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深沙の想い白骸に連ねて往く西遊記!  作者: 小日向星海
第十一章 烏斯蔵国の豚妖怪
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【百四十 猪八戒の拠り所】

 猪八戒が雲桟堂へ骨壷を取りに戻っている間、孫悟空と玉龍は骨壷を埋めるための穴を掘らされていた。


「猿使いと龍使いが荒すぎるよ〜!」


「仕方ないだろ、お師匠様の体を取り戻すまでの辛抱だ。耐えろ玉龍」


「わーん!」


 ヒィヒィ言いながら二人は穴を掘り続けていた。


「もうそれくらいで良いぞ。ご苦労さま」


 ようやく穴掘りから解放され、二人はぐったりと地面に寝転んだ。


「ほら、これをお食べ」


 そう言って准胝観音は荒い息をつく二人の口に何かを放り込んだ。


「む?!」


 孫悟空と玉龍は驚いて口を閉じると、固く丸い感触にカラコロとした口の中で転がる音。


 それからじわりと甘みが広がってきた。


 肉体労働の疲れに染み渡る甘みに、孫悟空と玉龍は涙が出そうになった。


「泣くほど美味いか?ただの甘露水を固めた飴だぞ」


「おいひいよ〜!」


 苦笑する准胝観音に、玉龍は鼻を啜りながら答えた。


 孫悟空の目も潤み、鼻の頭も心なしが赤くなっているようだった。


「大袈裟な奴らだこと」


 それからしばらくして、猪八戒はお骨を収めた骨壷を持ってきた。


 大事そうに抱えたそれを、少し名残惜しそうに准胝観音にわたす。


「本当に埋めてしまうのか?」


「当たり前だろ。本来置きっぱなしにしておくものでもないのだからな」


 准胝観音は骨壷を開け、中を確認して蓋を閉じた。


 そして孫悟空と玉龍が掘った穴の中央に置いた。


「本当に……?」


「くどいぞ、仔豚」


「でもそれはオレにとって大切なものなんだ。アンタが残した、アンタの一部だから……」


「だから毎夜、雲桟堂に戻っていたのだな」


「アンタのそばだけがオレの安らげる場所だからな」


 猪八戒が拗ねたように言う。


 高家で夜を明かさないのは、雲桟堂に安置していた卯ニ姐のお骨のそばで過ごすためだった。


「全く……」


 准胝観音は呆れたようにため息をつくが、その表情は心なしか嬉しそうだ。


 しかし一瞬眉を顰め、猪八戒に何かをよこせと言うように手のひらを上にして向けた。


「な、何だよ?」


「しらばっくれるな。隠し持っているものを出せ」


「な、何も持ってない……っ」


「……本当に?」


 目を眇め、准胝観音が低い声で言うと、猪八戒は下唇を噛んで胸元を抑えた。


「そこか!」


「あっダメっ!」


 准胝観音は素早く猪八戒の胸元に手を突っ込み、そこから首飾りに加工された小さな骨のかけらを取り出した。


「戻ってくるのが遅いと思えば……!」


「うう、だって、だってぇ……!」


 半泣きになる猪八戒に有無を言わさず、准胝観音は宝剣で首飾りの紐を切断した。


「ったく……こんな骨を装身具になどするんじゃない」


 サメや熊の牙じゃあるまいし、と准胝観音は怒り肩で壺まで進み、かけらを入れた。


「ああ……卯ニ姐の形見が……」


「馬鹿者!遺骨など出しっぱなしにしていたら瘴気を呼ぶのだぞ!」


「小さいのなら大丈夫だってぇ……」


「大丈夫なわけあるか!ったく……瘴気がさらに魔を呼び寄せるのだ!」


 メソメソしたままの猪八戒に怒鳴りつけ、准胝観音はさっさと壺に土を被せてしまう。


「あきらめろよオッサン……」


 肩を落とす猪八戒の背中をぽんぽんと叩き、慰めるように孫悟空が言う。


「さっきみたいなのが他にも増えるなんて、もう考えたくないよ……」


 げっそりとして玉龍が呟いた。


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― 新着の感想 ―
悟空と玉ちゃん頑張りましたね(#^.^#) 飴で喜ぶのも可愛い✧♡ そして遺骨に執着する猪八戒さんはちょっと切ないですね。埋めてしまうのは寂しいでしょうが、瘴気を呼ぶのは困りものですね。 猪八戒さ…
[一言] 猪八戒にとっては完全な恋人との別れになるだけに、結構辛かったでしょうね… でもこうやって、ちゃんとけじめをつけることで猪八戒も前を向けるのでしょうね。 そして甘露飴を喜ぶ玉龍たち、可愛い……
2023/10/28 01:57 退会済み
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