第百四十二話 ワンパン (エリ視点)
「まあ詳細鑑定出来る人って滅多に居ないから知ってる人は少ないから、あたしがステータスについて教えてあげるわ」
アイは学校に行ってたし本も沢山読んでるみたいだけど、さすがにステータスに関する事は詳しく知らないみたいだ。モモは当然知らないだろう。
「ステータスって強さを分かり易く数値化したものなの。それで簡単な計算で攻撃が当たった時のダメージが分かるわ。攻撃が当たった時の威力、攻撃力は力+武器の威力。攻撃を防ぐ力、防御力は耐久+防具の性能で出せる。そして、防御力-攻撃力からダメージのだいたいの数値が出せる。その数値分HPが減って、0になったらやられるわ。それでハルトとドラゴンで計算してみて」
「分かったわ」
アイが肯く。モモはちんぷんかんぷんって感じだ。頭の上に?マークが飛び交ってるような顔してる。もしかしてバナナが必要なのは本当はモモなんじゃ? まあ、けど、今回は得意なとこを伸ばすのが目的だからそれはまたいつか。
「ハルトが素手だとして、ドラゴンは防具なんか着ないから、ハルトの攻撃力が251、ドラゴンの防御力が101。という事はハルトがドラゴンを擲った時のダメージが150。その分ドラゴンのHPが減る。ドラゴンのHPが115、115……」
アイの顔が引き攣る。
「…………」
あたしも頬が引き攣ったような感触。何回考えてもすこし悲しい気持ちになってしまう。ドラゴン。あたしたちが手も足も出なかった伝説の化け物。おーい、伝説、仕事してよー。
「何二人で見つめ合って固まってるんですか? イマイチ言ってる事の意味分かんなくて。私が分かるように易しく言ってくださいよー」
え、モモ、分かんないの? アイが額に指を押し当てて話始める。
「アンタ、もっと頭使わないと、のーみそトコロテンになって鼻から垂れてくるわよ」
「えっ、まじですか? 頭使わないとそんな事になるんですか?」
「なるわけないでしょ! 冗談よ。アンタも話聞いてたでしょ。はい、ハルトがドラゴンぶん殴りました。ダメージは150です。ドラゴンのHPは115。ダメージの分HPが減ります。ドラゴンはどうなるでしょうか?」
「ダメージが150。HPがその分減ると!-35。それくらい私でも分かります。HPが-になるとどうなるんですか? アンデッドにでもなるんですか?」
「なる訳ないでしょ! 一撃死よ一撃死! ハルトがドラゴン殴ったらワンパン! ワンパンよ!」
「ええー。まじですか! ドラゴンをワンパン!」
やっと意味が分かったのかモモが叫ぶ。遅いわよ。
「アンタ、叫ばない! ハルトが起きるでしょ。けど、あの時戦わせなくて良かったわね。あんな大勢の前でドラゴンをワンパンしてたら取り返しつかなくなってたわね」
「うん、間違いなく、国に囲われてたわ。一ヶ月後はチャンスよ。もう多分誰もドラゴンには近づかない。それにしてもハルト、ドラゴン楽勝だとは思ってたけど、まさかワンパンする可能性が高いとはね。あり得ないわ。だから絶対にハルトをドラゴンに近づけないようにしないと。あたしたちがしっかり鍛えて倒すのよ」
さすがにハルトもドラゴンを倒したら自分の強さに気付くから。
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