表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深沙の想い白骸に連ねて往く西遊記!  作者: 小日向星海
第十三章 玄奘と豪邸の三姉妹たち
185/339

【百八十五 准胝観音と瑤姫、玉瑞館の真相を語る】

 箱庭型模擬遊戯宝貝は、その名の通り箱庭の中に入って遊ぶことのできる道具だ。


 仙人たちの暇つぶしにと太上老君が作ったもので、玉瑞館という山中の宿屋を舞台に自由に行動して遊ぶことができる。


 箱庭に入った者の行動によっては、恋愛れんあい路線ルート神秘ミステリー路線ルート死亡遊戯デスゲーム路線ルートに分岐する複雑なものだ。


 もちろん、恋愛無しの、寂れた玉瑞館を盛り立てる商人あきんど路線ルートもある。


「驚いたわ、准胝ちゃんたら突然、模擬遊戯シミュレーションのできる道具はないかと来るんだもの」


 瑤姫は茉莉花茶を淹れながら笑う。


「いやだいぶ前に崑崙で流行っていたのを思い出したんだよ。釈迦如来様からの指示で玄奘を試すように言われてちょうどいいなと」


 准胝観音は茉莉花茶を受け取って言う。


「試す?」


「ああ。玄奘が経典を預けるに相応しいかを調べるためにな」


「ふーん、もう天竺に向けて旅立っているのにいまさらって感じもするけど……」


「まあな。これも玄奘が受けるべき八十一難の一つ、と釈迦如来様はおっしゃっていたが……」


 准胝観音は土産に持ってきた乾燥させた棗とサンザシ飴、月餅を皿に出して瑤姫に勧める。


「で、どうだったのかしら?彼らはどのルートに進んだの?」


 山楂飴を片手にワクワクしながら目を輝かせる瑤姫の問いに、准胝観音は口をへの字に曲げて首を振った。


「……わからん。こいつら、恋愛にもいかんし死亡遊戯デスゲームにもなりそうもない」


「どの路線ルートにも入りそうにないってこと?私の宝石たちの誘惑も退けるなんて……」


 人間に一目惚れして下界に降りたくらい情熱的な瑤姫は、恋愛ルートの制作にも関わっている。


「玉瑞館の女性役には私の素敵な宝石たちの中から選りすぐりの黒曜石オブジディアン藍玉石アクアマリン紅玉石ルビー碧玉石サファイアを入れたのよ?それにも靡かないなんて、息子も言っていたけれど、その玄奘様って人間なのに本当にすごいのねえ」


 瑤姫は袖で口元を隠してクスクス笑った。


「当たり前だろう。元は釈迦如来様の二番弟子だったのだぞ」


 箱庭に入った者はたいてい三姉妹のどれかに惚れて恋愛ルートに進むが、何度も箱庭遊戯を楽しんでいる猛者の中には、隠しキャラの廉黒曜との恋愛ルートを出すことに成功する者も稀にいる。


「あら?でもこれって神秘ミステリー路線ルートではなくて?誰か倒れているわよ」


 瑤姫が箱庭を覗き込んで言う。


 だが准胝観音は眉間に手を当てて首を振った。


「それはうちの仔豚だ。誘惑の一つ、『般若湯アルコール挑戦チャレンジ』のときに寄って来て、酒の匂いに当てられて倒れたのだよ」


「まあ、匂いだけで?大変ね……こらからどうなるのかしら」


「ここまで見て、玄奘が誘惑に負けないことはわかったからもう終わりだよ、終わり。大体そもそもこんなことをする必要なかったんだ」


 時間の無駄だったと准胝観音はそう言って椅子から立ち上がった。


「あら准胝ちゃん、どこに行くの?」


「ちょっと仔豚に灸を据えに、な」


「あら、まあ……ふふ、行ってらっしゃい」


 箱庭を指差していう准胝観音を、瑤姫はクスクス笑って手を振り見送った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なにか怪しいと思ってましたが、まさかの箱庭型模擬遊戯!? 三姉妹の誘惑にも揺らがない玄奘さんさすがですね(#^.^#)
[良い点] アルコールチャレンジという言葉に可笑しさを感じて、ちょっとわらってしまいました。 人間たちももしかしたらこんなノリで神なり仏なりに遊ばれているのかな、と…。 [一言] アルコールチャレンジ…
2024/04/15 16:43 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ