表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深沙の想い白骸に連ねて往く西遊記!  作者: 小日向星海
第七章 花果山にて顕聖二郎真君に会う
36/339

【三十六 花果山到着】

 玄奘が瞬きを数回しているうちに、二人を乗せた觔斗雲は花果山へと到着した。


 花果山は孫悟空の生まれ故郷で、海の近くにある山。


 岩肌がところどころのぞくそこに、木々や花が生い茂る火山である。


 そして火山の熱に温められた温泉があちこちにある楽園のような場所だ。


「あー久々に思いきり飛べて楽しかった!」


 孫悟空は久しぶりの故郷を懐かしむように大きく息を吸った。


「う、うぇっぷ……」


「大丈夫ですか、お師匠さま」


「まだちょっと目が回ります……」


 觔斗雲のあまりの速さに、玄奘はヨレヨレになっている。


 孫悟空の手を借りてようやく雲から降りた玄奘はその場にへたり込んでしまった。


「おやおや、お連れさんは大丈夫かい?」


「うーん、無理かな。お師匠様をどこかで少し休ませねえと……って誰だ!」


 突然背後から話しかけられ、孫悟空は警戒し身構えて振り返った。


 ──のだが。


「げ、なんであんたがここに……」


「やあ、石猿ちゃん、五百年ぶりだね」


 馴れ馴れしく弟子を呼ぶ声を怪訝に思った玄奘が顔をあげて孫悟空の方を見ると、そこにいたのはとんでもない美形の男だった。


 孫悟空より頭二つ分も背の高いその人は、絵に描くのが難しいくらいの整った顔にをしている。


 凛々しい眉毛の下には大きな深い藍色の瞳。


 額にはもうひとつの目があり、それが彼を人ではないと知らしめる証になっている。


 そして月の光の煌めかせる水面のような、その豊かな銀の髪を結い上げ、荘厳な甲冑を身に纏っていて、彼の足元にはふさふさとした毛並みの赤茶の犬が尻尾を振りながらじゃれついている。


 知り合いなのか、孫悟空はムッとしてその美青年につめよつた。


「俺様をちゃん付けて呼ぶなよ。あん時は三百八十四歳だったけど、もう五百年経ったからな。俺様はもうすぐ千に行くぞ」


「そんなこと言っても元々オレの方が年上なんだから、石猿ちゃんは永遠に石猿ちゃんだろ」


「……はぁ……」


 片目を瞑って言う男に話をするのもバカらしくなり、孫悟空はため息をついて会話を切り上げた。


「悟空、そちらの方はどなたです?」


「ああ、顕聖けんせい二郎じろう真君しんくん……変化が得意な神仙で、玉皇大帝の甥っ子ですよ」


「玉皇大帝……」


「こいつは天帝の妹の息子なんです」


「初めましてお坊様。石猿ちゃんのいう通り、オレは顕聖二郎真君といいます。この犬は哮天犬。あとは鷹が空に一羽」


 顕聖二郎真君が空を指さすと、応じるように空を旋回する鷹がピャァアと一声鳴いた。


「私は……」


「自己紹介なんてしなくて良いですよお師匠様。こんな奴、相手にしなくて良いんです」


 孫悟空は、玄奘を顕聖二郎真君から隠すように、背を向け両手を広げて立って言う。


 そんな孫悟空を退かし、玄奘は苦笑した。


「そう言うわけにはいきませんよ、悟空。挨拶は大切なことです」


「ただの人間が石猿ちゃんを呼び捨て?それに、お師匠様だって……?」


 驚いたような顕聖二郎真君の呟きが聞こえたが、気にせず玄奘は立ち上がりにこやかに挨拶をした。


「初めまして、顕聖二郎真君。私は玄奘と申します。皇帝の命で、天竺まで旅をしています」


 そこまで言って頭を下げると、玄奘はくらりとめまいを感じてよろめいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 二郎真君、なかなかまたクセの強いキャラですね…悟空との腐れ縁を感じさせられます…いったいどんなことをするのか、楽しみです…!
2023/03/08 15:52 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ