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 第百五十七話 効能(アイ視点)


「シャリッ」


 甘い。けど、下品な甘さじゃない。口の中に広がる果汁。例えるならそう、ハチミツ。リンゴの美味さにさらにハチミツのいいとこを足したような甘さ。しあわせ。なんか涙が出そうになってしまう。ちょっと呆けてしまった。さっきスイーツをしこたま食べたはずなのに、口が止まらない。気がついたら手の中のリンゴは無くなっていた。ちょっぴり悲しくなる。まだ欲しい。


「アイ、リンゴの種は体に良くな……」


「知ってるわよ。けど、美味しいからしょうがないじゃない」


 ん、ハルトが私の顔を見て硬直している。もしかして、このリンゴ、食べたらもっと可愛くなれてたりして。んー、なんか体がぽかぽかする。力が溢れる。凄い。凄いわ。今までの私とは違う。もともと私の力が低いのもあると思うけど、強くなれたのが実感できる。


「うわ、これ、ひるむわね」


 エリも私を見て何か言ってる。肩が笑ってるわよ。モモなんか私をガン見しながらケラケラ笑ってる。失礼ね。エリ、ひるむって何よ。うん、分かってるわよ。だって、今、私の手は金色に輝いている。手だけじゃないんでしょ。はぁ。


「うわ、趣味が悪い神像みたいですね」


 モモがニヤけながはまじまじと見てくる。はぁ。体の他の所も金色って事は当然顔もよね。なんか前に王都でコメディアンが体全身に金粉塗ったくってるのを見たけど、悲惨なものだった。あれみたくなってるわけ? 女の子としてあるまじき醜態だわ。うう、恥ずかしすぎる。ていうか、大丈夫なの? 私自身一生金色って事は無いわよね。たちが悪い呪いかよ。妖精って本当は妖怪の間違いなんじゃ? エリが近づくと私に耳打ちする。


「おめでとう。力が2ポイント上がって6になってるわよ」


「ええっ!」


 そりゃ嬉しいわ。4が6に1.5倍上がってるこれで子供に喧嘩で負ける事は無くなったはず。瓶の蓋が開けられなくて困る事も無くなるわ。けど、金色は勘弁して欲しい。


「ちょっとちょっとー、パンドラ。私の体、いつ元の色に戻るの?」


「んー、戻る訳無いじゃん。お前はずっとギンギラギンよ」


「えっ!」


 待ってそれは酷すぎる。一生金色? そりゃまずい。かなり特殊な性癖の人以外と付き合えなくなる。多分結婚無理。その前に彼氏できんわ。もしかしたら、新しい種族認定されてしまうかも。金人とかメタラーとか。それは嫌だ嫌すぎる。王都には二度と帰れないわ。学校の友達とかに会ったら間違い無く指さして笑われる。あっ、そうだ。エリたちにも食べさせて道連れにすればいいわ。みんなで仲良く金色で生きていけばいいわ。


「お前、何百面相してるのよ。面白い顔がもってと面白くなってるわよ。さっきの冗談よ。力が落ち着いてたら元の色に戻るわよ」


 笑えん冗談だわ。子供が出来たらその子供も金色だったらどうしようかと本気で悩んだじゃないの。


「主様、主様。さっきの魔法陣見せて貰いました。どうやらストッパーかかってるみたで、解除してもいいですか?」


 妖精はさっきハルトが踏んだ召喚の魔法罠の方に飛んでいく。あ、手が点滅してる。元に戻った。良かった。新しい種族にならなくて済んだ。


 読んでいただきありがとうございます。


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