表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深沙の想い白骸に連ねて往く西遊記!  作者: 小日向星海
第八章 減量したい河伯と恵岸行者
54/339

【五十四 河伯、自分に課せられた役目を知る】

 恵岸行者は頷いて真剣な表情で言う。


「数日……いやもしかしたら数ヶ月の後、釈迦如来様から西方取経を命じられた僧がここを通る。あなたは彼の護衛をし、彼を無事に天竺へと送り届けてほしい」


「天竺、ですか」


 恵岸行者は頷いて言葉を続ける。


「その僧は多分、河伯サンもよく知っている人だ。ひと目見たらきっとわかる。何度も転生している……」


 そう言って恵岸行者は河伯の住処を指差した。


 河伯はハッとして興奮からか頬を紅潮させた。


「まさか……馮雪の?!」


「疾、雲来来!」


 河伯の問いには答えず、恵岸行者はニヤリと笑うと雲を呼んで飛び乗った。


「今の河伯サンじゃ彼の足手纏いになりそうだけど、釈迦如来様がお決めになったことだから自分からはこれ以上は何もいわないよ。あなたはきちんと食べて、来る日に向けて休息を取って……」


「しかしそれでは……」


 ぐうたらの快楽を知ってしまった河伯は、再びぐうたらしてしまったら再起できる気がしなかった。


 だが河原を走れば人々を怖がらせてしまう。


 困惑する河伯の心中を察した恵岸行者は手をポンと打った。


「そうだ、鍛錬したいならここから少し行ったところにある蛇盤山あたりまで走るのも良いかもね。なんでもあそこには龍宮を追放された龍が封じられているとか。手合わせにはもってこいの暴れん坊らしいって話だけど……」


「追放された龍……?どなただろうか……」


 龍神たちの知り合いも多い河伯はうーん、と考え込んだが見当もつかなかった。


「とにかく蛇盤山に行ってみたら?」


 恵岸行者に促され、河伯は頷いた。


「今日の戦いは刀剣罰1回分にしておくね」


 本来の罰である腹を割くことはなかったが、恵岸行者はそれでもいいと判断した。


 だって河伯はかなり恵岸行者の攻撃をその身に受けていたから。


「あの、どうして恵岸殿が刀剣罰を?」


「うん?西王母様はお忙しいからだよ?」


 そんな彼女が一罪人のために手を煩わすわけがない。


「それは確かに……いや、なるほど……」


 本当は玄奘の護衛のために河伯を鍛えるのが目的なのだが、それは本人には秘密なのだ。


「また1週間後、今度は遠隔で戦うけど、今日みたいに無様なところは見せないでよ、河伯サン」


 そう言って恵岸行者は河伯の元を去った。


 河伯は手元に残った糫餅をじっと見つめた。


 まだほんのり温かく香ばしいそれは、強烈に河伯の空腹感を刺激した。


「……!」


 河伯は夢中になって糫餅を食べた。


 胡麻の香りがさらに食欲を増す。


 その場に座り、頬に肉桂の粉をつけながらも河伯は一つ二つと糫餅を平らげていく。


(馮雪に会える……!まだこの時代では生きてる、ついに会えるんだ!)


 今までは生を終えた後にしか見つけることができなかった。


 でも今はまだ、馮雪だったその人は生きていて、しかもその護衛をすることになるとは。


 探し人に関わる情報を得て、河伯は空腹だけでなく、心まで期待に満たされていたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 河伯さん、いいこと教えてもらえてよかったねー(´;ω;`) うーん!素晴らしい(*´꒳`*)
[一言] ストイックにしていたからこそ、お菓子と会いたい人への期待という、美味しいものにありつけたのかもしれませんね。やはり自分の心の底の欲求が叶う時って、とんでもない快楽を生み出しますよね。 河伯、…
2023/03/29 12:08 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ