(道中)12
人壁の圧力で近くの倉庫に連れ込まれた。
中では幾人もの労働者が働いていたが僕達には目もくれない。
木箱や厳重に梱包された荷物の仕分け作業に専念し、
倉庫の右側に積み上げて行く。
中に連れ込んだ安心感なのか、人壁がばらけた。
二名が倉庫の出入口に走り、横広の観音扉を閉めた。
天井の魔道具【天井灯】があるとは言え、倉庫内は些か暗い。
仕分け作業をしていた中から一人が歩み寄って来た。
奴隷の首輪をしていた。
厳つい顔で僕達を連れ込んだ六名を見回した。
「つまんねえ事してんじゃねえよ」
「何のことだ」
「この二人、奴隷商に売り捌くつもりだろう」
「余計なお世話だ、さっさと仕事に戻んなよ。
騒ぎんなると親方が飛んで来て、その首輪、締めちまうぞ」
首輪に施されている術式に所有者もしくは管理者として、
親方が登録されているのだろう。
ただし生殺与奪の権利ではない。
逆らうと魔法で首輪を稼働させ、首を締め付けるところまでだ。
ちょっとした魔力さえあれば稼働させられるので、
魔道具【奴隷の首輪】は重宝されていた。
厳つい顔の奴隷は僕達を痛々しそうな顔で見るが、
それ以上は口にしない。
悔しそうに踵を返した。
六名のあざけりを背に、仕分け作業に戻って行く。
僕は六名に尋ねた。
「本当に僕達を奴隷商に売るつもりなのか」
「僕達、へっ、売るつもりもつもり、売ってやるよ。
諦めな、隣が奴隷商だから。
ちょっと待ってな、呼んでくるからよ」
「僕達じゃ、船旅に耐えられないよ」
「別の売り込み先もある、心配すんなって」離れようとした。
有罪確定。
僕は即座に風魔法を起動した。
何時もの使い勝手のいい風玉・ウィンドボール。
貫通力特化を六発、待機。
六名の右膝をロックオン、Go。
ほんの一瞬で六名の右膝が砕け飛んだ。
鮮血を撒き散らし、六名揃ってドッと倒れた。
五月蠅い悲鳴。
僕はエリカの手を引いて血から逃れた。
血で汚れるのは趣味じゃない。
肩掛けバッグ経由で亜空間収納から魔法杖を取り出した。
魔法杖に干渉した。
これで魔法杖の【自動魔力供給】の恩恵を受けられる。
賢いね、僕ちん。
仕分け作業をしていた者達の手が止まっていた。
呆けた顔でこちらを見ていた。
僕は連中を鑑定した。
借金奴隷ばかり。
十二名。
この国出身、種族は様々。
「ごらんの通りだ。
文句があるなら掛かって来いよ」言ってみた。
一人も前に出て来ない。
エリカが言う。
「みんな怖がってるよ」
そこで僕は方針を変えた。
「奴隷の首輪を外すから、希望者はこっちへ来て」
最初に動いたのは、さっきの厳つい顔の奴隷。
疑問符を浮かべながら歩み寄って来た。
「本当にできるのか」
「出来ないことは言わない。
手が届かないから前で跪いて」
素直に跪いた男の首輪に手を伸ばした。
鑑定で調べた。
やはり下位職の手になる汎用品。
錬金魔法を重ね掛け、首輪の術式に干渉した。
ちょちょいのちょい。
開錠、パチンと音を立てて外れた。
せっかくだから首輪を頂いた。
肩掛けバッグ経由で亜空間収納に取り込んだ。
結局全員の首輪を外した。
喜んだ二名が奇声を上げ、倉庫を出ようと駆けて行く。
「借金がなくなった、キャッホー」
「うほっほー」
後先考えぬ奴が湧いた。
つける薬はない。
風魔法を起動した。
風玉・ウィンドボール。
貫通力特化を二発、待機。
両者の右膝をロックオン、Go。
両者の右膝が砕け飛んだ。




