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彼方より響く声に  作者: 秋月
二章 俺の身に起こった異変とエレインについて
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第十六話 少しだけ強くなった気がする

ちょっと悪魔豆知識長いです。

ご了承ください

 エレインと一旦別れた。とりあえずセリンテの爺が一発ぶん殴られるのは確定した。が、ソレはともかく、何となく意気投合したみたいになってしまった。……でも、三年間パートナーだから、少しは話しておかないとな。


 それにしても、パートナーか。頬杖をついて考えた。……考えた事もなかったな。思えば、数年前からこの街を守護してきて、ずっと一人きりだったから。それに、茂文の婆様に託されてたからな。「この街はお前が守るんだよ」って。それに縛られすぎていたのかも知れない。とはいっても、暫くは気が抜けないだろうが。


 しかし。しかしだ。俺は椅子から立ち上がると、外に行く準備をした。力がたりない。実力はこれからコツコツ挙げていくしかないにしろ、今は突貫でいいから力がほしい。そのためには……装備品だな。鉄と銀の合金製のクレイモアーでは力がたりない。


 元々呼び寄せの種類の無さに不満は覚えていた。人の法という点において、俺はそこまで多くの武器を持つ事ができていなかった。その優位性を充分に発揮できては居なかった。豊富な武器を取り揃え、その上で全力を尽くすしかない。


 独特の形をしたミリタリーバッグを持って、俺は外に出かけた。




 ベヒモスを殺ってから、一週間目の夜。とうとう非番が解けた。その一週間の間はエレインが俺の代わりを務めてくれていたらしいが、どうだか。まだ実力の程を見ていないので、なんともいえない。まぁ無いだろうが、万が一ヘボだったら即刻本国に蹴り返す心積もりで行こう。


 仮面を被って白いパーカーを着て、窓から飛び出す。月と星が周囲を照らす、四月下旬の夜だ。道路に着地すると、何故か既にエレインらしき姿が居た。俺とは対照的な、真っ黒なゴシックドレスを着ている。金の装飾がされており、こういうところで見れば月明かりがキラリと反射して美しく輝いている。


 彼女の仮面は、舞踏会に使われるようなものだ。鼻から上だけを隠すベネチアンマスクと呼ばれる種類で、右のほうだけ風を表したような形のきめ細やかな装飾が成されていた。随分とおしゃれだ。秘匿を切ったら、そのまま仮面舞踏会にでもいけそうだった。


「あラ、随分質素ネ」

「そういうお前は豪華だな。……いくぞ。今回は魔力溜りによる自然発生を狩る。着いて来い」


 返事は聞かず、夜の街を歩き出す。エレインが二歩ほど後ろを行くのを何となく感じていた。魔力溜りとは、排出された人間の非純魔力の"吹き溜まり"だ。まとまりのない光と闇の魔力が結合して、一時的な純魔力となる。そして、近くを通った人間の願いを自動で受信し、悪魔を召還する。自然災害的な悪魔召還の例だ。


 意図的に作る事もできるが、まとまりのない魔力はやはりまとまりのない悪魔しか呼べないのか、下級の思考能力が殆ど無いような悪魔しか呼べないらしい。


 行き交う物が多い東京では、やはり魔力溜りも多くなる。それらを潰すのも、護法士の務めだ。ちなみに潰すのは簡単で、精霊に魔力を散らしてもらえばおしまいだ。


 東京の裏路地まで来た。軽い人払い、消音、そして防護の三重結界を張ると、エレイ ンを軽く指で招いた。二人での初仕事となるが、エレインのお手並み拝見といくか。


 居るなぁ、下級悪魔が、わんさかと。小悪魔(インプ)犬悪魔(ヘルハウンド)霊悪魔(ボガート)に……アレは鬼悪魔(オーガ)か。中級も居るとは、結構な魔力溜りだ。俺は片手に何時ものクレイモア(研ぎなおした)と、もう片手に独特のフォルムの武器を持った。左手に持ったそれは、現代の中の武器の代表格、拳銃だった。


 何処で手に入れてきたのかといったら、裏である。カタギの人間が入らないような場所には意外と売っている。とはいっても、余り威力の高い物は使えないので、小型の物だが。これは拳銃と言えば誰もが思い浮かべるポピュラーな拳銃、ベレッタ・モデル92である。アメリカの軍を中心として様々な所で使われていて、その為か価格もそこまででもなかった。サイレンサーがあると言うのが購入の決め手だったが。


 手にすると、ゾワリとするような冷たさを感じた。引き金を引けば、命が消える。それを念頭に叩き込んでおかなければならないからこそ、今まで使って来なかった。価格の問題もあるが、一番はソレだと思う。


 この血塗られた武器を手にする勇気が、決意ができなかった。だが、今となってブルって居るわけにもいかない。戦力増強には仕方ない。そう切り捨てて、俺はベレッタを片手で構えた。


「始めるぞ」


 と後ろのエレイン声をかけてから、第一撃を放った。せっかくなので、ベレッタをそこらへんの小悪魔(インプ)めがけてぶっ放した。つけたサイレンサーが音を削減し、プシュッと、勢い良く空気が漏れたような音を立てて弾丸が小悪魔(インプ)にあた、らなかった。あれ? と思ったら、そのギリギリ横ぐらいを通過していった。……いや、考えてみたら素人の射撃なんてこんなものか。


 インプは気付いていないようだったので、気を取り直してもう一発。今度はちゃんと狙すました。また空気の抜ける音がして、インプの頭に小さな穴が開いたかと思ったら、そのままピンク色の半液体をぶちまけた。死んだらしい。


 急に横のインプが死んで驚いたらしい犬悪魔に照準をスライドさせて、もう二射。パシュパシュッと連続した音が鳴って、犬悪魔の顎と首もとに命中。紅い血を迸らせた。走りこんで、ボガートの顔面に左手のクレイモアをお見舞いする。


 確認はせず、そのままの勢いで目の前に居た飛び掛ってきていたらしき犬悪魔の鼻を、右手のベレッタの銃把(銃の一部で、射撃の際に引き金を引く手で握る場所)で思いっきりぶん殴った。


 そのまま転がった犬悪魔の頭にショット。汚い赤い華を咲かせてから、その近くに居たインプにも射撃。ソレを蹴り転がした先のもう一匹のインプにクレイモアを叩き込むと背後から殴りかかられる気配。前に転がって避けると、巨大な紅い鬼。オーガだ。


 もう一発殴りかかってきたのを飛んで回避すると、その上を走って顔面にクレイモアを叩き付けた。が、余り効果はなさそうだ。しかめっ面をしたオーガの肩を蹴り上げて飛ぶと、空中で五連射。あ、マガジンが切れた。三発は肩と腕に当ったが、それ以外は外れたらしい。


 マガジンを装填したいが、呼び出すよな暇があるかな? と思いながらクレイモアでインプやヘルハウンドの頭をカチ割る。オーガが振り上げた拳を見て、呼び寄せの術を使う。召還するのは、盾だ。バリスティックシールド。鎮圧用の現代の盾を構えて受け止めると、衝撃と重みでずしりと腕が軋んだ。


 なんだか、少しだけ強くなった気がする。……あ、エレインを忘れていた。そう思ってエレインの方を見ると、予想以上に凄い光景だった。

悪魔豆知識


オーガ …またの名をオグルとも言い、女性のオーガをオーグリス、男性者をオグレスともいう。北ヨーロッパ出身で日本では"鬼"と訳される事が多く、ゲームや物語の悪役として描かれる。基本的にどんな物語でも人間でも勝てるような強さとなっており、騎士が姫を助ける為悪いオーガを倒しに行くような話しは一般的だった。鬼というだけではなく、殺人鬼の事をオーガといったりもする。物によっては動物に変身したりもする。


元々は人食い怪物のことで明確な名前があったわけではなかったが、オーガ(オグル)という名前がシャルル・ペローの小説『長靴をはいた猫』で初めて与えられた。


インプ …本作では小悪魔と書かれているが、当初の姿は妖精だった。元々は挿し木など枝を意味し、種から育ったわけでもなく果実を実らせる為、魔術的な意味があるといわれていた。一六世紀頃に学者に悪魔として分類され、頭髪がなくなり、角や蝙蝠のような翼が加えられていった。


 基本的な姿は体長は十cm程で大きくても人間の子供くらい。全身が黒く、充血した目をしており、ピンと尖った耳に、ぽっこりした腹をし、鉤のある長い尻尾を持った姿をしている。


ボガート …ボーガン、ボーグルなどとも言う。ケルト族の神話では、ボガート(Boggart)はいたずら好きだがときに人間を助けてくれる、家に住む精霊である。本作では霊悪魔とされており、人間を助ける事の無い、「名を与えられたボガート」の分類としている。イングランド北部ではボガートを命名してはならず、名を与えられたボガートは説得のできない、理不尽で破壊的な物となるとされている。


ヘルハウンド …ブラックドッグや黒妖犬という名もある。本作では犬悪魔としているが、イギリス全土に伝承のある黒い犬の姿をした不吉な妖精。たいていの場合、夜中に古い道や十字路に現れ、燃えるような赤い目に黒い体の大きな犬の姿をしていて、地獄の女神ヘカテーの猟犬達がそのイメージの根源だと思われる。


 ヘカテーの本来の姿は古代ギリシアの新月の女神であり、その卷族には犬や狼が数えられる。月のない新月の夜を象徴するヘカテーの従者は当然黒い色で想像された。ヘカテーは再生と共に死も司る女神であり、彼女に従属するブラックドッグ達は死の先触れや死刑の執行者としての側面を持つ。


……一部「オーガ」「ゴブリン」「ボガート」「ヘルハウンド(ブラックドッグ)」のwikipediaから引用

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