41・どういうこと?
「なっ、なんの話かしら。たかが新人メイドのくせに、皇城魔術師に不愉快なことを言わないで!」
「だけどこのままだと、偽イザベラさんのことがいろいろバレますよ。あなたの目的は知りませんけど、私は大切な友達を利用されるつもりなんて、全然ありませんから」
「魔力がなくてメイドにしかなれなかったくせに、はったりはやめてちょうだい。……そうね。魔術の偉大さを知らないメイドに、皇城魔術師の実力を見せてあげる」
偽イザベラは両手を広げる。
短い詠唱に合わせて、炎の球体がいくつも飛び上がった。
「皇城魔術師がこの程度の攻撃すら防げないのなら、帝国を守るなんて無理よ」
放たれた紅蓮の乱舞が、荒々しい勢いでイザベラへと向かう。
「っ!」
イザベラは数歩後退した。
迫りくる火炎の群れに両手を広げる。
そして襲いかかってくる炎の勢いに対して、防壁魔術を張る詠唱をつむぎはじめた。
でも間に合わない。
そんなイザベラを守る盾のように、霧のような白い粒子の膜が空中に発現した。
その吸収型の魔術防壁は、飛び込んできた火炎をのみ込んでいく。
役目を終えると、防壁は空気に溶けるように散った。
イザベラは驚きの声を上げる。
「あれっ? 私の詠唱は間に合わなかったのに、どうして防壁が……!? しかも霧型の防壁なんて高度過ぎて、今の私では発現できな……あっ」
イザベラが勢いよく私を見たので、返事の代わりに微笑みを返した。
「師匠、補助してくれたんですね……!」
私たちのやりとりの意味に気づかなかったらしい。
偽イザベラだったあの人は、火炎術が封じられた事実に青ざめていた。
「今のは、まさか……霧型の魔術防壁!?」
それはそうなんだけど、あの魔術防壁は吸収型で、彼女の変化術も吸収してから消したので……。
「偽イザベラさん。気づいていないかもしれないけれど、あなた今」
「あんな防壁を一瞬で出せる実力者なんて、世界でも数えるほどしか……っ、しかも詠唱なしなんて、ますますありえない!」
「あの、それも驚いただろうけれど偽イザベラさん。実はあなた今」
「一体どういうことなの!?」
その言葉は彼女の姿を見ている者の心境に、まさにぴったりだった。
イザベラもようやくその人の正体に気づき、ぎょっとして叫ぶ。
「あんた……私と同期の皇城魔術師、ロベリアナじゃない!」
「っ! イザベラのくせに、なぜ私の変化魔術を見破ったというの!?」
「見破った? だって、その……えっと。あんたの恰好……」
「私の格好……っ!?」




