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深沙の想い白骸に連ねて往く西遊記!  作者: 小日向星海
第十一章 烏斯蔵国の豚妖怪
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【百十三 師の図星を指す孫悟空】

 ルハードの言葉に猪八戒は「ふうむ」と唸り、顎に生えた無精髭を撫でた。


「問題はどうやってマルティヤ・クヴァーラをこちらまでおびきだすか、なんだが……」


 いまシャフリアルになりすましているマルティヤ・クヴァーラは高翠蘭の屋敷にいる。


 街中や屋敷の中で戦うわけにはいかない。


 なので、討伐のためには雲桟堂があるこの森まで誘い出さなければならない。


「では私が……」


「俺様が行く!」


 玄奘が何かを言おうとしたのを察した孫悟空は、食い気味に立候補した。


「なんですか悟空、師の言葉を遮るとは!」


「だめですよお師匠様、また自分が変装して高翠蘭と入れ替わってなんかする、みたいに気になってたでしょ」


 憤慨する師に引かず、孫悟空は仁王立ちした。


 図星をさされた玄奘は、孫悟空がなぜわかったのかと目を丸くする。


 孫悟空はそんな師の様子にため息をついた。


「なんでお師匠様はそんなに前に出たがるんですか!この前観音菩薩に言われた事、もうわすれました?」


「私も役に立ちたいのです!それに私は玉果なのでしょう?私なら、高様を危険に晒すことなくその怪物を誘き寄せられると思ったのです」


「それはそうかもしれませんが、お師匠様は大切な役目を負っている身なのですよ!そんな危ないことさせられるわけないでしょう!」


 師弟の言い争いがヒートアップしそうなところへ、ルハードが「チョットいいデスカ」と挙手をした。


「マルティヤ・クヴァーラ、基本的にオトコ食べない。師匠食べたのハ皮を奪う目的のため。ギョクカのことはヨク知らないけど、ゲンジョーさんが行ってもあのバケモノは多分アナタに見向きもしナイ」


「ということで、お師匠様はここで待っていてくださいね!」


 勝ち誇ったように言う孫悟空に玄奘は悔しそうに俯いた。


「私は何の役にも立てないのでしょうか……」


「そんなことないですよ。お師匠さんには結界を張ってもらいます」


 まあまあ、と猪八戒が慰めるように言うと、玄奘は顔をあげ首を傾げた。


「結界……ですか?」


「はい。マルティヤ・クヴァーラを捕えるための羂索けんさくじんを作るんです。僧であるあなたの力をぜひ頼りにしたい」


「任せてください!」


 猪八戒の頼みに玄奘はイキイキと頷いた。


 羂索とは千手観音や不動明王がもつ、五色の糸を撚り合わせた縄で、仏敵を縛ったりするのに使う。


 猪八戒は羂索の機能を持つ陣を張り、マルティヤ・クヴァーラを捉えるのだと言った。


「卯ニ姐の残した書によると、陣の維持には真言を唱え続けなくてはならないみたいで。妖怪のオレにはあんまり馴染みのない物だから、お師匠さんにやってもらえると助かるんですよ」


「そうですか……羂索だと、千手観音様の真言が何かですか?」


「いえ、今回は敵が敵なので、不動明王にします」


「不動明王……!」


 不動明王は五大明王の中心的な存在。仏教界最強の明王である。


 その力を借りるほど、マルティヤ・クヴァーラは強いのだろう。


 任せられたマルティヤ・クヴァーラを捕えると言う重大任務に、玄奘は緊張した。


「まあ羂索陣についての詳しくは、オレもよく知らないんで、後で卯ニ姐の書物を使いながら説明しますね」


「はい……!」


 学者でもある玄奘は、猪八戒の持つ古びた書物にも興味をそそられた。


 その時、場を整えようと孫悟空が手を叩いた。


「それじゃあ、作戦の確認な。俺様が高翠蘭に変化して本物と入れ替わり、そのマルティヤ何ちゃらをここまで連れてくる、でいいな?」


「んー、でもゴクウにスイランさんの振りができるとは思えないけどなあ……」


 玉龍の指摘に、その場にいる誰もが「確かに」と頷いた。


「なんだよ、今更変えるとか言わないよな?」


 ここまで決めたのに、と孫悟空は憮然とした。


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― 新着の感想 ―
[一言] 確かに、えらくがさつな悟空に翠蘭はちょっと難しいかもですね…でも誰が最適か、と言われるとまた難しいですが…。
2023/07/11 23:34 退会済み
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