【百九十八 大仙同士の言い争い】
拳を握る鎮元大仙を座らせ、太上老君が言う。
「鎮元のせいで話が逸れておるぞ。元始天尊、ちゃんと説明せよ。ただの人が玉果だなどと。魂が釈迦の二番弟子だったからだけではあるまい」
「面倒なんだが……今説明せぬとダメか?別に吾たちが知らなくても良いことなのだが」
「元・始・天・尊!」
太上老君が元始天尊に詰め寄る。
元始天尊は大きなため息をついた。
「大体お前も共に天帝……玉皇からともに聞いておろうに。どうせ自分には関係ないと宝貝の設計でも考えていたのであろう」
「そうだ!だから説明せよと言っておる」
自分の落ち度を棚に上げて太上老君が偉そうに言う。
そこへ鎮元大仙が片手をあげて待ったをかけた。
「おい、待て。吾輩はその集まりに呼ばれておらぬが?!」
そういうと、太上老君と元始天尊は顔を見合わせて「ああ」と頷いた。
「お前は人間界で人参果を作っていたからだろうが。話が逸れるから鎮元は口を閉じておれ」
そして太上老君が面倒くさそうに手をひらひらさせていう。
「なんだと?この年齢詐称ジジイが!」
「お前もだろうが!この見た目年齢詐欺ジジイ!」
「吾たちは人参果、蟠桃、金丹をくろうておるから若い見た目なのだろうが。五十歩百歩なことをいうな。馬鹿馬鹿しい」
「おい元始天尊、それ、どちらが百歩だ?もちろん吾輩が百歩だよな?」
「馬鹿をいえ。宝貝作りで仙人界に貢献をしているわしが百歩に決まっている。なあ、元始天尊」
「吾輩は人参果を人間界でも作ったのだ!吾輩の功績の方が偉大であろう!お前たちもそう言ったではないか!」
「偉大と言った記憶はない」
「ボケたか太上老君!かわいそうに、お前は金丹でも食っておれ」
「なんだと?!」
「なんだ!」
鎮元大仙と太上老君の言い争いが始まったことに元始天尊は密かにほくそ笑んだ。
(玄奘の受けるべき八十一難のことをうっかり本人に話されては困るからな)
元始天尊の背後には香炉がある。
その香炉にくべられているのは気持ちを昂らせるよう、元始天尊が独自に配合した香だ。
(何より本当に、難を与えるものがそれを頭に入れていたら難にならんのだよ)
元始天尊は友人二人にほんの少しだけ悪いと思いながらも、言い争いを聞いていた。
崑崙さんが騒がしくなっているその頃、五荘観もまた、慌ただしくなっていた。
弟子の一人が人参果の異変に気付いたのだ。
「なんか人参果の木が寂しくなっていないか?こんなに果実が少なかっただろうか……」
「えーと、鎮元大仙は崑崙へのお土産に三つ。玄奘様に二つだから……のこりはえーと……足りぬぞ?!三つほど足りぬ!」
「これは由々しき事態だ!月亮さんと風舞さんにお伝えしよう!!」
弟子の二人は月亮と風舞のところへ急いだのだった。




