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虻蜂虎S'。  作者: 渡良瀬ワタル
44/285

(道中)12

 人壁の圧力で近くの倉庫に連れ込まれた。

中では幾人もの労働者が働いていたが僕達には目もくれない。

木箱や厳重に梱包された荷物の仕分け作業に専念し、

倉庫の右側に積み上げて行く。

 中に連れ込んだ安心感なのか、人壁がばらけた。

二名が倉庫の出入口に走り、横広の観音扉を閉めた。

天井の魔道具【天井灯】があるとは言え、倉庫内は些か暗い。

 仕分け作業をしていた中から一人が歩み寄って来た。

奴隷の首輪をしていた。

厳つい顔で僕達を連れ込んだ六名を見回した。

「つまんねえ事してんじゃねえよ」

「何のことだ」

「この二人、奴隷商に売り捌くつもりだろう」

「余計なお世話だ、さっさと仕事に戻んなよ。

騒ぎんなると親方が飛んで来て、その首輪、締めちまうぞ」

 首輪に施されている術式に所有者もしくは管理者として、

親方が登録されているのだろう。

ただし生殺与奪の権利ではない。

逆らうと魔法で首輪を稼働させ、首を締め付けるところまでだ。

ちょっとした魔力さえあれば稼働させられるので、

魔道具【奴隷の首輪】は重宝されていた。

 厳つい顔の奴隷は僕達を痛々しそうな顔で見るが、

それ以上は口にしない。

悔しそうに踵を返した。

六名のあざけりを背に、仕分け作業に戻って行く。


 僕は六名に尋ねた。

「本当に僕達を奴隷商に売るつもりなのか」

「僕達、へっ、売るつもりもつもり、売ってやるよ。

諦めな、隣が奴隷商だから。

ちょっと待ってな、呼んでくるからよ」

「僕達じゃ、船旅に耐えられないよ」

「別の売り込み先もある、心配すんなって」離れようとした。

 有罪確定。

僕は即座に風魔法を起動した。

何時もの使い勝手のいい風玉・ウィンドボール。

貫通力特化を六発、待機。

六名の右膝をロックオン、Go。

 ほんの一瞬で六名の右膝が砕け飛んだ。

鮮血を撒き散らし、六名揃ってドッと倒れた。

五月蠅い悲鳴。


 僕はエリカの手を引いて血から逃れた。

血で汚れるのは趣味じゃない。

肩掛けバッグ経由で亜空間収納から魔法杖を取り出した。

魔法杖に干渉した。

これで魔法杖の【自動魔力供給】の恩恵を受けられる。

賢いね、僕ちん。


 仕分け作業をしていた者達の手が止まっていた。

呆けた顔でこちらを見ていた。

僕は連中を鑑定した。

借金奴隷ばかり。

十二名。

この国出身、種族は様々。

「ごらんの通りだ。

文句があるなら掛かって来いよ」言ってみた。

 一人も前に出て来ない。

エリカが言う。

「みんな怖がってるよ」

 そこで僕は方針を変えた。

「奴隷の首輪を外すから、希望者はこっちへ来て」


 最初に動いたのは、さっきの厳つい顔の奴隷。

疑問符を浮かべながら歩み寄って来た。

「本当にできるのか」

「出来ないことは言わない。

手が届かないから前で跪いて」

 素直に跪いた男の首輪に手を伸ばした。

鑑定で調べた。

やはり下位職の手になる汎用品。

錬金魔法を重ね掛け、首輪の術式に干渉した。

ちょちょいのちょい。

開錠、パチンと音を立てて外れた。

せっかくだから首輪を頂いた。

肩掛けバッグ経由で亜空間収納に取り込んだ。


 結局全員の首輪を外した。

喜んだ二名が奇声を上げ、倉庫を出ようと駆けて行く。

「借金がなくなった、キャッホー」

「うほっほー」

 後先考えぬ奴が湧いた。

つける薬はない。

風魔法を起動した。

風玉・ウィンドボール。

貫通力特化を二発、待機。

両者の右膝をロックオン、Go。

両者の右膝が砕け飛んだ。

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