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深沙の想い白骸に連ねて往く西遊記!  作者: 小日向星海
第十三章 玄奘と豪邸の三姉妹たち
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【百八十四 猪八戒、酒気に当てられ倒れる】

 廉黒曜の様子に全く気づかない玄奘は何かを思案するように目を閉じ、そしてしばらくしていいことを思いついた、と言うように手を叩いた。


「そうだ、私たちが旅先で玉瑞館のことを宣伝して回りますよ。そうしたらお客さんもきますし、もしかしたら働きたいと言う方も来ると思いますよ」


「え、あの……」


「こう見えてもその昔、寺で私は凄腕広報の玄ちゃんともよばれていたんです。任せてくださいね。玉瑞館の素晴らしさをきっと伝えてみせますから」


「いや、ありがたいのですがそうではなく、当家の婿に……というか私の夫でも……」


 廉黒曜が玄奘にタジタジになっていると、そこへみんなから料理を褒められ上機嫌になった猪八戒がやってきた。


「黒曜さん、素敵なおもてなし感謝します。お礼と言ってはなんですが、この八戒、皆様のために美味しい甜点スイーツをお作りしたく調理場を──って、お師匠さん、これは?」


「あ、いえ八戒、これは……!」


(しまった……八戒は匂いだけでも酔ってしまうのに……!)


 玄奘は玉龍をみた。


 玉龍の如意宝珠に酒気を抜いてもらおうと思ったからだ。


 だが玉龍は美味しい料理に夢中で、猪八戒の動きにも玄奘の視線にも気づかない。


「ふぇえ」


 次の瞬間、気の抜けた声をだして猪八戒は赤ら顔のまま大きな音を立てて倒れてしまったのだった。


「なになに、何の音?」


 派手に倒れた猪八戒に驚き、三姉妹と歓談していた玉龍と沙悟浄、孫悟空が飛んでくる。


「まあ、八戒様はどうされたのです?」


「八戒はお酒がダメなのです。匂いだけでも酔ってしまってこの通りです。玉龍、こちらへ」


「う、うん!」


 玄奘は猪八戒を助け起こそうとするが、重くて持ち上がらない。


「お師匠さま、お怪我は?」


 沙悟浄が飛んできて、かわりに猪八戒を助け起こした。


「私は大丈夫です。でも八戒が……」


「ふにゃあああ……」


 猪八戒は意味のわからない言葉を呟いている。


「オッサンがこんなになるなんて、よっぽどきつい酒の匂いに当てられたか?」


 孫悟空は瓶子の匂いを嗅いで眉を顰め呟いた。


「うまそうな酒だけど、これはオッサンにはキツイかな……豚だから鼻も利くしなあ」


「これ悟空、呑んではなりませんよ」


 舌なめずりをする孫悟空を玄奘が嗜めた。


「わかっていますよ。のみません」


 果物の方が好きだし、と孫悟空は桃を齧って言った。


 お酒の匂いだけでも倒れるほど弱い猪八戒のため、彼が加わってからは特にお酒には近づかないように、匂いをつけないようにと決めているのだ。


「すみません、こちら下げていただいて、お水をいただけますか」


「は、はい、只今!」


 廉黒曜は廉藍玉に酒の入った瓶子をしまうようにいいつけ、空いた盃に水を注ぐと玄奘に手渡した。


「八戒、お水ですよ」


「うぅ〜ん……」


 和やかな食事の席は一転して慌ただしくなってしまった。




 そして、その様子を遠く離れた地、崑崙で見守っている者がいた。


「全くあのお調子仔豚め、やってくれるわ……」


 准胝観音だ。


 忌々しそうにつぶやかれた言葉だが、その表情は柔らかい。


「准胝ちゃん、宝貝の様子はどうかしら」


「瑤姫」


 そこへ、玉皇大帝の妹で、崑崙の花とも呼ばれる美姫、瑤姫がやってきた。


 准胝観音が今いる場所は瑤姫の居室。


 元々崑崙の仙女でもあった准胝観音は、瑤姫とは友人関係なのだ。


「太上老君が作った箱庭型模擬遊戯宝貝、『玉瑞館の宝石たち』どうかしら?」


「ああ、今見ているがなかなか面白いぞ」


 瑤姫も准胝観音の隣に腰掛け、箱庭を覗き込んだ。


 そこには慌ただしくしている小さな玄奘たちの姿があった。


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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば猪八戒、酒だめでしたね…酒でダメになったことを契機に…僕も実は本当に酒がダメなのですが、嗅いだだけでお酒の匂いって、ダメになったりするんですよね…玉龍の宝玉で回復させることができれ…
2024/04/15 00:15 退会済み
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