(故郷)6
慌てる僕をエリカが笑う。
「どうしたの、寝坊して何を怒ってるの」
「怒ってるのは寝坊した自分にだよ。
エリカも早く準備して、奴はとっくに街を離れた」
事態を飲み込んだエリカ、顔色を変えた。
「ええっ、もうなの」
「大金の仕事だから張り切っているんだろう。
こっちも急ごう」
「追い付けるの」
「追い付いてやるさ」
朝食は抜きで街を飛び出した。
「エリカ、身体強化だ」
「はい」
獣人の特性で直ぐに身体強化を熟した。
ササッと僕を追い越した。
道行く人達や馬車まで追い越して行く。
人目を引くが、構ってはいられない。
僕もエリカを追った。
「お姉ちゃん、この方角でいいのね」
走ってから聞くエリカ。
頓着しない性格が羨ましい。
このまま大きく育ってくれよ。
マップのストーカーでレイガンの位置を確かめた。
先行しているが、乗っている馬車は全力疾走ではない。
町から町を結ぶ駅馬車のようで、ゆったり走行していた。
馭者が馬も馬車本体も疲弊せぬように心掛けているのだろう。
ある程度走ったところで僕はエリカを鑑定した。
HPもMPも半減していた。
疲労困憊する前にストップさせた。
「止まって、少し休もう」
「まだ走れるよ」
「大丈夫、奴は僕の目の届く位置にいる。
安心して朝食にしよう。
お腹減っただろう」
僕は肩掛けバッグ経由で亜空間収納から朝食を取り出した。
昨日街中で買って置いたパンとオレンチジュース、二人分だ。
エリカが朝食を終えると聞いてきた。
「尾行するのは良いんだけど、それからどうするの。
大事な事なのに聞くのを忘れていたわ」
「奴が弟を買い戻して遠くへ離れたら、傭兵団を潰すわ。
一人も逃がさない。
死んだ皆の敵討ちよ。
エリカは近くで見ているだけで良いからね」
「私もお父さんお母さんお兄ちゃん、それから妹も殺されたの。
だから私も何かお手伝いしたい」
僕を思い詰めた顔で見上げた。
女の子の手を血で汚させたくないが、事情が事情だけに断れない。
駅馬車は二つの村に立ち寄ったが、肝心のレイガンは下りない。
三つ目の村で昼食弁当を買っただけで、また乗り込んだ。
そしてアイリール山の麓の町に来ると、ようやく下車した。
この近くに傭兵団の拠点があるのだろう。
三十分ほど遅れて町に着いた。
僕は余裕だったが、エリカは疲労困憊。
それでも僕の治癒魔法上級の力技で事無きを得ていた。
「ふうふう、お姉ちゃん、身体も足も軽いけど、気分が重い」
心身のバランスを崩したらしい。
要研究だな、治癒魔法。
僕達は先着しているレイガンが泊まった宿の近くに宿をとった。
少し離れているから問題はないだろう。
エリカがベッドにダイブしたので、僕は手空きになった。
そこで野次馬気分、町にいる者達を鑑定した。
見つけた、ブラッシュ傭兵団。
丁度、二人組が一本向こうの通りを歩いていた。
休暇か、買い物かは知らないが都合が良い。
マップにマーカーした。
エリカの隣にダイブしてストーカー開始。
二人組は真っ直ぐに娼館に入っていった。
これではストーカーする意味がない。
しようがないのでレイガンを再チェックした。
こちらは宿で動かない。
詳細に鑑定すると、疲労と出た。
どうやら馬車移動で腰に来たようだ。
再度、二人組をチェック。
あっ、お姉さんと上手くやっている。
もう一人は熟女と上手くやっている。
これは当分出て来ないな。
マップを広げた。
町の外へ、町の外へ。
精度を落とし、人の集まりのみを探した。
見つけた。
アイリール山により近い小川沿い。
そこに人と馬が集まっていた。
建物が幾棟も並んでいた。
一人一人を調べた。
何れもブラッシュ傭兵団。




