【百三十七 予想外の再会】
孫悟空と准胝観音は次々に溢れてくる瘴気を消していた。
孫悟空が瘴気を消すたびに、その残滓を燃やし尽くそうと、准胝観音が火を放つ。
猪八戒と玉龍がみた閃光はそれによるものだった。
「ふむ、良い調子だぞ孫悟空!」
「これ、いつ、まで、出てくるん、だよ!キリがねぇ!」
荒い息を吐きながら如意金箍棒を振り回し、孫悟空は叫んだ。
「地中深く入り込んだ瘴気の本体を浄化するまでよ!お前は暴れるのが好きなのだろう?存分に奮えよ!」
「っても、俺様だって連戦で疲れてるんだよぉおお!」
孫悟空の悲鳴に、准胝観音は申し訳ないような困ったような表情をした。
「あやつが居ればな……」
「あ?なんか言ったか?」
「なんでもない。今はお前しか戦力がいないのだ。お師匠様の体が大切なら、よそ見をするな」
そう言って准胝観音は笑い、矢をつがえて孫悟空の背後に現れた瘴気に向けて放った。
「おっと、そっちにも……!」
孫悟空は如意金箍棒を伸ばして准胝観音の足元から伸び始めた瘴気を叩いた。
涼しげな顔で孫悟空を叱咤していた准胝観音だが、彼女もまた肩で息を吐き、汗だくになっていた。
「だがお前の言うとおり、ちまちま潰していくのは非効率的だ。戦力に少し不安があるが、仕方ない、一気に引き摺り出すぞ」
そう言って准胝観音はボソボソと何かを唱え始めた。
「……よし、もうひと踏ん張りやってやらぁ!」
孫悟空は額から滴る汗をぬぐい、如意金箍棒を構えた時だった。
地面に染み出してきた黒い瘴気がボコボコっと泡立ち始める。
「疾!」
准胝観音は羂索を放ち、その先端を泡立つ瘴気の中へと放った。
その時。
「あー!やっぱりゴクウだった!」
少し焦った声がして、玉龍が降りてきた。
玉龍は大地に着く前に龍の姿から少年の姿に変化する。
「空がピカピカしてなんか変なのが消えたり出たりするし、何やってんの?!それにおシショーサマはどこ?」
「え?ああ、えーっと……」
「おい悟空!こんなところで何騒いでるんだよ。一体何が……」
矢継ぎ早に質問してくる玉龍に、孫悟空はどう説明したものかと考えるものの、引き摺り出される瘴気の元が気になり考えがまとまらない。
玉龍に次いで降り立った猪八戒は、少し混乱気味の孫悟空が助けを求めるように視線を動かした先を見た途端、言葉を失い立ち尽くした。
「卯……ニ姐?」
猪八戒にはすぐにわかった。
容姿は大人びているけれど、長い黒髪も、橙色の瞳も、猪八戒の妻だった仙女の姿と全く変わらない。
違うのは九対の腕と、煌びやかな衣装くらいだ。
「え、誰?」
猪八戒の呟きに、玉龍もようやく准胝観音に気づいたようで、孫悟空に尋ねる。
「あー……」
だが疲労困憊の孫悟空は説明がめんどくさくなり、ため息をついただけだった。
「おや……妾としたことが」
自分に注目が集まっていることに気づいた准胝観音は、羂索を持ったまま苦笑した。
「……仔豚が戻る前に終わらせようと思っていたのだが……見つかってしまったか」
その言葉に猪八戒の顔色が変わる。
「オレのことを仔豚って言うことはやっぱりアンタ卯ニ姐だよな?その姿は?なんなんだよ?!なんで死んだはずのアンタがお師匠さんの体使ってこんなことしてんだよ!」
怒ったように言う猪八戒に、准胝観音は首を振る。
「落ち着け。悪いが今は取り込み中だ。あとで答えてやるから今は手を貸せ」
そう言うと、准胝観音は瘴気に突っ込んだ羂索を引っ張ろうとした。
「む……?」
だが彼女の予想よりも羂索は重く、逆に准胝観音が引き込まれそうになってしまった。
「ぐっ……!」
「危ない!」
迷わず猪八戒は飛び出し、羂索を持つ准胝観音の腕を掴んだ。




