
辛うじて記憶は有るものの、自分の意思で動かない……そして、英明の1部を食べる……心では拒絶してるのだか、身体が喜んでいる……もっとこの肉を食べたいと……。
さらに、感覚も変わって来た。
痛覚が殆ど失われたみたいだ。
これはぶつかったり、ナイフで手首を切った事で気づいた。
でも、無くなったのは痛覚だけで触覚はしっかりと残っている。
聴覚も問題なく残っていると思う……
瞳の色が変わった。
食後は淡いピンク色だ、完全な空腹時は赤紫色だった気がする。
私の読み通りなら、瞳の色で己診断出来るわね。
私は自分で死ねない……ならば私のすることは、人間以外の食事を探す事……
あんな思いまでして、生きていたくないのに……神様はなんて残酷なのだろうか……
私だって馬鹿じゃない……色々なサイトの履歴を見て
学び予想した。
この世界に感染する病気が大発生したのだ。
しかもサイトの人々はこれ等を『ゾンビ』と言っていた。
すると、私も感染者の血を浴びたからゾンビになったと自己判断した。
しかし、1つだけ不明な点がある。
サイトのゾンビ情報と私の症状が合わない……それは『知性』だ。
情報ではゾンビ達は人間を見つけると無差別に襲うらしい……更に言葉も通じない……
私は今は理性もあるし、話も出来る……まさか、それすらも私の思い込み?
少し考えて私は、2つの目的をもって外に出ることにした。
1つは、人間を見ても平常心でいられるか、そして会話が出来るか。
2つは、先程考えた食材探しの旅に出る事、
私は、最寄りのコンビニに行くために出掛けた。
家の外に出ると、辺りは物音1つしない閑散とした状況だった。
おかしい、私の外を見た最後の記憶と随分違う……あれだけいた人々はどうなったの?
無事避難できたの?
……今はコンビニに行くのが先よね、空腹に成ったらまた意識が無くなってしまう……急ごう。
角を曲がると3人の通行人を見つけた。
3人とも、ひどい怪我……
「あの、怪我とか酷そうですが大丈夫ですか?」
と私が質問すると、
「あ"~」「ヴ~」「おぉぉ」と言って私を見た。
あっゾンビだった……瞳が赤紫色だ……
やはり、私は襲われない……自分も同類なのだと自覚してしまい悲しくなる。
でも、ゾンビ達はどうやって、人間とゾンビを見分けるのかな?
……
…………
………………
コンビニに着いた。
コンビニには2人の先客がいる、母娘みたいだ。
母親は私を見ると「ひぃ!?」と悲鳴を上げた。
失礼ね……でもこの2人は人間だ、匂いで判る……とても美味しそうだ。
でも、私の意識はしっかりしている……
「あのう、買い物をしたいのですが、店員さんはいないんですか?」
母親は、私の言葉を聞いて人間だと思い安心したようだ。
娘は小学生低学年くらいだろうか、ずっと母親の側を離れない。
私は、母親から今日に至るまでの簡単な話を聞いた。
大体はネットで見た通りだったがか、被害の規模が私が予想していたより、深刻だった。
感染が早すぎるのだった。
この母娘は、競争率の高いコンビニは何も残っていないため、ゾンビが多く徘徊する、このコンビニまで来たのだった。
あれ? 私が来たときはそんなに、見かけなかったけどと外を見ると、ゾンビたちが10人くらい徘徊していた。
私は運が良かったのね。
でも、私は襲われないと思うけど……
色々な食材を篭に詰めて、ゾンビ達がいなくなるのを待つ……
なかなか居なくならない……私は裏口がないかと、バックヤードに入った。
そして、裏口らしき扉を見つけた。
扉を開け外を見ると……
「ひぃぃ、助けてぇ」
「か、囲まれたぁ」
すぐ側でゾンビ達に囲まれて、情けない男の悲鳴を聞いた。
この扉に気付かないくらい恐かったのだろうか?
私は咄嗟に2人を引き入れた扉を閉め鍵をかける。
扉の向こうから「う~」「お~」「あ~」とか沢山の呻き声を上げながら、扉を叩いたり引いたりしている。
どうやらゾンビ達はドアノブを回すと言いう、知恵すら残っていない。
やはり、私とは随分違う。
男達は安全なったと理解すると、途端に元気になって威張りだした。
やっぱり、助けなきゃ良かったかな……
男達はえっちぃ目で私を見ながら、俺たちと一緒に行動すれば、食べ物もあるし、少数のゾンビなら、守ってやるぞと言ってきた。
あのぅ、食べ物のはここのコンビニのだし、さっきまでゾンビ達に追いかけられて、ヒィヒィ言ってましたよね? 呆れて物が言えません。
あんまりつれなくしたら、今度は母親にアプローチを仕掛けて来ました……節操無しですね。
コンビニから叩き出してやりたくなった。
ガシャーン!
何かが崩れる音がした、男達が嫌でバックヤードにいたので、音の原因が解らない……
バックヤードから店内に移動した所で子供が泣き出していた。
「なんで、俺たちと一緒に来ないんだよ!!」
なんてキレてた。
当たり前じゃん、下心丸出しの顔してんだもん……
しかしこの騒ぎは店の外にいたゾンビを惹き付ける事になった。
男2人が理不尽にキレ出すと、子供が鳴いてしまった。
「うるさい! 黙れよっ!」
あ……ゾンビ達がコンビニの窓越しに張り付いてる……
5、6、7、8……ちょっと多すぎない?
鳴き声か、怒鳴り声に、反応したのかも知れない。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ! …………」
「おい、ビビるな奴等はドアは開けられん」
私は10人まで増えたゾンビ達のうち2人に何かを感じた。
ひなたの直観は、力の強いゾンビと、そうでないゾンビの違いを察知していたのだった。
その力の強いゾンビはコンビニの扉ガラスを叩きわった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ! き、きたあ!」
「このガキがうるさいからだ! 責任取れ!」
男の1人が、子供をゾンビ達が侵入しようとしている窓側に蹴り飛ばす。
「キャアァ!」
子供に駆け寄る母親、慌ててバックヤードの裏口から、逃げ出す男2人。
私は両方をぼぉっと見ていた。
我に返った時は、母娘はゾンビ達に襲われる直前だった。
私は目を瞑り(止めてぇぇぇ!)と心の中で叫んだ。
……
…………
目を開けると、母娘は無事だ……ゾンビ達は立ったまま動かない……なんで?
それよりも、行動よね。
「今よ!早く逃げてっ」
何故か母娘が逃げる逆方向に移動するゾンビ達……
も、もしかして……
1人店内にいる私は、まだ視界にあるゾンビに言ってみた。
「私の所まで来なさい」
するとゾンビ達はワラワラと、私の所まで集まってきた……
やっぱり……今度は……
(お前と、お前……右手を上げなさい)
多数いるゾンビのうち2人が右手を上げた。
間違いない私はゾンビ達に命令出来る……私は、ゾンビを支配出来るゾンビになったの?
それから10人のゾンビ達を使って色々試した。
不思議なんだけど、私の命令は肉声でも心の声でも命令出来るみたい。
でも、心の声の方が正確に命令できる。
次に器用な動きや、早く動くのは難しいらしい。
でも、軽作業は出来るはずよ。
あと、命令の効果範囲は心の声で10mくらい
肉声は今は試していない。
1度命令してしまえば、完了するまで実行するみたい……これはもっと研究しないと。
取り合えずコンビニに誰も入らないように見張りをお願いした。
私はコンビニの食材が食べれるか色々試した。
結果は最悪だった。
肉類以外は全て吐いた……しかし肉類を食べても、満足感も空腹感も満たされない……しかも不味い。
私は、さい先の悪さに、目眩がするようだった。
……
…………
………………
数日かけて、私の食べれる食材がを探したが、結局見つからなかった。
解った事は肉を食べても吐かないだけで意味が無さそうな事。
ゾンビは耳が良く、50m先からでも私の命令を聞けた事
人間を見ると、美味しそうに感じる事だ。
鏡を見ると私の眼が赤い……そろそろ空腹の限界なのだろう……もう人間を食べるのは嫌なのに……
どうせ食べるなら……以前見た、あのろくでもない……いない方が良いような人間を……あぁ意識が途切れる……
……途切れる……途切れる…………途切れる………………
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私は意識を取り戻した。
なんと、私はゾンビ達をうまく使い、人間を追い込み、2人をさらって食べたみたいだ。
人間だった死体を確認する……あっ……あの男だ……
私は、ここのコンビニで出会った、男2人を捕まえて食べたのね……
私は人間を食べたとう嫌悪感の中にも、少しだけほっとした感情があった。
私は、丸1日かけて考えた。
私は、人間を食べなければ生きて行けない、しかし自殺は出来ない。
それならば、せめていなくなっても構わない……死んだ方がましの、クズな人間を狙おう。
私は、蕀しかないの道の中、一筋の道をえらんだ。
~こうして 100万分の1の確率で『エルダーゾンビ・前庭 ひなた』 が誕生した。




