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深沙の想い白骸に連ねて往く西遊記!  作者: 小日向星海
【第十四章 人参果の木と鎮元大仙】
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【二百四十二 釈迦如来、力を結集し魔羅の核を破壊する】

 魔羅から引き摺り出された核は赤黒く、まるで人の心臓の拍動のように緩やかな点滅を繰り返している。


 艶やかな球体のそれは、如意金箍棒ならすぐに破壊できるだろうと、孫悟空は考えていた。


「おらぁ!」


 ギイン!


 しかし孫悟空の予想に反して、魔羅の核は硬い音をたて、孫悟空の如意金箍棒を弾いた。


「ぐ、ううっ!!」


 あまりの硬さのため、如意金箍棒からビリビリと衝撃が伝わってきて、孫悟空は思わず如意金箍棒を落としそうになった。


 だが、孫悟空は歯を食いしばりそれに耐える。


 そして魔羅の核は衝撃と反動で宙に放り出されてしまった。


「文殊、遁竜椿を!!」


「承知しました、疾!」


 観音菩薩が羂索を、文殊菩薩が遁竜椿を投げて魔羅の核を固定した。


「姉上と普賢も核の破壊にお力添えを!」


「うむ。普賢よ、妾たちも行くぞ!」


 観音菩薩に頷いた准胝観音はキリキリと炎の矢を数本番えて魔羅の核を狙いながら普賢菩薩にいう。


「了解、姐さん!」


 普賢菩薩は呉鉤剣を構え、駆け出した。


「いっちち〜!硬すぎるぜ……」


 孫悟空は痺れる手を振りながら息を吹きかける。


「力を合わせれば壊せるはずだ。八戒、俺たちも!」


「おう!」


 猪八戒と沙悟浄も、武器を構えて核へ飛びかかった。


「今度こそ破壊してやる!」


 孫悟空も手を振って痛みを散らし、魔羅の核へと再び如意金箍棒を振り下ろした。


「疾!」


 准胝観音が矢を放ち、普賢菩薩が地を蹴り高く跳躍し、落下の速度を利用して二本の呉鉤剣を魔羅の核へと一気に薙ぐ。


「はぁああっ!」


 猪八戒と沙悟浄は気合を込めて一撃を繰り出し。


「オラァ!砕け散れ!」


 孫悟空は渾身の力を込め如意金箍棒を魔羅の核に叩きつけた。


 そして、複数の攻撃を受けた魔羅の核は。



 ──ピシッ……パキパキ……ッ!!


 ほんの小さな瑕から、亀裂が一気に走って行く。


 パァン!


 小さな破裂音を響かせて砕け散った。


 魔羅の核は解けるように消え、瘴気も全て同じく消え去った。


「皆、ご苦労様」


 釈迦如来は坐禅を解き、孫悟空たちを労った。


 観音菩薩たちはそれぞれの武器をおさめ、釈迦如来に五体投地する。


 釈迦如来は弟子たちにニコリと微笑み、まだ眠り続けたままの元始天尊の元へと向かった。


「姉上が玄奘を連れてきたのはこのためだったのですね」


 五体投地を解き、駆け寄ってきた観音菩薩に、准胝観音は首を振った。


「いや、この場は仙郷だからな。あのお方が来てくださるかはほぼ賭けのようなものであったのだ」


「そうなのですか?てっきり、釈迦如来様を顕現させるための憑座として連れてきたのかと……」


「いや。きてくださって、妾はホッとしたよ」


 准胝観音と観音菩薩は釈迦如来が憑依し顕現した玄奘を見ながらそういった。


 釈迦如来の憑座となったままの玄奘は、元始天尊の元へと着くと、身をかがめ手をかざした。


「玄奘ちゃん……いや、釈迦ちゃん、かな」


「須菩提、太上老君、鎮元大仙……あなた方にも迷惑をかけましたね」


 釈迦如来が謝罪すると、須菩提祖師たちは首を振った。


 再び元始天尊に視線を戻した釈迦如来は、元始天尊が目覚めない原因を悟ったらしく、苦悶の表情を浮かべた。


「魔羅の毒に当てられてしまったのですね……」


 少しずつ、少しずつ、入り込んだ魔羅のかけらが元始天尊を侵していったのだ。


「毒?!」


 須菩提祖師は顔を青ざめさせ元始天尊を見た。


 顔色は悪くないし、呼吸も正常。


 毒に侵されているようには見えない。


「むう……」


「……」


 太上老君と鎮元大仙の二人も顔を見合わせ難しそうに唸るばかり。


「元始天尊……」


 魔羅が消えた今、もう目覚めてもいいはずなのに、目覚めないのは魔羅の毒が回りきってしまったからかもしれない。


 須菩提祖師たちは元始天尊が眠ったまま目覚めないかもしれないという、最悪な未来を覚悟した。


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