(道中)8
脇街道を行き交う馬車や旅人が多い。
どこへ向かうのかは知らないが、安心して進めた。
七日目の夕刻、町の外壁が見えてきた。
門衛が四名。
鼻が。
これは。
潮の香りが鼻をくすぐった。
ジュリアの記憶にあった港町だ。
僕はエリカに注意した。
「これから先は僕が姉でエリカは妹だ」
「はい、ジュリアお姉さん」
素直なのは助かるが、これは恥ずかしい。
まるで羞恥プレイ。
でも周知される必要がある。
「んっ・・・、うん、いいか。
人見知りの振りをして僕の後ろに隠れてるんだ。
面倒事は全部、僕が引き受ける。
それからフードは被らない。
顔を晒して人見知りしながら歩く、いいかい」
「人見知りね、任せて」平たい胸をドンっと叩いた。
『マラウス市』
ベランルージュの港湾都市。
人口5万人。
隣の大陸との貿易で栄えている。
僕は冒険者ギルドカードを提示した。
門衛は確認すると僕とエリカを見た。
「連れは」
「妹です。
仕事に就いてないのでタグもカードも持ってません」
エリカは僕の背中に隠れた。
チラチラ、顔を覗かせる。
演技過剰じゃないかな。
門衛が僕とエリカに笑顔を向けた。
「ここへは何をしに来たのかな」
「海を見たいのと、船の見物です」
「ううん、まあいいか。
タグもカードも持ってない場合、
大人なら入場料が1000ベレルなんだが、子供だしな。
いいよ、入って」
「ありがとう」
「ありがとう~」
表通りの石畳は色とりどり。
金に物を言わせて各地から買い集めたのだろう。
当初は美しいものだったに違いない。
でも今は補修跡がやけに目立つ。
年齢だけは隠せない。
行き交う人々の服装には海外との貿易の影響が見て取れた。
明らかに王都とは趣きが異なる。
あちらが優雅なら、こちらは派手。
緩い下り坂の先、遥か向こうに見えた。
エリカが声を上げた。
「あれが海なの」
「そうだよ、このまま下って行くと港が見える。
エリカは覚えているかな」
奴隷にされたジュリア達が連れて来られたのが、この先の港。
奴隷商資格を持つ貿易商人に転売された。
「長い船旅に耐えられん奴はいらん。
買う前に鑑定で調べさせてもらうぞ」
「長い付き合いだ、今更だろう。
弱い奴は王都で売るさ。
ようく調べて、後で文句を言わんようにしてくれ」
四輌の幌馬車の檻に大勢が荷物のように詰め込められていた。
ジュリアの村だけでなく周辺三村が襲われ、
殺されるか捕らえられるかした。
大勢いたが、ここに運ばれる途中で何人もが死んだ。
死体は路肩に投げ捨てられた。
「このガキ共はいらん、持ち帰れ」
弱ってる子供六名が売れ残った。
ジュリアとエリカもいた。
王都へ向かう途中でエリカが売れた。
残ったのは五名。
何れも知らぬ子供ばかり。
その五名も王都でジュリアより先に売れた。
船が見え、港湾施設が目の前に広がって来た。
港湾は大雑把なコの字型に整えられていた。
右の岸壁に魚市場があり、接岸・離岸する漁船で賑わっていた。
右の端の造船所に漁船二隻、商船一隻。
正面と左の岸壁は商船ばかり。
停泊中が五隻、出港して行くのが二隻、入港して来るのが一隻。
陸上には倉庫や商会が建ち並び、木箱が山積され、
大勢が蟻のように働いていた。




