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深沙の想い白骸に連ねて往く西遊記!  作者: 小日向星海
【第十四章 人参果の木と鎮元大仙】
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【二百三十一 浄化をもたらす錫杖の音】

 魔羅は周囲の瘴気が消えたことに驚いていた。


 それに加えて聞こえてくるこの騒音。


 ガチャガチャと金属が触れ合う音が魔羅を悩ませた。


「いったい何なのだこれは!やかましいな……!」


 にんげんや神仙にとって涼やかな錫杖の音色だが、魔の存在にとってこの上なく不快な音色なのだろう。


「隙あり!」


 そんな魔羅を観音菩薩の長虹索と文殊菩薩の遁竜椿が捉えた。


 耳を塞いでいた両手を縛られ、上へと上げた状態で拘束される。


「ぐあああっ!」


 耳をつんざく金属音に、魔羅は絶叫した。


 あまりの苦しさに両目両耳からどす黒い血を流すほどだ。


「おのれ……!」


 金属音に混じって途切れ途切れに聞こえてくる、あの宿敵にも似た声明がさらに魔羅を苦しめていた。


(あの猿が何かしたのか?吾をこのように苦しめることなどあの猿にできるとは思えぬが……)


「そりゃ!」


「くっ!」


 苦しみと思考で魔羅は完全に油断していた。


 いつのまにか近づいていた普賢菩薩に気づかなかった魔羅は、すんでのところで呉鉤剣をかわす。


 チリ、と音がして、その剣は魔羅の髪をほんの少し切り落とした。


「っ、この……!」


 魔羅は反撃をしようとしたが、両手を拘束され動きも鈍くなっていたので、普賢菩薩はなんなく魔羅の攻撃範囲から逃れることができていた。


 追いかけようとしたが、今度は准胝観音が放った炎の矢が雨のように降り注ぎ、身動きが取れなくなる。


「准胝の姐御アネゴが人間を連れてきた時は驚きましたけど、うまく行きましたね!」


 普賢菩薩が観音菩薩に言うと、観音菩薩は苦虫を噛み潰したような顔をした。


「某たちもふるわねばな」


 観音菩薩を挟んで反対側にいる文殊菩薩も遁竜椿の柄を握りしめ、魔羅に拘束を解かれないように力を込めながら言う。


「サクッと奮いましょー!」


 普賢菩薩は呉鉤剣を構え直し、再び魔羅へと向かって行った。


「問題はどうやって元始天尊から魔羅を引き離すか、なのですが……」


「うが……がああ、あああああっ!」


 観音菩薩が言ったと同時に、半狂乱の魔羅が拘束を破った。


 宝貝がそれぞれの手元に突然戻り、その衝撃に文殊菩薩と観音菩薩が尻餅をつく。


「ひぇっ、嘘っ!!」


 自由の身になった魔羅の瞳が普賢菩薩を捉えた。


 体躯はそんなに大きくないはずなのに、纏うその気配は普賢菩薩自身の何倍にも感じる。


 まるで蛇に睨まれたカエルのように、普賢菩薩は動けなくなった。


 魔羅と睨み合ったまま永遠に時が止まったかのようで、少しでも動けば『獲られる』。


 そんな気迫をまざまざと浴びせられ、普賢菩薩は気を失いそうになっていた。


「普賢!」


「間に合わない!」


 文殊菩薩と観音菩薩は、慌てて体勢を整えもう一度宝貝を放とうとするが、普賢菩薩と魔羅の距離が近すぎてできずにいた。


「妾が行く!」


 准胝観音が跳躍し、普賢菩薩を庇おうと両者の間に出る。


「まずは2匹……!」


 躍り出た准胝観音に手を伸ばしながらニタリと魔羅が笑う。


 准胝観音は全ての腕を戦闘体制に構えた。


「うぉおおおおおお!」


 自身を奮い立たせるため、准胝観音は腹の底から吼えた。


 准胝観音も魔羅が怖かった。


 全ての悪意、悪しきものの王である魔羅との対峙は恐怖でしかない。


 平然と対峙できるのはおそらく釈迦如来くらいだろう。


「袖裏乾坤!疾!」


 突然、鎮元大仙の唱える声が聞こえたと思ったら、准胝観音と普賢菩薩は何かに包まれ魔羅の前から姿を消した。


「どこへ行った!」


 獲物を見失った魔羅は辺りをキョロキョロと見回している。


「うがあああああっ!」


 そして咆哮し、再び瘴気を撒き散らした。


 今度は黒大蛇が三体現れた。


「蹂躙せよ!」


 魔羅の号令で黒大蛇たちが清浄の間に放たれた。


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― 新着の感想 ―
[一言] じゅんてい観音とふけん菩薩、大丈夫でしょうか…なんだかかなりまずい展開になってきましたね…。この状態を考えると、かなり酷いことになってしまうのではないかと心配になりますが、どうなのでしょうか…
2024/06/25 22:43 退会済み
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