(道中)13
厳つい顔の奴隷がおずおずと僕に尋ねた。
「あれはどうして」
「あのまま外に飛び出されたら、ここの事がバレるだろう」
「呼び止めればよかったじゃないか」
「面倒臭いだろう」
僕は皆を見回した。
「僕に従ってくれ。
奴隷に戻りたい者は従わなくていい。
首に首輪を戻してやる。
従う者はまず、こいつらを片隅に片付けるんだ」
聞き分けがいい。
僕の果断さを理解したのだろう。
泣き喚く二人をテキパキと運んで行く。
片付け終えた連中に尋ねた。
「生半可な方法じゃ町を出られない。
まず武器が必要だね。
心当たりはないかい」
亜空間収納に武具一式が入っているが、
ここで手の内を晒すつもりはない。
すると厳つい顔が言う。
「この倉庫に輸入した武器がある」
他の連中も心当たりがあるらしい。
積み上げられた木箱の山に駆け寄った。
次々に下ろし、木箱三つを選り分けた。
梱包を解き、上蓋を開けた。
最初の奴が長剣を取り出した。
「これなら魔物でも叩き切れる」
暫く待っていると倉庫の持ち主が戻って来た。
供は護衛二名。
こちらは奴隷ではない。
二人揃ってD級の冒険者だ。
スキルもたいしたものではない。
その三人が疑問も持たずに倉庫に入ってくると、
物陰に隠れていた元奴隷十名が一斉に駆け寄った。
四名が出入口の観音扉を閉めた。
六名が長剣を振り翳して三名を問答無用で襲う。
三名に反撃の機を与えない。
優勢に事を進めた。
日頃の恨み爆発なのか、一撃では殺さない。
僕はエリカをローブの中に入れ、目と耳を塞がせた。
目の前の状況は目にも、耳にも入れさせない。
子供の教育に悪いからね。
僕は厳つい顔を呼び寄せた。
「ジョニー、こっちに来て」
ジョニーが怪訝な顔で来た。
「どうして名前を、もしかして」
「乙女の詮索はしない」
鑑定した。
それを、いちいち説明するのも、もどかしい。
そうと察したのだろう。
ジョニーが頷いた。
僕はもう一人を呼び寄せた。
「マット、君もこっちに来て」
一番大柄な男が僕を睨み付けた。
それでも不承不承、足を進めた。
「ジョニーがリーダー。
マットはサブリーダー。
二人で皆を纏めて欲しい」
二人は互いに顔を見合わせるが、肩を竦めるだけで、
言葉は発しない。
納得したと言うことだな。
勘で役割を決めただけなんだけど。
僕は二人に尋ねた。
「借金奴隷は海外には売られないのか」
ジョニーが教えてくれた。
「この国に登録されてる借金奴隷は売られない。
売ったら処罰される」
マットも教えてくれた。
「輸出される奴隷の多くは非合法な奴隷だ」
「非合法って、それは」
ジョニーが苦虫を嚙み潰したような顔で言う。
「街中で誘拐したり、他国で拉致したりした奴隷が非合法。
本来、売られる奴隷は登録されるものなんだ。
しかし、それを平気で破る奴等がいる。
儲かるからね。
そんな奴等が来るのが、この港なんだ。
海外へ売っちまえば足がつかない」




