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深沙の想い白骸に連ねて往く西遊記!  作者: 小日向星海
【第十四章 人参果の木と鎮元大仙】
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【二百四十 沙悟浄、恐怖に抵抗し、玄奘は魔羅の誘惑に耐える】

 沙悟浄は足の震えを必死に抑え、踏ん張り、降妖宝杖を振るうが魔羅にかすり傷一つつけることができない。


「それ右。次は上だ」


 魔羅は軽々と沙悟浄の攻撃をかわし、軽口を叩く余裕すらある。


「クックック、当たらぬのう」


「だあああああっ!」


 沙悟浄はただ叫びながら武器を振るった。


 魔羅と会話をする気は悟浄にはなかったからだ。


 それに、言葉を考え発することで押さえつけた恐怖心が名を持ち再び沙悟浄の動きを止めてしまう、そんな気がしたからだ。


 何も考えず、ひたすらに武器を振るう。


 それしか恐怖心を抑える方法がなかった。


「さて、遊びはここまでだ」


「──なっ?!」


 それまでニヤニヤとしていた魔羅は表情を消し、そして魔槌を振り上げた。


「悟浄!」


 孫悟空と猪八戒が叫んだ。


「ぐぅっ!」


 ゴォオオオオン!!


 重く冷たい音があたりに響き渡る。


 沙悟浄は歯を食いしばり、渾身の力を込めて降妖宝杖の柄で魔槌を受け止めた。


 凄まじい重力感に、沙悟浄は膝をついた。


 押し潰してくる魔槌を、沙悟浄は歯を食いしばってその圧に耐える。


「おおおおおおお!」


 魔羅が雄叫びをあげ、嬉々として腕に力を込める。


「があああああっ!」


 それを見ていた孫悟空と猪八戒は焦った。


 沙悟浄が動けるのになぜ自分たちは動けずにいるんだ、と。


(あいつのほうが俺様より後に仲間になったのに……なんであいつが動けて俺様が動けねえんだ!クソ、ビビるな俺様!)


 孫悟空は震える手に力を込め、如意金箍棒を強く握った。


 手のひらにジワリとした汗の感覚。


 尻尾はいまだに恐怖心から下がったまま。


(それに俺様はなぜあんな気持ちの悪い奴を怖がってるんだ……見たこともないのに、わけわからねえ!)


 猪八戒もまた、釘鈀を握る手に力を込め、体の震えを止めようとしていた。


(情けねえ……准胝ちゃんも見ているってのに、オレは……)


 体の震えを止めることができても、その目が魔羅の姿を捉えることを拒否する。


 敵の姿を見ることができなければ、攻撃することもできない。


(オレが怖いもの、あんな知らないものなんか怖いはずないのに……今まで怖かったことといえば……)


 二人は必死に自分の経験から怖かったことを思い出していた。


「そうだ、俺様にはあんなキモいのよりももっと怖いものがある!あんなの全然怖くねえ!」


「オレだって!うぉおおおおお、悟浄ちゃんから離れろ、マーラァァァァ!!」


 二人は一息に魔羅への距離を詰めた。


 だが。


「せいっ!」


 魔羅が残りの腕をそれぞれ振るい、孫悟空は斧の腕、猪八戒は矢を持った腕が襲いかかる。 


「わっ!」


「チッ!」


 猪八戒は慌てて避け、孫悟空は舌打ちして回避する。


「無駄なことと知りながら向かってくるとは、なんとも厚い友情だなあ。はは!」


 沙悟浄を押しつぶそうとする腕の力は弱まっていない。


 弟子たちの苦しむ声は玄奘にも届いていた。


(沙和尚に何が?!悟空、八戒?!)


 さすがに、弟子たちの危機に玄奘の呪文を唱える声が弱まる。


 それを魔羅は見逃さなかった。


 魔羅は沙悟浄を押し切り、その身を吹き飛ばすと、疾風のように玄奘の元へ舞い戻り囁いた。


「さあ目を開け!その目で見よ!余の姿を!」


(私が目を開くことで皆が助かるのなら……)


「だめです!お師匠様!」


こんちゃん!」


 孫悟空と准胝観音が叫び静止する。


 たが遅かった。


 玄奘は目を開き、魔羅の姿を見上げた。


「見たな?!余を見たなコンチャン!ははは!」


「おし……しょうさま……!」


 沙悟浄が呻いた。


 沙悟浄の声に玄奘が振り向く。


 玄奘は再び魔羅に視線を戻した。


 目が合うと、ニタリと魔羅が赤い舌を覗かせ笑う。


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