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深沙の想い白骸に連ねて往く西遊記!  作者: 小日向星海
【第十六章 気弱な星官と姫君の恋】
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【二百七十四 孫悟空、再び玄奘の弟子となる】

 孫悟空の如意金箍棒が奎木狼に届こうとしたその時、一人の幼い少年が奎木狼の前に両手を広げて立った。


「くっ、縮め!」


 孫悟空は少年に当たるギリギリのところで如意金箍棒を縮めて避けた。


「こら、月華まで、待ちなさい!」


 今度は少女が駆けてきて、少年の隣に同じように両手を広げて立つ。


「おさるさんやめて!お父さまをいじめないで!おぼうさまは返すから、お願い!!」


「おえがい!」


 少女が言うと少年も舌足らずに言う。


「星星、月華、下がりなさい!」


 奎木狼が震える声で言う。


 百花がやっとのことで追いつき、二人を連れて行こうとするが二人は頑として動こうとしない。


「お父さまももうやめて!お坊さまを元の姿に戻して!!」


 月華が奎木狼を振り返って言う。


「だがそうしたら我々は……我々家族は……!」


「お父さまがこの世からいなくなっちゃうより全然ましよ!」


「おとさまいなくなるのやだぁ!!!」


「星星、月華……っ!」


 大号泣する二人に戦意を削がれた孫悟空は如意金箍棒を下ろした。


「おいお前、牛魔王がお前の望みを叶えるって言ったのか?」


「そ、それは……」


 孫悟空の問いかけに奎木狼は口ごもり、俯く。


「私が言ったのです。牛魔王の手紙にあったお坊様を送れば、見返りとして私たち家族にも長寿の力を与えてもらえるのではないか、と」


「百花!」


「牛魔王が長寿の利益りやくだと?そんな力があるなんて聞いたことがない」


 人の寿命の加減は北斗七星と南斗六星の管轄だ。

 いくら力の強い妖怪であってもいじることはできない。


 孫悟空は馬鹿馬鹿しいと一蹴した。


「もう諦めよう、もういいんだ」


「そんな、でもあなた!」


 妻の静止を聞かず、奎木狼が指を鳴らすと玄奘の姿は元に戻り、景色も骨董品屋の店内に戻った。


 玄奘は虎から元の姿に戻った自分の体をまじまじとながめている。


「お師匠様!」


 玄奘は孫悟空に呼ばれ、ハッとして顔を上げた。


 そして駆け寄り、孫悟空の前に跪いて頭を下げた。


「お師匠様!?」


 その勢いの良さに孫悟空は驚いて後退る。


「私が間違っていました。破門なんて、軽々しく言うべきではなかった……ごめんなさい、ごめんなさい悟空……」


「お師匠様……俺様も謝ります。申し訳ありませんでした。ちゃんと乱暴なことはしないと約束したのに」


 孫悟空が謝ると、玄奘は首を振る。


「あなたは私を守るために戦ってくれていたのに、私が浅はかだったのです」


「そんなことないですよ、お師匠様」


「まだ、あなたはこの未熟な私を師と呼んでくれるのですか?」


「当たり前ですよ!俺様はなんと言ったって、あなたの一番弟子なんですからね!破門されたってついていきますから!」


 二人の様子を見て、玉龍たちはほっと胸を撫で下ろした。


「お師匠様、アレをつけてください」


「アレ?」


「緊箍児ですよ、緊箍児」


 ほらほらと、自分の額を指しながら孫悟空が言う。


「でも……」


「オシショーさま、こんなに言っているんだからつけてあげたら?」


 玉龍の言葉に、玄奘はたもとから取り出した緊箍児を眺めた。


 孫悟空は頭を出して、早くとせがんでいる。


「わかりました」


「孫悟空、あなたの破門を撤回します。また私の弟子として、共に旅を続けてくださいますか?」


「もちろんです!」


 元気よく返事をして、孫悟空は緊箍児に頭を通した。


 緊箍児が輝き、孫悟空の頭にピッタリとハマる。


「やっぱりこれがないと落ち着かねえや!」


 明るく言う孫悟空に、一行は笑い合うのだった。


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