(道中)17
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『マラウス市』の治安は市警邏局が全面的に司っていた。
門衛から、船舶管理と監視業務、灯台勤務、魔物駆除、
そして市内の警邏と多岐にわたっていた。
兵力は千。
全てが兵卒ではない。
兵站業務もあるので、実働部隊は半数ほど。
現在、夜間なので稼働している人員は少ない。
ほとんどの部門が窓口を閉じていた。
明かりがあるのは夜警と残業している部門だけ。
夜警部門に市民が駆け込んで来た。
それも一人や二人ではない。
「港で騒いでる連中がいる」
「あれは借金奴隷ではないか」
「乱闘していた」
「奴隷商あたりで揉めている」口々に言う。
そこで一部隊十名を向かわせた。
ところが、それっきり。
音沙汰なし。
そこで二十名を増援で送り出した。
これも音沙汰なし。
苦慮した宿直長は現場に部隊ではなく斥候を派遣した。
同時に市警邏局長にも連絡員を走らせた。
呼び出された市警邏局長は宿直長の説明を聞いて、
複数の斥候を市内各所に派遣した。
一方で、事件現場から味方死傷者を救出させた。
死者か重傷者、重傷者にしても治癒魔法で治せぬ者ばかり。
敵が強力な魔法使いでは宿直のみでは対処しきれぬと判断、
ただちに非常招集を行った。
本来なら冒険者ギルドの手も借りるのだが、
時刻柄、依頼しても集まらない。
市兵のみで解決せねばならぬ苦しい状況。
それでも市警邏局長としての責からは逃れられない。
市長にも連絡員を走らせた。
局長の執務室に全ての斥候が戻って来て、
それぞれの受け持ち地区の状況を報告した。
局長は市内地図片手にそれを分析した。
魔法使いを含む不穏分子が潜む場所を特定した。
港湾地区。
空き倉庫にでも隠れているのだろう。
港湾地区を閉鎖し、一つ一つ虱潰しに当たらせる。
ただちに実働部隊を再編した。
敵魔法使いの破壊力を察するに、風魔法中級以上は確か。
それに対応できるスキル持ちの兵を一つの部隊に纏めた。
剣術中級二名、槍術中級一名、火魔法中級一名、
土魔法中級二名、弓術初級三名、水魔法初級二名、
そして治癒魔法初級二名。
彼等を実働部隊の核とした。
局長自ら陣頭指揮を執る為に港湾に赴いた。
昼間と違い倉庫街は寝静まっていたが、漁船の溜りは違っていた。
朝陽が上る前に沖に出ようと、その準備を開始していた。
魚市場も明かりが点いた。
探知魔法初級の斥候の一人が怪しい倉庫を見つけた。
「百人近くいます。
全員が武装しています。
倉庫の裏には荷馬車が十輌。
それで逃げるつもりのようで、荷物が積まれています。
奴隷の首輪は見た限りでは、一人もつけていません」
首輪は何らかの手段で外したのだろう。
全員、奴隷と看做しても問題ないだろう。
「魔法使いはどうだ」
「魔法杖を持った者が六名います」
六名とは予想外だ。
全員が倉庫内にいるうちに焼き討ちし、
逃れて来た者は捕らえるのではなく、数で持って個別に潰す。
鎮圧する手段はこれしかない。
だからと言って、市警邏局は無法者ではない。
兵を倉庫所有者の元に走らせ、確認させた。
倉庫内の人間はそちらが雇用している人間かどうか。
違うそうだ。
焼き討ちまで知らせると厄介になるので、そこは内緒。
市当局の消防部門への通知にも怠りなし。
不穏分子捕縛の際に出火の可能性大、と。
これで持てる手は尽くした。
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