第九十一話 対策
「お呼びいただいてありがとうございます。私を呼んだという事は強敵ですか?」
光が集まりエリの形を成す。強敵ですかって、なんて戦意高いんだろう? やっぱエリの姿をしてるからか?
「うん、多分強敵だと思う。エリツーに頼みたいのは、エリのふりをして欲しいんだ」
「任せてください。エリ様の品が無い喋り方は真似するのは難しいですが、それ以外はご主人様のイメージ通りのエリ様を演じて見せます」
エリツーはそう言うと、握り拳を上げる。大船に乗って任せろってジェスチャーだろう。可憐なエリツーがすると可愛らしい。
「何よ、品が無い喋り方って。なんで精霊にまでいじられないといけないのよ。あたしはいじられキャラじゃないのに。この話し方はわざとよ。なんて言うか、持って生まれた品格がにじみ出るのを防ぐためよ」
うん、フランクな話し方だからエリは取っつきやすいけど、エリがエリツーのような話し方をしたら、多分、貴族の令嬢と言っても通用するだろう。本当に、最初見た時はお姫様かと思ったもんな。
「もう時間が無い、僕らは隣の部屋で奴を待ち受けるから、エリは見えないように隠れててね」
僕とエリツーは駆け出す。それにモモとアイがついてくる。通路を通り隣の部屋に進む。そして、おっさんと再び遭遇する。
「わっ、くそっ、どうして気付かれてるんだよ」
おっさんが口を開く。僕らとおっさんはほぼ同時に部屋に入り、おっさんはギョッとしてる。
「あれだけ歩く音を立ててたら。誰にでも分かるよ」
僕はあんまり人と話すのは得意じゃないけどら少しでも多く会話して情報を引き出さないと。
「何言ってやがる。音なんかしてるはずは無い。俺の忍び足は一流だ。ギルドで、いやこの国で五本の指に入る腕前だ。人間より感覚が鋭い犬や魔物にも今まで気付かれた事は無い!」
やっぱりこのおっさんはペラペラ良く喋る。一つ情報、ギルドにコイツは入っている。忍び足を教えるギルド。暗殺者ギルドか盗賊ギルドか?
「さっきは逃げ出したのに、戻って来るの早かったね。おじさん、僕たちを倒せると思ってるの?」
「フハハハハハッ。お前らこそ、こんなとこでぐずぐずしてないで逃げてたら良かったんだがな。ほらよっ」
またおっさんは地面になんか投げる。するとまた地面が盛り上がり、今度は2体の騎士の姿をしたストーンゴーレムが現れる。さっきとの違うは2体というのと、2体とも犬のように両手をついて、はいはいのポーズをしている。
「ほら見てみろ。バナナの皮対策だ。二足歩行より四足歩行の方が安定する。これで、バナナでこけたら弱くなるというG13の弱点を克服した!」
「まじかっ。凄いね。この短時間でそこまで考えるなんて。それで、攻撃はどうするの?」
「えっ、攻撃か? そりゃ、そうだな体当たりでもさせるとするか?」
おっさん、バナナで転ばないようにする事しか考えてなかったな。この人、大丈夫だろうか? なんか地位がある人かもって思ってたけど、本当は、下っ端の使いっ走りなんだろう。
「フフフッ。残念ね。バナーヌはもう居ないわ。私たちのお腹に入ってしまってるわ。あんたのバナーヌ対策は無駄よっ!」
アイがおっさんをビシッと指差して余計な事を言う。
「なんだ、そうか、あのバナナマンは居ないのか。G13、立ち上がってあいつらを倒せ!」
ゴーレムは立ち上がりこちらに向かってくる。何言ってるんだよアイ。せっかくおっさんがゴーレムを弱体化させてたのに。
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