【百五十八 龍の如意宝珠】
大興奮の玉龍は、周りのポカンとした様子も気に留めず、自身もまた龍の姿に変化した。
玉龍も大きな龍だが、八爪金龍はそれよりももっと大きく、比べると青大将と錦蛇くらいの差がある。
「八爪金龍様!あ、あの、ボ、ボク、玉龍と言います!初めまして!!」
そう言って玉龍は八爪金龍に頭を下げる。
「なんじゃお主、八爪金龍のことを知っているのか?」
「知っているもナニも!八爪金龍様は龍の中でも1番すごい龍なんだよ!」
意外そうに尋ねる霊吉菩薩に玉龍が大興奮状態で言う。
そして玉龍は自分の四本爪を霊吉菩薩たちに見せた。
「父上や母上みたいな強い龍は五本の爪なんだけど、八爪金龍様はね、なんと爪が八本もあるんだよ!!八本だよ八本!!!」
玉龍は鼻息荒く爪をカチャカチャと鳴らした。
「ま、まあ名前に八爪とついているくらいだからな……」
霊吉菩薩は興奮する玉龍に気圧されたように頰をかいて苦笑いをした。
そんな玉龍の後ろで、八爪金龍は悠然としてゆっくり瞬きをした。
「おお……そこにいるのは富嘉か。久しいなぁ」
「富嘉じゃないです!ボクは玉龍です。鰲閏と富嘉の子です!」
八年金龍は目を細め、玉龍に顔を近づけた。
「ほう!確かに瞳の色はあのやんちゃ坊主と同じものだ。はっはっは!あのやんちゃくれとお転婆が夫婦になり、龍たちをまとめる王と王妃になるとは!」
八爪金龍は驚きに目を見開いてから口を大きく開けて笑った。
「して、なぜここに鰲閏と富嘉の子がここにいるのだ?なぜ陸の上にいる」
「それは……」
玉龍は竜宮を出た経緯を八爪金龍に話した。
「はっはっは!宝珠を燃やしたとな。玉龍よ、其方は父母のやんちゃとお転婆を特に引き継いだようだなあ」
その話を聞いた八爪金龍は呵呵大笑した。
そして自身のもつ如意宝珠を玉龍に見せた。
それには何かで削られたような小さな瑕がついている。
「この瑕は……?」
「この如意宝珠の瑕は其方の父母である鰲閏と富嘉がまだ幼き頃、この宝珠で珠投げをしてつけたものだよ」
「えっ、父上と母上がそんなことを……?」
「この瑕を治すために、このおいぼれはそこな霊吉殿の世話になっておるのだ」
霊吉菩薩から瑠璃のかけらと玻璃のかけらを定期的に与えられることで、如意宝珠を癒しているのだという。
「なんか……ごめんなさい!」
「なぜ謝る。其方が謝ることではないだろう?」
勢いよく頭を下げた玉龍に八爪金龍が首を傾げて笑う。
「これについた瑕はもっと大きかったのだが、おかげでだいぶ小さくなったのだ。龍宮の宝珠も時間がかかるが直せば良い」
「でも龍宮の宝珠はもう無くなっちゃって……」
「そうだったな。はっはっは、おいぼれは聞いたことをすぐ忘れる……ふむ……」
玉龍の言葉に笑った八爪金龍は、しばらく何かを考えてから玉龍の如意宝珠に触れた。
「ならば其方のこの如意宝珠を新たな龍宮の宝珠にすれば良い。其方が力をつけ宝珠を強くすることで、それは新たな龍宮の宝となろう。さすれば再び其方は龍宮に戻れるだろうよ」
「でもボク、もう来るなって言われて……」
孫悟空たちから逃げて海に行った時、門前払いされた時のことを思い出した玉龍は涙ぐんだ。




