(旅立ちに向けて)1
☆
僕が冒険者になってもう半月。
慣れとは怖いもの。
新生活には慣れたし、ジュリアの身体にも慣れた。
スキルも一通り確認し、魔物相手に初級・中級の魔法を試し済み、
それなりに慣れた。
上級は流石に人目から隠し切れないので、試用は控えた。
剣術と槍術、体術はそもそも無理筋。
HPが低いので肉弾戦に挑む予定はない。
魔法で攻防し、危なければ逃げる。
そろそろジュリアの故郷を目指してもいい頃合いだろう。
そう思いながら今日もまた、『初心者の森』に入った。
朝一番で薬草採取は終えた。
寄って来た魔物も五匹、返り討ちにし、亜空間収納に入れた。
が、それで本日の業務終了ではない。
鑑定で人気のない空地を見つけた。
やけに木の切り株跡が多い。
何カ所かに分けて樹皮を剥いだ丸太が野積みされている。
察するに、王都の大工業界の入会地なのだろう。
近くに人も魔物もいない。
ここなら丁度いい。
亜空間収納から盗品を取り出して並べた。
魔法騎士団から頂いた物だ。
改めて驚いた。
あるわ、あるわ。
貴金属から武具、調味料まで。
これらの確認作業を開始した。
面倒臭いが、表に出して盗品と発覚しては拙いので、
魔法騎士団ないしは王国の紋章・徽章に類した物がないか、
特殊な術式が施されてないかを調べた。
結果はよかった。
多くは汎用品。
広く誰でも購入できる物。
紋章・徽章も術式も入っていない。
紋章が入っていたのは僅か三つ
盾、マント、ローブ。
それでも大隊の備品なので個数にすると多い。
百五十を超えていた。
錬金魔法を起動し、紋章を一つ一つ地道に消して行く。
その際の注意点は一つ。
品質を劣化させない。
ついでなのでMPの消費を確認しながら進めた。
周辺を鑑定で警戒しながら、重ね掛けの錬金。
派手ではないが、それでも仕事を進めるに連れて地味に減る。
減るには減るが、やはり回復が早い。
異世界魔法理解からすると、理解できぬ早さ。
まあ、いいか、この仕様、僕にとっては美味しい。
気疲れして終えた。
野積みされた丸太を見た。
高齢者だ。
いやいや、年輪が多い。
そして、よく乾燥している。
頂こう。
ここは敵地。
遠慮は不要だろう。
一仕事終えたので遅いお昼にした。
土魔法を並行起動して地面を整地し、椅子と丸テーブルを造った。
亜空間収納から竹コップを取り出し、水魔法で魔水を入れた。
椅子に座り、亜空間収納から出がけに買った弁当を取り出した。
ステーキ弁当。
鑑定したら高級品、魔物・カゼラージュの肉。
時間が経過していないのでホッカホカ、ほかほか。
のんびり食べた。
一息入れて腰を上げた。
土魔法で造った物を解き、更地にした。
ギルドの買い取り窓口が混む前に帰ろう。
鑑定で帰り道を探した。
近くにあった。
獣道を辿り、人の道に出た。
街道から派生した枝道だ。
行き交う者はそれなりにいた。
時刻柄、行商人と荷物担ぎの奴隷、そして護衛の冒険者、
この組み合わせが多い。
枝道は馬車が通れる幅がないので、これも致し方ないこと。
先々の村へはどうしても人力頼りと聞いた。




