【百九十九 孫悟空、人参果を食べたことを認める】
月亮と風舞は、弟子たちから話を聞いてすぐに人参果の数を数えた。
「確かに三つ足りぬ……」
「孫悟空は玄奘様と共にいるはず。師のそばを離れたのか?」
「玄奘様は体調が良くなさそうだったからな。師が目を離したすきに部屋を出たのかもしれん」
二人はそんなことを話しながら足早に玄奘がいる部屋まで歩くと、乱暴にその戸を叩いた。
「玄奘様、お聞きしたいことがあります」
「どうされましたか?」
玉龍が戸を開いて月亮と風舞を入れてくれた。
玄奘は少し回復したのか、顔色もよくなっている。
たが部屋には肝心の孫悟空の姿がない。
二人は顔を見合わせたちょうどその時、孫悟空が戻ってきた。
彼の背後には弟弟子の二人もいる。
「単刀直入にいいます。玄奘様、人参果は召し上がりましたか?」
「いいえ、私には食せませんとお返しましたよ。それからみていません。なにかあったのですか?」
突然心当たりのない質問に、玄奘は首を傾げる。
「ボクたちはずっとここにいたし、何も食べてないよ。あ、食べたのはお饅頭!梨のあんこが美味しかったよー!」
玄奘の隣に座る玉龍が身を乗り出して言う。
「それはよかった。ってそうではなく」
「人参果が三つ、たりないのです」
玉龍に微笑んだ月亮の言葉を風舞が引き継ぐ。
その言葉に孫悟空と猪八戒、沙悟浄の表情が曇ったのを玄奘は見逃さなかった。
「悟空?それに八戒と悟浄も、何か知っているのでは?」
「あの、お師匠さん……」
「っていうかそんな実がいくつなっていたかなんてわかんのかよ」
猪八戒の言葉を遮って孫悟空が言う。
心なしか、いつも赤い顔が青くなっている気がする。
「人参果は一度に三十個の実をつけると決まっているのだ。我が師鎮元大仙が持っていったのは三つ、我らが玄奘様に持ってきたのが二つ。木には二十五個残っていなければならないのに、先程数えたら三つ足りなかった」
「二十二個しかなかったのだ」
月亮と風舞には犯人の目星がついているようで、孫悟空から目を離さずに言う。
「か、数え間違いなんじゃねえの?」
「間違いではない。弟子たち全員で何度も数えたのだ」
「葉の影に隠れてたんじゃねえのか?それか、鳥が食ったとか」
しどろもどろな様子の孫悟空に、さすがの玄奘にも察することができる。
「悟空、正直に教えてください。あなたが人参果をとったのですか?」
玄奘に尋ねられ、孫悟空は観念したように俯いて蚊の鳴くような小さな声で答えた。
「はい……俺様が盗みました…」
そのとき、猪八戒と沙悟浄もその場に土下座をした。
「お師匠さん!オレも食いました!申し訳ありません!!」
「俺もです、誘惑に負けて食べてしまいました!すいませんでした!!」
玄奘は目の前が暗くなりそうになった。
「猪八戒……沙和尚まで……?!そんな……!」
「オジさんたちまで何してるのさー!おシショー様のこと考えなかったの?!」
玉龍が怒ると、申し訳なさそうに三人は縮こまるばかりだった。
「月亮様、風舞様、弟子たちが申し訳ありません。弟子の罪は師の罪。なんでもして償いましょう」
「ほう……なんでも、と?」
玄奘の言葉に風舞が含みを持たせるように首を傾げた。
本当にやれるのか、二言は無いのかと暗に聞いているのだ。
「はい、なんでも、です」
玄奘は決意を込めた目で二人を見た。
「だーっもう、うるせえ!!!木の実ぐらいでガタガタガタガタやっかましーわ!人参果の木なんてこうしてやる!」
孫悟空はそう叫ぶと外に飛び出して行った。
「悟空!」
孫悟空を追いかけて玄奘たちも外に出た。




