【七十五 玉龍の誠意】
あんなに「ボクは悪くない!」という態度だった玉龍がはっきりと謝罪の言葉を言ったのには、その場にいた全員が驚き目を丸くした。
玉龍は孫悟空と河伯、青鸞童子を順にみて謝罪を続ける。
「全部ボクが悪かったです!食べちゃった馬の代わりにボクがオボウさんの足になります。壊しちゃった三つの村は如意宝珠で直します!」
頭を深く下げて言う声は強く、決して上部だけの決意ではないと言うのがわかる。
「猛禽の子、キミのお父さんを食べようとしてごめんなさい。ケンレンタイショーのおじさんも、食べようとして襲いかかってごめんなさい!」
目を潤ませてそれぞれに謝る玉龍を責める気持ちはもう誰にもなかった。
河伯はおじさんという言葉に少し引っかかるところがあったが、彼が今の名を名前を知らない以上仕方ないかと飲み込んだ。
「それでは取り急ぎ、ますは村の修復からお願いしましょう。哪吒太子、それから青鸞童子は玉龍と共に各村を訪れ如意宝珠での修復を頼みます」
「え?私、ですか?」
観音菩薩の言葉に哪吒太子は一人称を丁寧にしつつも驚いて兄の恵岸行者を振り返った。
観音菩薩の弟子であり使者の恵岸行者でなく、なぜ哪吒太子なのか。
「お前の方が民衆の知名度もあるからね。頼んだよ、哪吒」
「うええ?……はい……」
恵岸行者の言葉に哪吒太子は渋い顔をして頷いた。
「哪吒兄様はわかりますが、どうして僕も……?」
「ほんの数時間前、あなたは民たちから蒼き天の鳥と親しまれたでしょう。あなたのおかげで夜叉と羅刹の作業が捗ったこと、私も聞いていますよ」
困惑する青鸞童子の問いに笑顔で答える観音菩薩に、河伯と青鸞童子は顔を見合わせた。
水の中にいたのに誰から聞いたのだろうと二人して思ったのだが、結局のところ観音菩薩だからと言う結論で納得した。
「ふふ、龍の脇に猛禽がいたらみんな安心するだろう?それに、龍と青鸞をバックに各村を哪吒が訪れたらみんな驚くだろうね」
楽しそうに細く説明をした恵岸行者が言う。
その光景を想像してその場の誰もが「確かに……」と頷いた。
「ニ哥やめてよ……そう言う派手で目立つのは俺苦手だって知ってるだろ」
「ボク、もう少し体を大きく変化させていこうかな……」
「哪吒兄様、僕もなんかカッコいい仕草考えようか」
「い、いい!何もしなくていい!なにも!な?
そのままでいい。わかったか?二人ともありのままが素敵なんだから。な?」
花を摘んで花冠を作って頭に乗せて行こうか、などと考え込む玉龍と青鸞童子に哪吒太子が慌てる。
「青鸞君の青い姿に哪吒の赤い着物はすごく映えるんだろうなあ。お師さま、やっぱり自分もついていっていいですか?」
「恵岸、落ち着きなさい」
「そんな楽しそうなこと、俺様も行きたい!」
「悟空も」
「ひゃいっ……!」
調子に乗りかけた目立ちたがり屋の孫悟空は、観音菩薩の視線一つでおとなしくなる。
観音菩薩はやれやれと気を取り直すように手を叩いて場の空気を変えた。
「とにかく人々は家がなくなり困っています。哪吒太子、青鸞童子、玉龍とともにすぐに各村へ行きなさい。夜が来る前に」
観音菩薩の指示で哪吒太子と玉龍、青鸞童子は村へと飛んで行ったのだった。




