(旅立ちに向けて)11
野営地の外は丈の高い雑草で一面が覆われていた。
風で凪ぐ草地に強引に着地した。
固い雑草を踏みしだき、身を伏せた。
手入れされてないので容易に身が隠せた。
四人目の声が追いかけて来た。
「待て、逃がさんぞ」
だけど奴は察知魔法は持っていない。
敷地の手前で足を止めた。
自制心があるのだろう。
ご立派。
僕は悪戯心が湧いた。
試したい、試したい。
警邏局の人員なら経験豊富だろう。
奴の剣術中級スキルの威力を見てみたい。
直ぐに風魔法を起動した。
破裂力特化の風玉・ウィンドボールを一発、待機。
貫通力特化の風玉・ウィンドボールを一発、待機。
奴の右膝と左肩をロックオン、ホーミング。
Go。
透明な攻撃魔法が空気を揺らがせて飛んで行く。
奴は僕が身を隠している辺りを睨む様に見据えていた。
方向だけは分かっているのだろう。
奴の動きが一変した。
素早く後退し身構えた。
そして視線を左右に走らせた。
どうやら攻撃魔法の気配を捉えている気配。
奴が長剣に魔力を纏わせた。
それでもって右に一閃。
一発目の風玉を、「スパッ」と真っ二つ。
さらに左足を引きながら、返す刀で下から上へ切り上げて一閃。
二発目の風玉をも、「スパッ」と真っ二つ。
巧みな剣技で攻撃魔法を無効化した。
凄い、凄い。
流石は剣術中級。
僕の風魔法をいとも簡単に無効化した。
でも威力は風魔法初級なんだけどね。
「大丈夫か」
「手強いのか」
「察知するぞ」
奴の同僚三人が捕縛した連中を転がして助勢に来た。
二人が剣術中級。
一人が槍術中級と察知魔法中級。
その三人目が察知魔法を起動し、僕の魔法起動を捉えた。
「攻撃魔法が来るぞ」
手練れが四人。
これは命のやり取り。
躊躇いはない。
僕は威力を中級にした。
破裂力特化の風玉・ウィンドボールを四発、待機。
貫通力特化の風玉・ウィンドボールを四発、待機。
四人の腹部と背中をロックオン、ホーミング。
Go。
さきの奴は目が慣れたのか、「スパッ」「スパッ」と断ち割った。
二人目は初撃を一閃したものの、背中に被弾。
ドンッ。
「うわー」
三人目も初撃は一閃した。
しかし二撃目とは相打ちの形、衝撃で吹き飛ばされた。
ドンッ。
「あー」
四人目の察知魔法持ちは初撃二撃ともに対処できなかった。
腹背に被弾した。
ドンッドンッ。
「うげっ」
僕は身体強化を解いて踵を返した。
連中はあの有様では追跡してこないだろう。
草地を走り抜け、目の端に映る森に駆け込んだ。
木陰に身を寄せて鑑定した。
『初心者の森』の西端だった。
近くに魔物はいない。
こちらの戦闘に気付いて避けているのだろう。
しかし、広いな~初心者の森。
ここまで広がっていたとは。
あっ、腹減った。
お昼にしよう。
僕は土魔法で辺りを整地し、椅子と丸テーブルを作り出した。
そこに青空市場で買って置いた『カレー弁当』を取り出した。
竹コップも。
いただきます。
おっ、温かい、美味い。
辛さよりを上回る美味さ。
ほんとう、異世界の食事は最高だ。
魔法杖があるので安心して食事できる。
修羅場の直後にこれ。
僕も随分、図太くなったものだ。




