【二百十六 鎮元大仙、玄奘たちを許し、宴を開くことを提案する】
玄奘を始め、そこにいた誰もが立派に育った人参果を見て歓喜した。
風に揺れてさわさわと人参果の葉が揺れる。
「ふむ……」
鎮元大仙は扇子で口元を覆ったまま、ゆっくりと人参果の木に近づくとその果実をもぎ取り、一口齧った。
「確かに、吾輩の作った人参果の味そのものだな」
「あったりまえだろ!じいちゃんの時を操る術を組み込んだ特別な甘露水だぜ。どうだ?ちゃんとアンタの人参果を蘇らせて見せたぜ。これでいいだろ?」
「ふむ……よかろう。約束は約束だからな」
鎮元大仙は苦虫を噛み潰したような顔をして口元についた果汁を布巾で拭いながら言った。
その言葉に、辺りからわあっと歓声が上がる。
見回すと、他の植物鎮元大仙の弟子達が植物達の世話をする手を止め、固唾を飲んで様子を伺っていたのだ。
「お前たち、仕事はどうしたんだ、手が止まっているぞ」
月亮と風舞が言うが、弟子達は誰もが人参果の木の復活に涙を流して喜んでおり、植物達のお世話ができる状態ではないだろう。
一万年もの間人参果の世話をしていたのは鎮元大仙だけではないのだから。
「よいよい。皆気掛かりであったのだろう。今日はこれから宴と行こうではないか。そうだ、玄奘どのを歓迎する宴もまだだったな?それと人参果が復活したことを祝う宴だ。よしよし、皆支度をせよ」
鎮元大仙はパンパンと手を叩いて弟子達に指示を出した。
「はいっ!」
「承知いたしました!」
月亮と風舞は弟子達を先導して宴の支度へと向かった。
「准胝観音と須菩提もよかったら宴に参加してくれ」
「ほんと?やった!ご馳走ご馳走!」
須菩提祖師はぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。
「ではお言葉に甘えます……あのこちらは妾の庭で取れた八千年の仙桃です。ぜひお召し上がりください」
准胝観音は甘露水とは別に持参した仙桃を鎮元大仙に渡した。
「なかなか立派な桃だな。これも宴で振る舞わせてもらおう。ありがとう」
鎮元大仙は近くにいた弟子に仙桃を渡し、厨房へ持って行くよう言いつけた。
玄奘は孫悟空を労う。
「本当に良かった。悟空、大変だったでしょう?」
玄奘は孫悟空を労う。
「全然ですよ!俺様の觔斗雲ならあっという間ですからね!」
本当は、仙人界と人間界の時間の流れの違いもあって、人間界で三日という非常に短い期間を守るために大急ぎで動いていたから、とても大変だった。
だが玄奘に心配をかけないように孫悟空は誤魔化して笑った。
「本当に……須菩提祖師様、准胝観音様。悟空に力を貸してくださりありがとうございました」
二人は微笑み、玄奘の感謝を受け入れた。
「本当に……」
なんと自分は恵まれているのだろう。
危機には多くのひとが手を貸してくれ、こうして乗り越えることができた。
「ありがたいことです……」
「お師匠さま?!」
感謝の言葉を胸に手を合わせると、玄奘はそのまま意識を失った。




