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深沙の想い白骸に連ねて往く西遊記!  作者: 小日向星海
第十一章 烏斯蔵国の豚妖怪
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【百二十六 卯ニ姐の宝貝】

「これは……!」


 閃光の煙が示した先にあったのは、錆びて黒く煤けた色になった、オイルランプだった。


 水差しのような形だが、それに比べて平べったいこのオイルランプには、緑玉エメラルド瑠璃ラピスラズリ紅玉ルビーなど、さまざまな宝石が飾られている。


 高翠蘭はオイルランプを手に取り、埃をはらうように撫でた。


 その時のことだった。


 突然、オイルランプの注ぎ口から、キラキラと光る薄紫色の煙がもうもうとたちのぼったのだ。


「な、なに?!」


 高翠蘭は驚いた衝撃で尻餅をついた。


 その間にも薄紫の煙は何かの形を作ろうと集まり、やがて手のひらに乗るくらいの小さな少女が現れた。


 浅黒い肌に薄紫の髪。それから尖った耳。


 体の大きさだけでなく、普通の人とは何処ちがう容姿をしたその少女は不思議な格好をしていた。


 頭には金のラインが一本入ったとんがり帽子を被り、その先端からは透き通った紫色のヴェールが下がり、さながら彗星の尾のようにもみえる。


 短めの藍色のベストに胸部を覆うチューブトップ。


 腹部は寒いというのに丸出しで、おへその周りには、見たこともない不思議な紋様が、紫に煌めく絵の具のようなもので描かれている。


 腰の辺りにはシャラシャラと音を立てる、アルシャークの踊り子が身につける玉飾りをあしらったベルトに、ふっくらとしたハーレムパンツ。


 靴は平たく先端が上向きに尖っている。


 菫色の長い髪はキラキラ輝く金色のチェーンで彩られ、耳、首、手首、足首には煌びやかな装飾のアクセサリーが飾られている。


 高翠蘭はその美しさに一瞬で目を奪われた。


 オイルランプから出てきた小さな女の子は高翠蘭に気がつくと、深くお辞儀をした。


『私は卯ニ姐様にお使えしていた魔人、バナフ。卯ニ姐様の最後の望みであった、私を目覚めさせた方へお預かりしていたものをお渡しします』


 バナフはアルシャーク語でそういうと、指をパチンと鳴らした。


 すると、高翠蘭の足元に深緑色の縄のついた、鏢が現れた。


『これは?』


 バナフにわかるよう、高翠蘭はアルシャーク語で尋ねた。


『卯ニ姐様の作られた宝貝、“封魔打尽網”でございます。一度投げれば魔物を拘束し、動きを止めることができる武器です』


『武器……宝貝……』


 宝貝は仙人たちが使う便利な道具だと、卯ニ姐から聞いたことがある。


『卯ニ姐は魔人の叶える三つ目の願いに、こちらを来たるべき時に必要な人に渡すことを望まれたのです。さあ、お受け取りください』


 促され、高翠蘭は卯ニ姐が残した宝貝、封魔打尽網を手に取った。


『縄を解き、鏢を投げれば自分で獲物まで飛んでいきそれを拘束できるのです』


 バナフの言葉に高翠蘭は胸が高鳴るのを感じた。


 これがあれば自分も役に立てる、と。


『私の役目はこれで終わりです。……はぁ、ようやくランプから解放されるわ〜!』


 バナフは高翠蘭が封魔打尽網を受け取ったのを見て満足そうに笑み、最後にそう言ってオイルランプと共に姿を消した。


(ありがとうございます、卯仙女!)


 高翠蘭は卯ニ姐の祭壇に感謝の気持ちを込めて一礼をし、形見とも言える宝貝を手に扉へ向かった。


 扉の向こうからは激しく鈍い音が聞こえている。


 それに混じって微かに聞こえてくるのはルハードの苦しそうな息遣いだ。


『ルハード、ここを開けて!』


 高翠蘭は扉を叩いて呼びかけた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔神が出てくるあたり、さすがインターナショナルな地域であるチベットですね…シルクロードを通じていろんな万物が入ってきているんだろうな、と思うとロマンを感じます。 さて、パナフの道具は無事に使…
2023/08/19 15:52 退会済み
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