(旅立ちに向けて)5
いつもより早くスラムに着いた。
明日からの旅に気が急いているせいか、
遠足を待つ小学生の気分、ルンルン。
気分はそうでも周辺への警戒は緩めない。
鑑定で安全を確認して何時もの場所に入った。
闇魔法を並行起動してダークバリアを張った。
今日は錬金するので半径3メートル、高さも3メートルのドーム。
さあ旅の準備だ。
目の前に自前のフード付きローブを並べた。
深緑、若緑、灰緑、三色の革製のローブ。
それに茶色の革長靴を三足。
対象の品数は計九つ。
錬金魔法を重ね掛け、起動した。
目の高さに半透明の画面が現れた。
ただの画面ではない。
イメージすれば、それを勝手に画面が文字化してくれる。
そして最適な文章に組み替え、術式へと導いてくれる。
まずは付与する術式。
イメージした。
寒さには防寒、暑さには防暑、雨には防水、塵芥には防塵、
汚れには防汚、切れない防刃、燃えない防火。
これら七防を一つの術式に纏めた。
【防寒、防暑、防水、防塵、防汚、防刃、防火】
これだけでは片手落ち。
不具合が出たら自動的に修復する機能も必要だ。
【自動修復】
そうそう、僕は成長する、たぶん。
自動的にサイズを調整する機能も必須だ。
【自動サイズ調整】
もう一つ。
術式の動力となる魔力を、使用者当人の魔力に依存するのには、
異存がある。
当人の魔力ではなく、これも術式によって供給すべきだ。
イメージした。
周辺の魔素を吸収し、魔力に変換して術式の動力とする。
【自動魔力供給】
次。
他者からの鑑定・干渉を拒絶する。
それには異世界魔法理解にはない概念を取り入れる。
ブラックボックスとコーティング。
【ブラックボックス、コーティング】
あっ、忘れていた。
盗難対策も必要だ。
作成者の魔力を登録をする。
所有者の魔力を登録をする。
盗難に遭ったら重量を増大させる。
その重量を1トンとする。
【魔力認識、作成者登録、所有者登録、盗難対策】
六つの術式を関連付け、ワンセットとした。
早速、付与を開始した。
ワンセットの術式が淡い光を発し、徐々に範囲を広げ、
目の前に並べられたローブと革長靴、計九つを包む。
馴染み込むように光が消えた。
鑑定で付与の成功を確認した。
ローブと革長靴。
【防寒、防暑、防水、防塵、防汚、防刃、防火】
【自動修復】
【自動サイズ調整】
【自動魔力供給】
【ブラックボックス、コーティング】
【魔力認識、作成者登録、所有者登録、盗難対策】
次は物理攻撃と魔法攻撃への対処だろう。
どれに付与したら万全なんだろう。
あれこれ考えた末、魔法使いの杖にした。
魔法騎士団から盗んだ物だ。
亜空間収納から取り出し、三本を目の前に並べた。
汎用品ではなく、頭部に魔水晶を組み込んだ高価な杖だ。
鑑定で魔水晶を調べた。
何の術式も施されていない。
中古品でもない。
まっさらな新品。
ただし、製造年月日は古い。
何故か武器庫の肥しになっていた。
物自体に術式を施すより、組み込んだ魔水晶に施した方が、
より大きな効果がある。
そして、魔水晶そのものの品質によっても差違がある。
目の前の魔水晶は高品質。
流石は魔法騎士団の購入品。
どうして肥しにしていたのだろう。
不思議だ、目利きがいなかったのか




